労務管理のポイント『育児休業中でも年休は付与しなければならないか』

森 𠮷隆

人事労務

Q:現在育児休業中の職員がいます。法定の産前休業から現在の育児休業まで、1年間近くずっと休んでいます。間もなく職場復帰となりそうですが、その前にこの職員の有給休暇の付与日になります。この場合、過去1年の出勤の実績がなかったことから、今回の有給休暇の新たな付与は必要ないでしょうか。

A:原則として、法に定めのある産前産後休業、育児休業をした期間については、出勤したものとみなして計算した有給休暇日数を新たに与えなければなりません。

 

労働基準法39条では年次有給休暇の付与について「全労働日の8割以上出勤」という要件を定めています。この場合の出勤率は、雇い入れ日から6ヶ月間、その後は1年間において、全労働日数に対する出勤日数の割合が8割以上あれば、勤続年数に応じた有給休暇日が新たに発生します。なお全労働日数は労働の義務がある日のことを指しますので、当然の事ながら、所定休日や、使用者の責めに帰すべき事由による休業日等は全労働日数に含めません。

なお以下の事由で休んだ期間に関しては、出勤したものとみなすと定められています。

  1. 業務上の傷病により療養のために休業した期間
  2. 育児介護休業法の規定による育児休業又は介護休業した期間
  3. 産前産後の女性が労働基準法の規定により休業した期間
  4. 有給休暇を取得した日

 

上記については労働者が正当な理由で休んだ日を欠勤扱いした場合に、出勤率が基準を下回り、年休が発生し難くなるという不利益を避けるため、出勤扱いとしてみなします。

今回の質問の内容を考えると、法定の産前産休業、育児休業を取得していると考えられ、この場合上記の②③に該当するため、この期間の約1年間の出勤率の算定に関しては、出勤とみなして計算し、新たに有給休暇を付与しなければなりません。

とはいっても、年次有給休暇は労働義務のある日においてのみ請求できるものであり、育児休業期間に関しては、職員からの申し出によってそもそも労働が免除されている日となるため、この期間中では年次有給休暇を請求できる余地がありません。よって実際は、育児休業が終了し、職場復帰時に、定められた日数分の有給休暇を付与することで問題はないでしょう。

それいゆ2014年4月号掲載記事

著者紹介

森 𠮷隆
人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)

「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

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