コラム de スタディ

2018.09.14.
産休及び育休取得後の解雇

今回、紹介する判例の特徴です。

産休及び育休取得後、育児休業前に問題あったと復職拒否し、解雇されたことについて、男女雇用機会均等法(以下、「均等法」という)9条3項及び育児・介護休業法(以下、「育介法」という)10条に違反し無効であるなどとして、地位確認等を求めた地裁判決です。

 

■シュプリンガー・ジャパン事件 東京地裁 平成29年7月3日判決

 

【事件の概要】

出版会社のS社の従業員Hは、平成22年9月から産前産後休暇に入り、引き続き育児休業を取得して、平成23年7月から職場に復帰し、休業取得前に従事していた職場に従事した。(第1回休業)

Hは、平成26年4月25日、S社に産前産後休暇・育児休業の取得を申請して、同年8月から産前産後休暇に入り、引き続き育児休業を取得した。(第2回休業)

平成27年3月、Hが、S社に対し、第2回休業後の職場復帰の時期等について調整を申し入れたところ、S社の担当者らは、従前の部署に復帰するのは難しく、復帰を希望するのであれば、海外の子会社に転籍するか、収入が大幅に下がる部署に移るしかないなどと説明をして、Hに対して、退職を勧奨し、同年4月分以降の給与は支払われたものの、その就労を認めない状況が続いた。

Hは、S社のした退職勧奨や自宅待機の措置が均等法や育介法の禁ずる出産・育児休業を理由とする不利益取扱いに当たるとして、調停の申請を行い、原職や原職に相当する職に復帰させることを求めた。

S社は、Hに対し、同年11月、書面により、同月30日限り解雇する旨を通知した。

その過程で大きな精神的苦痛を被ったことが見て取れ、解雇無効に伴う地位確認と賃金支払い等によって精神的苦痛が慰謝されたとみるのは相当ではない。S社は、Hに生じた精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料等の損害賠償義務を負うという判断を下した事案である。

 

【判断】

(1) 妊娠等と近接して行われた解雇と均等法及び育介法違反について

・   均等法9条3項及び育介法10条は、労働者が妊娠・出産し、又は育児休業をしたことを理由として、事業主が解雇その他不利益な取扱いをすることを禁じている。一方で、事業主は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合には、労働者を有効に解雇し得る(労働契約法16条参照)。

・   上記のとおり、妊娠・出産や育児休業の取得(以下「妊娠等」という)を直接の理由とする解雇は法律上明示的に禁じられているから、労働者の妊娠等と近接して解雇が行われた場合でも、事業主は、少なくとも外形的には、妊娠等とは異なる解雇理由の存在を主張するのが通常であると考えられる。

・   このようにみてくると、事業主において、外形上、妊娠等以外の解雇事由を主張しているが、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことを認識しており、あるいは、これを当然に認識すべき場合において、妊娠等と近接して解雇が行われたときは、均等法9条3項及び育介法10条と実質的に同一の規範に違反したものとみることができるから、このような解雇は、これらの規定に反しており、少なくとも趣旨に反した違法なものと解するのが相当である。

 

(2) S社が主張する解雇理由について

・  S社は、Hの解雇理由について、Hの問題行動が、業務妨害や、業務命令違反、職場秩序のびん乱や、業務遂行能力及び資質の欠如に当たる旨主張している。

・  次に、S社がHの問題行動についてどのような注意・指導を行っていたかという点についてみると、上司への態度として不適切なものであることが口頭で注意されており、第2回休業前のメール共有の措置に関しては、上司から業務命令違反であることを明示し、処分をほのめかしているほか、個々の指示に際しての注意も行われている。しかし、これまでに、それ以上に懲戒処分はもちろん、文書を交付して注意が行われたことはなく、業務命令違反等の就業規則違反であることを指摘したり、将来の処分をほのめかしたりしたのも、上記メール共有の措置の件以外には見当たらない。

 

以上(1)(2)によれば、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠いており、社会通念上相当であるとは認められず無効である。また、S社は、本件解雇は妊娠等に近接して行われており(S社が復職の申出に応じず、退職の合意が不成立となった挙句、解雇したという経緯からすれば、育休終了後8か月が経過していても時間的に近接しているとの評価妨げない)、かつ、客観的に合理的な理由を欠いており、社会通念上相当であるとは認められないことを、少なくとも当然に認識するべきであったとみることができるから、均等法9条3項及び育介法10条に違反し、少なくともその趣旨に違反したものであって、この意味からも本件解雇は無効というべきである。

 

■ポイント

 本件では、女性従業員に対する対応について、弁護士、社会保険労務士及び産業医に相談し、今後の女性従業員の問題行動に対して、段階を踏んで注意を与え、軽い懲戒処分を重ねるなどして、その態度が改まらないときに初めて退職勧奨や解雇等に及ぶべきであるという助言を受けていました。

本判決は、会社がこの助言に従った対応をとっていないまま解雇を実施したのであり、それが法律上の根拠を欠いたものとなることを十分に認識することができたと判断し、本件解雇が均等法および育介法に違反し無効としました。

仕事をして報酬を受けるという労働者の立場は生活を営む上での基礎であり、法的に厚く保護されています。そのため、会社の都合で社員を辞めさせようとすると、厳しい制約をクリアしなければなりません。 これを無視してむりやり解雇しても、あとで裁判などに持ち込まれれば会社側に不利な結果が出るのが大半のため、解雇に至るまでは慎重に行うべきという結論になります。

人事労務課

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