令和8年度診療報酬改定:ベースアップ評価料の変更点
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
医療機関の職員の賃金改善(ベースアップ)を支援するために設けられた診療報酬です。
利益を増やすための制度ではなく、得られた原資を給与・賞与・法定福利費(社会保険料等)に確実に充てることが前提となっています。
本制度は令和6年度を起点に、令和8年度・令和9年度と二段階で点数が大幅引き上げされる構造が採用されており、「確実な賃上げを支える仕組み」として位置づけられています。
しかしながら、この改定の短冊や告示を見て、
・結局、当院はどの点数を算定すべき?
・初診は「6点 → 17点」になるってことで良いの?
という質問が多数よせられています。
目次
ベースアップ評価料とは?
ベースアップ評価料とは、医療機関で働く職員の賃金改善(ベースアップ)を支援するために設けられた診療報酬です。利益を増やす制度ではなく、得られた原資は職員の給与・賞与・時間外手当・法定福利費などの賃金改善に充てることが前提とされているわけですね。
点数が大幅アップ(2026年6月・2027年6月の二段階)
まずは、点数がどのように変わるのか、見ておきましょう!
O001 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
1 初診時 17点
2 再診時等 4点
3 訪問診療時 イ 同一建物居住者等以外の場合 79点
ロ イ以外の場合 19点注1~4 (省略)
5 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療
令和8年度診療報酬点数表(別表1)より抜粋
機関において、継続して賃上げに係る取組を実施した保険医療機関については、1、2並びに3の
イ及びロの所定点数に代えて、それぞれ23点、6点、107点及び26点を算定する。
6 1から3までに規定する点数について、令和9年6月以降においては、それぞれ所定点数の100分の
200に相当する点数により算定する。
7 注5に規定する点数について、令和9年6月以降においては、1、2並びに3のイ及びロの所定点数
に代えて、それぞれ40点、10点、186点及び45点を算定する。
ところが、この「注5」~「注7」について、なんだかよくわからない・・・という声が上がってきているわけです。厚生労働省はすでにYouTubeによる「説明動画」や「説明会資料」をアップし、非常にわかりやすい動画になっていますので、ぜひ見ていただきたいのですが、少し整理しておきましょう!

この図はとても分かりやすくなっています。
先ほど点数表の記事でもあった点数(初診時17点、再診時4点等)は、実は「令和6年度診療報酬改定で算定し賃上げを実施している医療機関は現行点数(初診時6点、再診時2点等)に上乗せして算定する」ということがわかると思います。(上記図の左側「令和8年度」「令和9年度」)
そして、現在算定していない医療機関が「令和8年度から算定する場合」は、右側の図に示されているように「上乗せ分の新点数のみを算定する」というルールになっています。
これがわかりにくい改定であることの一つ目です。
さらに、令和9年6月になったら、上乗せ分が令和8年6月以降分の倍になる点も、分かりにくくしている理由ではないでしょうか?
短冊で出てきていた「確実に賃上げができる仕組み」として明確化されています。
令和8年度改定で特に変わる“3つのポイント”
さらに、今回の改定で変更になっているポイントを整理しておきましょう!
① 対象職員が拡大!
ベースアップ評価料の対象が、「当該保険医療機関に勤務する職員」へ拡大(事務職員を含む)。一部の勤務医(例:40歳未満)等の扱いも評価枠組みに統合されるため、事務職を含めた賃金改善計画が必要になります。
※医師・歯科医師の具体的な扱い(年齢区分等)は最新の告示・通知をご確認ください。
② 届出方法(外来中心クリニックは特に簡単)
外来中心の診療所は、「ベースアップ評価料Ⅰ 専用届出様式(Excel)」で簡易に届出できます。
届出時の賃金改善“計画書”の提出は不要(簡素化)され、半期の「中間報告」と年次の「賃金改善実績報告」で、実際の賃上げ状況を報告する運用に変わりました。
この報告書は、確実に賃金改善にあてているかどうか?を確認するためのもの、と説明されています。
また、各職種別の報告ではなく、医院全体の報告と変わると説明されています。
※中間報告のタイミングは、施行後おおむね6か月(例:6〜8月)、実績報告は毎年度の提出が基本
とされました。最新の様式と締切は、地方厚生(支)局の案内をご確認ください。
③賃金改善の実行と記録が非常に重要
令和8年度改定では、届出時の「賃金改善計画書」が不要になり、制度の入口が大幅に簡素化されました。その一方で、実際に賃金改善を行ったかどうかを、中間報告と年次の実績報告で確認する“事後検証型”の制度に移行したため、実行内容と記録の正確さが従来以上に重要です。
監査で特に見られるポイントは次の2つです:
1)給与台帳・賞与台帳・社会保険料(事業主負担分)の根拠資料の保存
⇒医院全体での報告になるため職種別の提出は不要ですが、裏付けとなる個票レベルの台帳類は
必ず保存し、「総額=個票合計」で説明できる状態を維持しておくことが求められます。
2)評価料収入と賃金改善総額(給与・賞与・法定福利費)の突合
⇒法定福利費については、事務負担軽減のため賃金改善額×係数(例:16.5%)を上乗せして計算し
てよいとされています。そのため、評価料で得た収入と、こうした「賃金改善総額」が毎月整合
していることが必要です。
入院ベースアップ評価料や外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は?
入院病床がある医療機関や非常に外来患者が少ない医療機関は、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」をベースにしつつ、それだけでは十分な賃上げにならないため、これまでと同様に「入院ベースアップ評価料」や「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が用意されています。
無床診療所の場合、評価料(Ⅱ)を算定するかどうかは、評価料(Ⅰ)の賃上げ率により変わってきますし、算定するかどうかは任意でよいと思いますが、病院の場合、入院ベースアップ評価料を算定しないと対象職員の十分な賃上げは難しいと思います。
今回入院ベースアップ評価料は従来の165区分から250区分(点)に組み換えになっています。さらに令和9年度は最高が500点になることがわかっています。誤算定とならないように確認しましょう!
まとめ ~医療機関は3つの区分に分かれる
ベースアップ評価料は以下3カテゴリーで点数が変わります。
- 令和6・7年度から継続して賃上げ実施している医療機関
- 令和8年度から賃上げに取り組む医療機関
- 賃上げを行わない/評価料を算定しない医療機関
つまり、「継続して賃上げ」を行うほど評価点数が高い仕組みへと改定されているのです。
物価上昇・人手不足を背景に、賃上げの「実効性確保」を目的とした、政策色の強い制度ともいえるのではないでしょうか?
人材確保に難渋している医療機関が増えているようにも感じます。
また、対象者が、全職種に拡大しましたので、特定職種に支給しないのはチョッと問題があるのではと算定届出に躊躇されていた医療機関にも、この取り扱いで届出の決心がつかれたのではないでしょうか?
2026年、2027年の2段階で大幅増点(最大2〜3倍)されますし、届出は簡略化され、翌月から算定可能です。最終的には「算定しない選択=職員の賃上げ財源を失う」ことになるため、多くの医療機関で届出が必須になる流れができてきたと思います。
まだ算定されていない先生方も、この機会に算定を検討されてみては如何でしょうか?
おまけ ~令和7年度補正予算の「 2つの支援金」概要~
令和7年度補正予算として、昨年12月に公開された2つの支援金があります。
医師会等からすでにご案内があったかと思いますが、ここで概要を簡単に整理しましょう。
無床診療所向けには、賃上げ支援15万円と物価高騰支援17万円の2つがあり、いずれも単発の給付金として措置されています。
賃上げ支援15万円は、小規模医療機関でも賃上げの実効性を確保するための即時原資として設計されたものです。
補正予算が可決された12月以降から、令和8年6月の診療報酬改定までの間(約半年間)に発生するベースアップ相当分を前倒しで補填する趣旨で、橋渡し的に給付されています。
今回の改定では、ベースアップ評価料の対象が事務職員を含めて拡大したこともあり、賃上げ対象の裾野が広がりました。物価高騰が続く中で、こうした補正給付を職員の継続的なベースアップを支える初期原資として位置づけ、賃上げの維持に役立てていただくと良いのではないかと思います。
なお、病院や有床診療所へは別の仕組みで支援金が準備されていますので、参考資料に記載している「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」をご覧くださいませ。
<参考資料> 令和8年3月10日確認
◆厚生労働省/令和8年度診療報酬改定について
※令和8年度診療報酬改定説明資料等について ⇒説明会資料及び説明動画はこちら
※説明会資料/令和8年度診療報酬改定1. 賃上げ対応
⇒(説明資料はこちら)
◆厚生労働省/医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について
◆福岡県/令和7年度福岡県医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援について
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
最新の投稿