労務管理のポイント『有給休暇を多く取得した場合に賞与の減額は可能か』

森 𠮷隆

人事労務

Q:当院では毎年、夏冬の年2回職員に対し、賞与を支給しています。それぞれ6ヶ月間における査定対象期間を設けており、勤怠状況も査定の対象としています。このたびある職員が私用のため、2週間連続で有給休暇を取得しました。今回長期の休みであったため、この期間を欠勤とみなして賞与の査定をしたいのですが、問題があるでしょうか。

A:「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」という労働基準法附則第136条の定めからすると、原則として減額は認められません。

同条の「不利益な取扱い」については、上記の賞与の査定のほか、例えば皆勤手当の支給要件に際しても、年次有給休暇を取得した日を欠勤又は欠勤に準じて取扱う他、有給休暇の取得を抑制するような全ての不利益な取り扱いが含まれるとされています。

今回の場合、勤怠状況が賞与の査定の対象のひとつとなっていますが、有給休暇の取得を欠勤と同様に取扱うことは、職員の有給休暇の取得を抑制する可能性が高いため、減額はまず認められないでしょう。

ちなみに上記の規定には罰則はありませんが、もし職員から訴えられた場合には、公序良俗に反するものとして減額は無効とされる可能性が高く、実際、有給休暇取得日を欠勤日として取り扱い、賞与を減額としたのは認められないとした最高裁判決例もあります。

賞与の減額の程度にもよりますが、トラブルを避けるためにも、有給休暇の取得が賞与の減額につながる査定の方法は見直しを図るほうが望ましいでしょう。

ただし、この職員が休暇を取得する際に、例えば医院の所定のルールを全く踏まずに突然休暇を取得したり、事前に休暇前に申し送りを全く行わなかったこと等本人の故意又は重大な過失が原因で職場に混乱をきたし、他の職員等に過度な負担や迷惑を掛け、医院に損害を与えた場合、賞与の査定項目にこれらの勤務態度等の内容についても明確に対象になっており、有給休暇を取得した事以外の理由において査定をした結果、減額となることは、その内容の度合いや額にもよりますが、減額は可能といえるでしょう。

 

著者紹介

森 𠮷隆
人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)

「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

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