令和8年度診療報酬改定~入院の食事療養費・生活療養費をめぐる議論と実務のポイント~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
令和8年度診療報酬改定に向け、中医協では入院時の食事・光熱水費の在り方が重点的に議論されています。食材費の高騰、光熱水費の上昇、病院給食現場の慢性的な赤字体質——こうした構造的課題が顕在化し、改定の方向性を大きく左右しています。
本稿では、今回の改定の議論のうち、入院時食事療養費・入院時生活療養費に焦点を絞り、動向の整理と実務への示唆をまとめます。
そもそも入院時の食費制度はどう成り立っているのか
入院時の食費は、国が定める「食事療養基準額」をもとに、患者負担(標準負担額)+保険給付で構成されています。
基準額から患者負担を差し引いた分が「入院時食事療養費」として保険給付される仕組みです。
患者負担は所得によって区分されており、低所得者には負担増を抑える措置が維持されています。
療養病床(65歳以上)では「生活療養費」として「居住費」もあわせて評価されている点が特徴です。
この食事療養費は、常勤管理栄養士の配置や毎食の検食の実施、保温食器、帳簿整備、特別食対応など「質の高い給食体制」を求める「入院時食事療養(Ⅰ)」とそれ以外の「入院時食事療養費(Ⅱ)」に分けられています。この「入院時食事療養費」の中には、一般的な食材費も含まれています。
その他「食事療養費」は、特別な治療食に対する「特別食加算」や「食堂加算」、複数メニューから選択できる「選択食加算」等により構成されています。
令和7年度に実施された“連続値上げ”の影響
今回の議論の前提として押さえるべきは、令和7年4月の基準額20円引き上げ(670円→690円)です。
その背景には、食材費・光熱水費の継続的な上昇があります。
そもそも、令和6年度診療報酬改定で基準額の引き上げが行われました。
しかし、令和6年度改定(2024年6月)後も、食材費・光熱水費の高騰が継続したため、医療の一環として提供されるべき食事の質を確保する観点から、令和7年4月にさらに+20円の引き上げを実施する方針が中医協・医療保険部会で相次いで示され、期中改定として決定されました。
この際に、患者負担(標準負担額)は原則20円増、低所得区分は0~10円増で配慮されています。
しかしながら、2025年秋の中医協では、CPI(食料)や家計の食料支出の上昇が続くなか、給食委託の値上げ要請が広範に及ぶ実態が報告され、令和6年度・7年度の引き上げではとても間に合わない状況が明らかになっており、「令和8年度の診療報酬改定でもさらに値上げをすべき」との意見が多く、その方向性が示唆されておりました。
令和8年度診療報酬改定のポイントは?
この「期中改定」後も続く物価高騰を受け、令和8年度改定では+40円の追加引上げが示されました。
40円という水準は、直近の物価上昇率(約6.5%)を自己負担額510円に乗じた目安(約33円)に、調理・提供コスト等を勘案して切り上げたものと説明されています。
結果として基準額は690円→730円、一般の標準負担額は510円→550円の見通しです。
但し、最終的には告示・通知を待って確認していただきたいと思います。
また、併せて、現場実態に沿った見直しがあり、「嚥下食」の評価の見直し(特別食加算の対象化)なども論点として併記されています。
まとめ
今回改定のポイントの一つである、物価高騰への対応ですが、この食事療養費の引き上げもその一つであるといえます。そして、再度の引き上げが決められていく中で、中医協の議論の場で、支払い側からは、「患者負担の増になるため、食事の質向上に努めてほしい」との意見が示されています。
・食材費・光熱水費の高騰
・高齢化に伴う嚥下食の需要増
・DX推進による業務効率化
・療養病床の生活支援の強化
これらの要素が複雑に絡み合い、入院時の食事療養費制度は大きな転換期にあると思います。
給食部門は病院経営の中で軽視されがちな領域ですが、患者満足度と治療成果に直結する重要な医療サービスです。
令和8年度改定を契機に、患者負担と食事の質の両立、そして職員の働きやすさや効率性をどうしていくのか、見直していく機会ではないかと思います。
<参考資料> (令和8年2月18日確認)
■厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について(中医協資料)
:改定経緯、個別改定項目、答申資料
■厚生労働省「個別改定項目について(総-2)」
:入院時の食費・光熱水費の基準見直し、食事療養の見直し
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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