労務管理のポイント『退職金の支払い日について』
森 𠮷隆
人事労務Q:このたび退職が決まっている職員から、退職金の支払いについて、退職日の翌日に早急に振り込みしてほしいという申し出がありました。なお当院の退職金規程には支払い日については特に定めはありません。この場合、職員の要望に応じなければならないでしょうか。
A:原則として、退職日の翌日までに退職金を支払う必要はありません。ただしこの場合、退職日に請求があったものとしてみなして、退職してから7日以内に支払う必要があります。
労働基準法23条では「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称に如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」と定められています。
退職金については、就業規則等に「条件等を明確に定めている場合」は労働基準法上「賃金」とされますが、日々の労務の提供に対して支払われる通常の賃金とは異なり、支給要件を満たした場合に発生する権利であり、この場合通達においても、あらかじめ特定した支払期日が到来するまでは支払わなくても差し支えないとされています。
この場合の「条件等明確に定めている場合」とは、就業規則等に①適用される労働者の範囲 ②退職手当の決定、計算および支払いの方法 ③退職手当の支払いの時期 以上3点について記載されている場合であり、実際に支払日が③に従っていれば、原則として労働基準法違反にならないということになります。
ただ今回のように、規程に定めがなかった場合はどうでしょうか。
この場合退職金は、労働基準法第23条の適用を受け、職員の請求があれば7日以内に支払わなければなりません。ただし、退職金の場合は職員が退職してから発生する権利ですので、退職前の請求であっても、権利が確定した退職日に請求されたものとみなし、退職後7日以内に支払うことで問題はなく、必ずしも退職日の翌日に支払う義務はありません。
退職金については、場合によっては高額になるケースや、外部で積立を行っている場合に事務手続きに時間を要したりする場合等、退職金の支給まで、ある程度の期間が必要となることもあるため、就業規則等に退職金制度に具体的な定めがあれば、支払い時期についても明記しておくほうが望ましいでしょう。
それいゆ2014年3月号掲載記事
著者紹介
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人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。
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