【医療介護あれこれ】地域医療について考えたこと

長 幸美

アドバイザリー

「あなたの病気は、今の医療では為す術はありません。」
高度急性期の大病院でこのように言われて、退院を勧められたとき、さらに余命を宣告されたとき、どのように感じるでしょうか?

私も病院勤務時代に、「大学病院では、もうやることはないと言われた」とがっくりと肩を落として転院してこられる患者さんがありました。また、「データが良くなった、病気は治って治療は終わったのであとは自宅で様子をみましょう、と言われ自宅へ帰ってきた」、と困惑気味に外来通院される患者さんもありました。

治療を行い「治った」と言われても、自宅へ帰ってきて今まで通りの生活が送れるか、というとそうでもない場合もあります。まして、「為す術なし」と言われて帰された場合、自宅での生活にどれだけ不安があるのか、計り知れないものがあります。しかし、その患者さんにとって大きな問題は、どのような形であれ「生活は続いていく」ということです。
今回の4月の改定ではキーワードの一つに「治し支える」という言葉が入ってきました。

2025年の団塊の世代が75歳を迎える年に向けて、このままでは地域医療が崩壊することを懸念し、地域医療構想を策定することになりました。つまり、病床機能の明確化と分化を促進して、地域完結型の医療体系をつくり、地域の中で、生まれてから死ぬ時までの患者や家族の人生もひっくるめて、「その方の生活をどう支えていくのか」ということをみんなで考えましょう、ということです。すべての医療機関が同じようなことを実施できるわけではありません。そのためには、医療機能ごとに医療の適正な配置(配分)を明確化して、地域の生活圏の中で「尊厳をもって暮らし続けること」ができるような体制を考えていけば、機能的に効率的に医療や介護の提供が行え、必要な人材も確保できるのではないかと考えられているのです。

今までの医療の提供は、「病気を治す」ことに注力され、このような「生活を丸ごと支える」なんてことを考えていくことはあまりされていませんでした。多くの医療機関では、どうやって治療するのか?ということは議論されても、「治療後にどうやって地域の中での生活を送っていくのか?」ということはあまり考えられていなかったように思います。

地域包括ケアシステムを構築し、地域医療構想を策定していく中で、自院の立ち位置を考え、将来や地域のこれからの生活を見据えていくうえで、とても大切なことがあると思います。各地で、たくさんの連携に関するイベント(セミナー、ワーキング、研修等)が行われています。厚労省から取り組み事例の紹介もたくさん出されていますので、ぜひ参加され、医療機関のなかで、地域の中で、「医療機関として何ができるのか」「医療職として何ができるのか」話をしてみてください。2025年へ向けた医療機関やご自身のかかわり、課題が見えてくると思います。

 

<参考資料>

〇地域医療構想(厚労省)

〇地域包括ケアシステム(厚労省)

〇介護予防・日常生活支援総合事業(厚労省)

経営コンサルティング部
経営支援課

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