令和6年度診療報酬改定~生活習慣病について②計画書を作ってみよう!
長 幸美
医療介護あれこれ三大生活習慣病(脂質異常症、高血圧症、糖尿病)について、今回の改定で、「特定疾患療養管理料の対象疾病から外され、内科の医療機関はかなり衝撃が走っているお話をコラムに記載しました。その後、約1か月で20,000件を超えるアクセスがあり、先生方の困惑の様子が目に見えるように感じております。弊社にも、医師会の先生方からもお問い合わせをいただき、驚いております。
※まだ、ご覧になっていない方は、こちらからご一読いただければと思います。
*令和6年度診療報酬改定について~生活習慣病管理料について ⇒(こちら)
*Q&Aより~「主病(主傷病)」って何だろう? ⇒(こちら)
今回はお問い合わせが多い、「生活習慣病療養計画書」について、少しお話ししたいと思います。
目次
生活習慣病療養計画書とは・・・?
生活習慣病とは、簡単に言うと、「食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣が、その発症や進行に関与する疾患」とされています。つまり、生活習慣そのものが疾患に影響を与えるものだということです。この為、日ごろからの生活習慣に注意し、節制することや適度な運動をすること、ストレスを抱え過ぎないことなどが大事になるのです。
しかし、「わかっちゃいるけどやめられない・・・」、改善したほうが良いと思っていても、なかなか自主的に改善することって難しいですよね。この位いいかな~なんて自分を甘やかしてしまったり、生活習慣病にとってはよろしくない生活習慣がやめられない・・・なんてこともあるかもしれません。
悪化してしまうと最終的に人工腎臓(透析)を導入しないといけないことや、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こして緊急入院・手術など、医療費もかかるし等々・・・自分自身の時間にも制約がかかってしまうことになります。人生100年時代、健康で過ごしていきたいとは誰しも考えていることでしょう。
この「生活習慣病療養計画書」は、生活習慣病になってしまった方の重度化防止や管理に大事な、食事や運動、し好品等の生活習慣を見つめ直し、患者本人が自覚し改善していくための一つのツールだと思います。計画書は厚生労働省から様式の雛形が出ています。
初回用(別紙様式9)と2月目以降の継続用(様式9の2)です。
初回用(別紙様式9)のポイントは?
生活習慣病の確定診断された後、先生はまず患者さんに検査結果の説明を行い、生活習慣を改めることがなぜ必要かという説明をされると思います。
例えば、私の父は高血圧症でしたが、検査結果により、糖尿病と高脂血症であると診断されました。当時の先生は、「高血圧症はまだ軽度の為、糖尿病・高脂血症のコントロールをすることにより、今以上に悪化しないようにしましょう」と説明され、薬物療法と糖質・脂質制限、たばこを控えるように指導されていたようです。しかし、月に2回診療に行き、その時は神妙になっていたようですが、血液検査の結果をもらうこともなく、主に食事を作っていた母も医師の指導内容については知らなかったようです。
初回の療養計画書を見てみると、初回の狙いは、「検査結果を理解できること」と「自分の生活上の問題点を抽出し、目標を設定できること」とあります。主体は患者さんで、本人が検査結果を理解し、目標設定するためのものですね。
そう考えていくと、目標のところに、①達成目標と②行動目標があり、どちらも「患者さんと相談した目標」とされていることがわかってくると思います。
患者さん自身が、生活習慣病と付き合っていくために、どうしようと思っているのか、ということを医師がサポートし一緒に考えていく、ということになるのですね。また、重点を置く領域と指導項目については、必要な項目にチェックをつけて具体的な指導内容を記載して、指導していくように作られています。
一番下の検査結果の部分は、結果表を添付することで、省略できます。
初回に関しては、患者さんの同意のサインをもらい、電子カルテの場合はスキャンして保存し、紙カルテの場合は控えをカルテに添付します。同意が必要ですので、サインは忘れずにもらうようにしましょう。
2回目以降(継続用)のポイントについて
継続用の療養計画書の「ねらい」は「重点目標の達成状況を理解できること」「目標再設定と指導された生活習慣改善に取り組めること」とされています。ここでも、主体は患者さんであり、目標の達成度合いがどうか、患者さんと十分に話をして ①達成目標や ②行動目標の見直しをするのか、検討することになります。
2回目以降の計画書は、特に変化がない場合、理解していることを確認することで、サインは省略することができます。(サインの下欄のチェックを入れる)
また、コントロールがよく(目標を達成している)、①達成目標、②行動目標等の変更もなく安定している場合は、この療養計画書(継続用)を省略することはできるが、少なくとも4月に1回は交付することが必要になります。4ヶ月に1回作ればいいわけではなく、コントロールが良い場合は、計画書がなくてもコントロールができるから省略することができる・・・わけです。
多職種連携による治療管理
生活習慣病管理料(Ⅱ)において、「治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい」とされました。
診断し、計画を立てていくのは医師、そしてそれを治療管理していくのは、多職種でしたほうがよい・・・つまり「餅は餅屋」ということですね。
Q&Aより~療養計画書編~
生活習慣病管理料に関しては、先生方からいろいろとお問い合わせがあります。
その中で、この「療養計画書」に関するものをまとめてみたいと思います。
療養計画書(継続用)は4カ月に1回の発行だけでよい???
「継続の用紙は署名がいらないし、4ヶ月に1回でいいから、ウチは継続の用紙だけを使って4ヶ月に1回しか発行しないよ。毎月なんて大変だよ!」というお話をお聞きしたことがあります。
そもそも、「初回用」と「継続用」では、目的(ねらい)が違っています。初回用は、患者さん本人が「検査結果を理解」し、「自分自身の問題点を把握(抽出)」し、そのうえで、「目標を設定する」ことに意味があります。しっかりと説明を受け納得しました、この目標に向かって頑張ります、という、いわゆる「意思表示」の為の署名だと思えば、必要だと理解できますよね。
また、2回目以降の目的(ねらい)は、「目標の達成状況の確認」と、「目標再設定」や「生活習慣改善への取組みの実施」ができているかどうか確認して、調整(目標の修正)していくことにあると思います。この為、コントロールが良好で安定している場合などは、全く同じものを指導の都度交付する必要はなく、それでも4月に1回は確認の意味も含めて、忘れてしまわないためにも発行してね・・・ということだと思うのです。
同時に、算定する以上これらの項目に対する指導は必要で、計画書の発行の如何を問わず、指導を行い、指導の要点はカルテに書くということになるのではないでしょうか?
発行をしなくて良い=指導をしなくてよい、というわけではありません。
療養計画書のひな型をカスタマイズすることは可能か?
疾患別にカスタマイズすることは可能ですが、留意点があります。
項目が不要だから消す・・・ということはできないわけです。追加することは可能ですし、形を変えることも可能ですが、生活習慣病の治療管理に必要な内容として、雛形に作られている為、必要なものを追加することはできても、雛形の項目をなくすことはできないのです。
・・・となると、カスタマイズできる部分は、「食事・運動・タバコ・その他」の右側にある薄い文字の詳細な指導項目ということになるのではないかと思います。
診療の中で、使いづらい・・・電カルに載せたい・・・ということでご相談が多い項目ではありますが、省令や事務連絡、療養担当規則等で指定(雛形がある)されている書類については、項目を削除することはできませんし、空欄もよくありません。
厚生局によっては、斜線も注意されるとの情報もあります。「○○の為、記載せず」等の対応がよろしいのではないかと思っています。
管理栄養士に関わってもらいたいと思うが、外部の管理栄養士でも良いのか?
生活習慣病において「食事」の指導はとても重要になります。外部の管理栄養士が指導する場合も算定は可能です。また、栄養食事指導料を算定することもできますので、ぜひご検討いただければと思います。疑義解釈の中で、次のような回答があります。
問 143 生活習慣病管理料(Ⅱ)において、「治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい」とされたが、管理栄養士を雇用していない診療所において、外来栄養食事指導が必要となり、他の保険医療機関の管理栄養士と連携し、当該管理栄養士が所属する保険医療機関で対面により栄養食事指導を行った場合について、指示を出した医師の診療所が「B001」の「9」外来栄養食事指導料2を算定できるか。
厚生労働省/事務連絡「「疑義解釈について(その1)」令和6年3月28日発出
(答)算定可能。ただし、栄養食事指導を行う管理栄養士は、指示を出す医師の診療所と適宜連絡が取れる体制を整備するとともに、栄養指導記録を必ず共有すること。
説明をしてサインをもらうのは医師がするものなのか?
サインについては、医師が説明をした後、場所を変えてサインをもらってもよいと思います。疑義解釈の中にも次のような記載があります。
問131 「B001-3」生活習慣病管理料(Ⅰ)及び「B001-3-3」生活習慣病管理料(Ⅱ)(以下単に「生活習慣病管理料(Ⅰ)及び(Ⅱ)」という。)は、栄養、運動、休養、喫煙、飲酒及び服薬等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行う旨、患者に対して療養計画書により丁寧に説明を
行い、患者の同意を得るとともに、当該計画書に患者の署名を受けた場合に算定できるものとされているが、署名の取扱い如何。
(答)初回については、療養計画書に患者の署名を受けることが必要。
ただし、2回目以降については、療養計画書の内容を患者に対して説明した上で、患者が当該内容を十分に理解したことを医師が確認し、その旨を療養計画書に記載した場合については、患者署名を省略して差し支えない。問132 問 131 について、療養計画書の内容について医師による丁寧な説明を実施した上で、薬剤師又は看護職員等の当該説明を行った医師以外のものが追加的な説明を行い、診察室外で患者の署名を受けた場合にも算定可能か。
厚生労働省/事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1)」令和6年3月28日発出
(答)可能。
まとめ
療養計画書はただ単に書類を発行する・・・というわけではなく、本人がどのような生活習慣の改善を心がけていくか・・・ということを明確にし、「頑張る項目」を意思表示するためのものでもあると思います。そもそも、患者さんの治療に関して、入院して外科的手術や処置をしない限り、本人が意識して、生活習慣の改善行動を起こさない限り重症化予防はできないと思います。
生活習慣病管理料の療養計画書には、そのような本人の意識にも働きかける目的もあるように思うのです。計画書を作成するには、できる限り先生方の手間が省けるようにワード等で作成しチェックに工夫をしたものを作られることが大事でしょう。医師だけでかかわるのではなく、看護師さんや薬剤師さん、管理栄養士さん、リハビリのセラピストの皆さんの得意分野を結集して多職種でかかわることにより、患者さんの課題にアプローチできるようにしていくことが可能となるのではないかと思っています。皆さんのサポート、多職種連携ができるよう、頑張っていきましょう!
2024年5月13日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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