介護保険 2 割負担の対象拡大を巡る議論

楢橋 信一

アドバイザリー

現在の介護保険において、一定以上の所得がある65歳以上の方は、利用者負担が2割となっています。

これについて、8月に行われた社会保障審議会介護保険部会において、2割負担の対象拡大の議論が行われました。
厚生労働省の資料によると、現行の2割負担の基準は、第1号被保険者全体の上位20%に該当するラインとして当初設定されました。これに対して、実際の2割負担者の対象割合は、平成28年2月サービス分ベースで在宅サービス利用者のうちの9.7%、特別養護老人ホーム入所者のうちの4.1%、介護老人保健施設入所者のうちの6.2%となっています。
また、全ての利用者の実質負担率に関し、平成18年度は約7.7%、平成26年度は高額医療合算介護サービス費の創設等により約7.2%に低下していたところ、2割負担導入後の直近では約7.7%となっており、さらに2割負担者に限定した場合は、12.6%であり、全員が実質2割を負担しているわけではなく、償還制度によって負担が緩和されているということです。
このような状況を踏まえた議論として、介護需要の大幅増加に耐えうる持続可能な制度にする必要があるなどの観点から、特に現役世代並みの収入や高額の預貯金がある高齢者には、さらに負担を求める肯定的な意見が挙がっています。
一方、対象拡大があった場合、利用者に過度な負担となり、必要なサービスの利用を遠ざけ、重度化を招き、在宅生活を困難にさせ、結果的に介護離職者を増やすことになるといった意見や、負担増加は過酷であり拡大の検討がなされていること自体、大変受け入れがたいという慎重的・否定的な意見も挙がっています。
この結論については、平成28年末までに得る予定となっており、それまでの間、継続的に関係審議会等で検討がなされるということです。利用者、事業者両方にとって大変関心の高い事ですので、今後の議論に注目したいと思います。

税務会計コンサルティング部 次長

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