暦年課税贈与と相続時精算課税贈与の選択

五十嵐 史絵

税務・会計

6月8日に九州北部は梅雨入りし、10日は梅雨前線の影響で福岡県では大雨になりました。
こんな雨にも負けず、本日も一日頑張りましょう。

令和6年以降から贈与税・相続税の制度が大きく変わり一年を経過し、お問い合わせが増えました。
暦年課税と相続時精算課税のどちらの制度がよいのかは、一概には判断がつかないのが現状です。
いくつかの前提を踏まえたうえでシュミレーションする必要があります。
今回は、暦年課税贈与か相続時精算課税贈与かの選択ついておおよその目安をお伝えします。

≪暦年課税≫
贈与時に基礎控除110万円を超える部分は累進の贈与税率で課税されます。
相続開始前7年以内の贈与以外は相続財産に加算されません。

≪相続時精算課税≫
贈与時に特別控除2,500万円を超える部分は一律20%の贈与税で課税されます。
相続時に贈与財産が贈与時の時価(相続税評価額)で、令和6年以降の贈与については基礎控除110万円を控除した残額で加算されます。

  • 相続税がかからない若しくはかかっても少額の場合 相続時精算課税が有効

暦年課税で何年もかけて財産を移転するのに比較すると、早期に多くの財産移転が可能です。仮に贈与税を支払った場合は相続時に還付される可能性が大きいです。

2. 相続発生まで長期間(20年)贈与が可能な場合 暦年課税が有効
 長期間かけて多くの財産の贈与移転が可能で、相続時に相続財産の加算も基本的にありません。
ただし、相続開始7年以内の贈与は加算されます。

3. 相続発生の7年前までは暦年課税贈与を使い、その後の7年間は相続精算課税贈与を行うことが有効   
 相続開始前7年以内の暦年課税贈与は加算対象となりますが、相続時精算課税贈与の場合は、110万円の基礎控除までは加算対象となりません。

4. 贈与を受ける人がまとまった資金を必要としている場合 相続時精算課税が有効
 贈与を受ける人が多額の住宅ローンを抱えている場合など、贈与資金で一括返済できる場合の金利負担の減少効果は大きいです。

5. 財産規模が大きく多額の相続税がかかる場合 前期は暦年課税、後期は相続時精算課税が有効
 暦年課税から始めることである程度の財産を移転できます。その後に、賃貸マンション、アパートなどの収益物件を贈与することで、贈与を受けた人に収入が入り、被相続人の現金収入の蓄積も防げます。また、後期に相続時精算課税を使った贈与を行うことにより贈与物件の相続税評価額の値下がりリスクも小さくなるでしょう。

平均余命が10年前後になる年齢は、男性は75歳から80歳、女性は80歳から85歳です。ぜひ一緒に考えてみませんか。ご連絡をお待ちしています。

参照:財務省令和5年度税制改正(案)のポイント(令和5年2月)

   厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況「1主な年齢の平均余命」

(参考までに)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

令和7年5月19日(月)に国税庁ホームページで「相続税の仕組みの分かりやすい解説「相続税のあらまし」が更新されました。全4ページです。

令和7年4月1日現在の法令等に基づき、原則として、令和7年12月31日までに亡くなった人に係る相続税について説明したものです。なお、平成26年分以前は、相続税の基礎控除額などが異なるので注意してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-aramashi.htm

令和7年6月13日

著者紹介

五十嵐 史絵
税務会計コンサルティング部 税務会計3課

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