社労士モリの映画あれこれ
「ミツバチのささやき」(1973年:スペイン)

森 𠮷隆

その他

 実は恥ずかしながら、子供が登場する映画に滅法弱かったりする私なのですが、その中で特に好きな作品のひとつ。先日「午前十時の映画祭」で久し振りに劇場鑑賞しました。

 舞台は1940年スペインの片田舎の小さな村。巡回上映で映画「フランケンシュタイン」を観賞した6歳の少女が主人公。彼女は少し年上の姉に聞きます。「どうして怪物は少女を殺したの?なぜ怪物は殺されたの?」。現実と空想の区別がつかない彼女は怪物を精霊と思い込み…。

 とストーリーを書いたものの、正直物語は決して判り易い内容ではありません。

この作品の舞台はスペイン内戦終了直後、製作年はまだフランコ独裁政権下で、それらの暗喩が散りばめられていて、その辺りが物語を難解にさせていることは事実で、初鑑賞時私も解説を読んでやっとそういう意味かと…。

 それでもこの作品に魅入ってしまうのは、少女の一挙一動、その表情と動きがあまりに自然で、一体どうやって幼い子供からこのような演技を引き出したのだろうと、ある意味驚嘆に値します。そして彼女を通じて、観客は自らの幼児体験を内面から思い起こせるような不思議な感覚に捉われるのです。大人になった我々にもかつてこのような時があったのだと。淡々と静かな展開ですが、それがむしろ観る者の想像力を掻き立てる余地を与えているかのよう。時折写し出される田舎の風景も、アッと思わせるような絵画的美しさがあり、その詩的なイメージにも魅了されます。

 日本初公開は本国製作後、10年以上経た1985年ですが、その後今回も含め、数回リバイバル上映され、国や時代背景を超え、日本にも根強いファンが多い事も納得できる作品です。

著者紹介

森 𠮷隆
人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)

「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

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