【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】地域包括ケアを支える連携について(その2)

長 幸美

アドバイザリー

 

前回は、「地域包括ケアを支える連携について(その1)」として、入退院に伴う連携がポイントとなっていました。今回は、「訪問看護ステーション」について考えてみたいと思います。

訪問看護については、今回次のシートのように課題の整理が行われています。

これは、訪問看護の役割を考えていくと、とても大きな役割が課せられていると思います。

この課題を大きく分けると、「訪問看護の提供体制」「利用者ニーズへの対応」「関係機関との連携」に分け、それぞれに課題の項目が整理されています。

 

図1

 出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

退院に向けた医療機関等と訪問看護ステーションの看護師との連携が重要になってきます。

7対1の病棟が今回の改定で維持することが出来ても、次期改定でどのように変更するかは不明で、将来的に「医療機能を考えていった時に7対1の人員が必要かどうか?」というところは疑問があり、通常の急性期であれば10対1の人員配置で対応ができるのではないかと考えられています。

 

そこで、余剰を抱えている病院さまに対しては、「訪問看護ステーションを立ち上げて、在宅の支援に回ってほしい」というのが今回の改定の中で表れている強化型の訪問看護師テーションの評価です。

 

病院は「アウトカム」を出すために、ベッドの回転が速くなるでしょう。それと同時に医療処置が必要な状況のまま在宅へ退院するということが多くなってくると思います。このため、医療提供体制や、ニーズへの対応体制、関係機関との連携が非常に重要になってきます。このための「看護師4名以上の配置」をもとに「重症患者の受入れ」「退院時共同指導」「勤務経験」等を評価したものをつくり、これは重要な役割を担っています。

 

図22

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

また、地域包括ケア病床の申請基準の中にも「敷地内訪問看護ステーションの有無」が入れられて、何とか訪問看護による地域生活の支援をしてほしいということの表れではないかと思います。

この評価も以下のスライドの通り、高い評価がついています。

 

 

図3

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

また前回お話した、退院に向けた支援のための「退院時共同指導加算」として退院時カンファレンス(退院時共同指導)に参加した場合は8000円と評価が上がりました。

入院時の連携の強化については、訪問看護ステーションがかかりつけ医に対し情報提供をすることにより訪問看護情報提供療養費3(1500円)が付き、その情報を添付して、かかりつけ医が診療情報提供書を記載した場合は加算(50点)が付くようになっています。

 

 

図4

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

更に自治体や学校への情報提供にかかる評価も以下の通りついてきていますので、これもどれだけ地域の中での支援体制を求められているのか、ということが感じられます。

 

この自治体への情報提供は、相模原の事件をもとに、精神疾患の患者のフォローアップ体制をとるために作られたものだと思われますし、学校への情報提供については、NICU後の患者を含め、地域の学校生活の中でのサポートを求められているのではないかと思います。

 

 

 

図5

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

また、介護事業所の介護職員に対し、主治医(かかりつけ医)の指示のもとに訪問看護ステーションの看護師が、喀痰吸引等を行う介護職員等に対し、支援を行った場合に算定するものです。このことにより、介護職員のスキルアップを図るとともに、介護職員の不安をとり、患者に対し安全の確保を目指していくものではないでしょうか。

 

「特定喀痰吸引等事業者」の登録事業者であることが条件になりますが、これらも連携体制の構築とともに、地域包括ケアシステムを支える事業所への評価ともいえると思います。

 

図6

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

複数の実施主体による訪問看護の評価としては、情報の連携をもとに、実施状況等を共有することを求められています。

 

また、「在宅患者連携指導加算」及び「在宅患者緊急時等カンファレンス加算」については、連携している複数事業所がそれぞれ算定することがみとめられていますが、ターミナルケア加算については1箇所の訪問看護ステーション又は医療機関の算定に限定されています。

 

 

図7

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

更に24時間対応体制については大きくプラス評価がついています。(連絡体制は廃止)

このように、訪問看護は医療として非常に大きな評価がつき、「地域包括ケアシステム」をしっかりと支えているものとして、評価がついていると思います。

 

反面、訪問看護ステーションから「訪問看護としてセラピストが関わる場合」については適正化が図られ、「訪問看護師とリハビリ専門職がお互いに何をしているのかをしっかりと把握をして、連携する」ということを改めて明示されてきたように思います。

 

図8

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

複数名による訪問看護については、「看護補助者」との訪問について評価がされました。

医療度が高く重度な患者の訪問看護を行う場合は「看護職員」が複数名で訪問することが必要になるでしょうが、以前勤務していた訪問看護ステーションでは、必ずしも看護師が2名で対応する必要がない場合などもあるということを見聞きしていました。このような場合には複数名での対応がしやすくなったのではないでしょうか?

 

図9

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

図10

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

NICUを退院した重度な子供たちが自宅で医療ケアを受けながら生活していくことを支える、ということを「地域の中でケアする」ことに対して、乳幼児加算が高くなりました。また、長時間加算の算定対象範囲も広くなっています。

 

小児のケアについては、地域の小中学校への情報提供なども加算評価されており、生活を支えるというところに重点的な評価がついていると思います。

 

図11

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

過疎地域等の訪問看護については、「特別地域訪問看護加算」として、評価がついています。また、その指定地域外に所在する訪問看護ステーションからの訪問についても同様の評価となります。

 

図12

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

 

図13

出典:平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)より

 

さあ、今回の改定は、「連携」に始まり「連携」に終わるといっても過言ではないと思っています。まだ疑義解釈などが次々に出てくるでしょう。今回改定の要は「訪問看護」と言ってもいいのではないかとも思っています。

皆さん、頑張っていきましょう!!

 

<参考資料>

〇平成30年度診療報酬改定説明会(平成30年3月5日開催)資料等について

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352.html

 

〇平成30年度診療報酬改定の概要(厚労省説明会資料)

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000197979.pdf

 

 

経営支援課

 

 

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