コミュニケーションって何だろう~世代間をつなぐ「歩み寄り」の力~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

すれ違いの職場を、つながる職場に変える第一歩――それが「歩み寄り」です。
前回は「良いコミュニケーションとは何か」を考えました。
今回はその中でも特に大切な要素の一つである 「歩み寄り」の力 について取り上げたいと思います。

なぜ「歩み寄り」が必要なのか

現場でよく耳にする
  「今どきの若い子は言うことを聞かない」
  「年上の人は頭ごなしに決めつける」
こんな言葉を聞いたことがありませんか?皆さんも一度は使ったことがあるフレーズかもしれません。
このような言葉を発生する原因は、どちらかが一方的に悪いわけではなく、背景に教育や働き方の変化があるように感じます。

若い世代は「なぜこの仕事をするのか」「自分の役割がどう貢献しているのか」を理解して動きたいと考えがちです。
一方、ベテラン世代は「言われたことをやるのが当たり前」という教育を受けてきました。
その前提が違うままでは、すれ違いが起こって当然です。
だからこそ「歩み寄る姿勢」がとても大切になります。

エピソード:紙レセプト vs システム重視

あるクリニックでの出来事です。

レセプト点検をめぐり、ベテランのAさんは「紙で印刷してチェックする方が間違いが少ない」と主張。
一方、新人のBさんは「システムを使った方が効率的です」と譲りません。

Aさん:「昔からこのやり方でやってきたのよ。紙で見た方が間違いがすぐ分かるの。」
Bさん:「でも、入力ミスはシステムの方が防げますし、集計も早いと思うんです。」

お互いが正しいと思っているからこそ、話は平行線のまま、職場の空気も少しピリピリしています。

ある時、Aさんがふと声のトーンを変えて言いました。
「紙レセプトだと、どこでミスが起こりやすいか、何が問題なのかが分かりやすいのよ。Bさんはレセプト作業は初めてだし、めんどくさいと思うかもしれないけれど、まずは、3か月だけやってみようよ。」

その一言に、Bさんはハッとしました。「理由が分かれば納得できる気がする」と同時に、「ベテランAさんは私に早く一人前になって欲しいと思っているのじゃあないかな」と感じ取ったのです。

結果Bさんは紙での点検をスタートしました。点検を重ねるうちに、「日々の会計計算時の漏れが多い項目、会計点検の段階でチェックすれば、月末の作業を減らせるのでは?」と気づきました。
さらに新規の提案としてチェック項目をリスト化し、「システムで自動チェックできないか」とAさんに相談してきたのです。
Aさんも「それは面白い発想ね」と応じ、ベンダーに問い合わせて機能を確認しました。

今では、日々の会計点検業務は大幅に効率化した上に残業が減り、査定件数も減少するという成果につながったのです。
「紙で学ぶ経験」と「システムの活用」、そして「お互いの強み」を組み合わせた成功例でした。

歩み寄りを実践する3つの工夫

このエピソードから見えてくるのは、「歩み寄り」には3つの大事な工夫があるということです。

違いを前提として受け止める

AさんもBさんも、はじめは「自分の意見が正しい」「相手は間違っている」と思っていました。
しかし「世代が違えば考え方も違う」と認め合い、「とりあえず紙でやってみよう」と折り合いをつけたことで、不満が対立に発展せずに済みました。

背景を説明する/尋ねる

Aさんが、紙レセプトで点検することは「学ぶ段階で必要なことを確認しやすい」「“間違いやすい箇所を知る”という意味がある」と背景を説明したからこそ、Bさんも納得して取り組めました。
逆にBさんが「どうしてこの方法なんですか?」と尋ねたことで、Aさんも「昔からの習慣だけでやってきたかもしれない」と気づきを得ました。

相手の強みを認める

最終的に、Aさんは新人の提案を受け入れ、「これは効果がある」と認めました。
また、Bさんも、Aさんの経験から学んだ点検の勘所を尊重しました。
お互いがお互いのことを「尊重する」「認める」ことで、結果として「経験」と「新しい視点」が融合し、大きな改善につながったのです。

挨拶を「誰が先にするか」問題

さて、ここで少し視点を変えてみましょう。
「歩み寄り」を考える中で必ず出てくるのが、「挨拶を誰が先にするか」という問題です。
これは「挨拶」だけでなく、誰から声をかけていくかという姿勢にもつながります。

「挨拶」とは――

接遇研修をするときに「挨拶」という言葉の成り立ちを説明します。
その時に、「挨拶は誰からするのが良いと思うか」と尋ねると、皆さん口をそろえてこう答えます。
「挨拶は新人からすべきだ」「下の者が挨拶をしないのに、なぜ私たちが?」

しかし、もともと「挨拶」とは禅宗の言葉「一挨一拶(いちあいいちさつ)」に由来し、「挨」は相手に“近づく”、“拶”は相手に“迫る”という意味があります。
つまり、挨拶とは、心を開き、相手に歩み寄る行為そのものなのです。
そう考えると、誰から挨拶をするか・・・なんて問題ではなくなりますよね。

新しく入ってきた職員は、既存のコミュニティには入りづらいものです。
そんな時こそ、先輩から積極的に声をかけてみるのは立派な「歩み寄り」です。

最近の若者は「報・連・相」ができない問題

挨拶と同様に話題に上がるのが、「最近の若い人は報・連・相ができない」という声です。
研修でよく耳にするのは、「勝手に進めてしまって困る」「報告が遅い」という相談が多くあります。

そんな時、私はこう尋ねてみます。
 皆さんが仕事を指示するとき、どんな投げかけをしていますか?
「これやっといて!」こんな伝え方をしていませんか?

こんな指示方法では相手に伝わりませんよね。むしろ怒りを買うやり方かもしれません。

報・連・相の課題は、若者の問題だけではありません。
事を教える立場の側にも、伝え方やタイミングに「歩み寄り」が必要なのです。

「報告のタイミングを明確に伝えているか?」
「どんな時に連絡してほしいかを共有しているか?」
「相談しやすい雰囲気を作っているか?」
――これらを意識することで、相手の理解度やスキルに合わせた的確な指示が出せるようになります。

まとめ

「歩み寄り」とは、相手に従うことでも、自分を押し通すことでもありません。
お互いが半歩ずつ近づき、理解し合おうとする姿勢です。

今回のエピソードのように、
 ① 最初は 「違いを受け止め」
 ② 次に  「背景を共有し」
 ③ 最後に 「強みを認め合う」
この3段階を踏むことで、単なる意見の衝突が、組織全体の改善へとつながります。

挨拶ひとつ、声かけひとつ、報連相の仕方ひとつに「歩み寄り」の姿勢があれば、職場の空気は驚くほど変わります。

世代や立場の違いがある職場だからこそ、
   「一呼吸置いて相手の理由を考えてみる
その小さな歩み寄りが、職場全体を変える大きな力になるのではないでしょうか。
お互いの意見が合わないとき、ちょっと立ち止まって、「何を感じているのか」「なぜそう思うのか」を考えてみませんか? 解決の糸口が見えてくるかもしれませんよ。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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