診療所の院長に万が一があった場合の会社の資金繰りについて

井上勇

リスクマネジメント

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

―診療を止めないための備え―

外来中心のクリニックにおいて、院長は“経営者”であると同時に“主治医”でもあります。
もし院長に万が一のことがあった場合、経営はどのような影響を受けるでしょうか。

多くのクリニックでは、院長が診療の中心です。院長が不在となれば、代診医をすぐに確保できない限り、診療そのものが継続できないケースも少なくありません。つまり、売上がほぼゼロになる可能性も想定しておく必要があります。

例えば、月間売上が1,000万円、固定費が500万円のクリニックがあったとします。診療が停止すれば、売上は止まりますが、家賃や医療機器のリース料、スタッフの給与などの固定費は毎月発生します。単純計算で、3か月で1,500万円、半年で3,000万円の資金が必要になります。

さらに、後任医師の確保や診療体制の再構築には時間がかかります。一般的に医師の採用は、求人開始から内定、入職までに3〜6か月程度を要するといわれています。条件調整や現職からの引継ぎが必要な場合には、半年以上かかることもあります。その間も、固定費の支払いは続きます。仮に閉院するとしても、かなりの時間と閉院するための資金が必要になります。

ここで考えたいのは、「いくら準備しておくか」ではなく、「何か月間、持ちこたえられるか」という視点です。急な出来事が起きたときに、慌てて判断を迫られるのではなく、落ち着いて次の体制を整えるための時間を確保できるかどうか。それが経営の安定につながります。

クリニック経営は院長個人の人生と直結しています。しかし同時に、地域医療という社会的責任も担っています。
もし明日、自分が診療に立てなくなったら――。
そのときのことを、ほんの少し想像してみることも、ひとつの備えになるのかもしれません。

著者紹介

井上勇
経営プランニング部 ライフプラン・リスクマネジメント課

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