
心まで湿らせないために~梅雨時期のクリニック接遇で心がけたい工夫とサービス~
長 幸美
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今年は、桜が咲いた!と思ったら、急に気温が上がり、5月というのにもう夏のような蒸し暑さが続いています・・・もう少しすると梅雨の季節がやってきますね。
雨が続くこの時期は、気圧や湿度の変化により、患者さんの体調も心も不安定になりがちです。こんな不安定な時期は来院時の衣服や荷物の濡れ、不便な足元、待合室の蒸し暑さなど、小さなストレスが重なります。
そんなとき、クリニックが“ちょっとした心配り”を見せるだけで、患者さんの印象は大きく変わります。
今回はこの時季ならではの「心配り」を考えていきましょう!
目次
雨の日こそ第一印象を大切に
クリニックの第一印象はどこから始まるでしょうか?
・・・私は患者さんがクリニックに着いたところから始まると思います。
雨の日に受付前の床やマットが濡れていると、すべりやすく足元の不安が増しますね。来院者の気分も下がりがちです。
その時に受付が「床が滑りやすくなっておりますので、お足元にお気をつけください」と一言添えるだけで、安心感が生まれます。そのほかに傘袋の設置や、濡れた傘を預かる配慮も、受付前の混雑を防ぐとともに快適な空間づくりに役立ちます。
「ここまでしてくれるんだ」と思わせる仕掛け
あるクリニックでは、雨の日、入り口に「ハンドタオル」が設置されていました。
「ご自由にお使いください」と添えられた清潔なタオルが並べられており、来院者は雨で濡れた手や顔をすぐに拭けるようになっていました。クリニックの気遣いにびっくりしたことを覚えています。さらにタオルはただ置くだけでなく、香りを季節ごとに変えたり、目立ちすぎないように整えられていました。この仕掛けには「さりげないけれど印象に残る接遇」が実現されていたのです。
患者の「困った」を先回りするサービス
皆さんは急な雨で困ったことはありませんか?以前こういうことがありました。
「傘をお忘れの方には貸し出しできます。受付でお声掛けください」という言葉かけや掲示がある医療機関で傘を借りたことがあります。傘を渡された際に「お戻しは次回ご来院の時でいいですよ」とにっこり声をかけてくださり、本当に助かり、ありがたかったですね。
傘の事例やタオルの設置まではいかなくても、診察券や保険証が濡れている方への「拭き取りクロス」の提供や傘袋の設置、「雨の中ご来院大変でしたね」「足元お気を付けくださいね」といった声かけの徹底、荷物が多い方へ、「どうぞこちらに置かれてください」と一言添える・・・などなど。気を配ることで好印象を与えることはできますね。
先の事例のように先回りの接遇は、来院者の不安や不満を未然に防ぎ、「感じが良い」「また来たい」と思ってもらえる第一歩です。
空間づくりも接遇のひとつ
湿度が高くなる梅雨時は、待合室の空調管理や除湿器の設置、アロマの香り、季節の植物など、ホッとできる気遣いが有効だと思います。また、除湿等で、寒さを感じる方もいるかもしれませんね。そんな折はこんな時期でも「ひざ掛け」の用意はありがたいものです。
空間といえば院内掲示も来院者の目に留まるアイテムです。「季節のひとこと」や「スタッフからのメッセージカード」などを添えると、患者さんとの距離も近づきますよ。
おわりに・・・患者満足につながる“気配りの文化”を
梅雨の時期は、患者さんだけではなくスタッフも何かと疲れやすい季節です。
だからこそ、不快感を少しでも軽減しようとする工夫そのものが、患者さんの心に届きます。
“医療”の枠を超えて“人”として迎えられている――
そんな印象を与えられるクリニックには、自然と信頼が集まります。
「ちょっと濡れた手を拭けるだけで、気持ちが違うんです。」ある患者さんのそんな言葉を思い出しながら、私たちも“もう一歩先の気配り”を心がけてみませんか。
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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