令和6年度介護報酬改定~速報~
長 幸美
医療介護あれこれ1月22日(月)の社会保障審議会(社保審)にて審議されていた、介護報酬の概要が明らかになってきました。まだまだ詳細な内容の通知は出ていませんので、わからないことがたくさんあります。
今回の改定では、医療に大きく絡む部分は6月改定になるなど、いわゆる「トリプル改定」の影響を大きく受けているように思います。
今日はこれまで「介護はよくわからない」「うちは医療機関だから介護は関係ないよ」といっておられた診療所の先生方や事務職員の皆様に、少し気にしていただきたいことをお話ししたいと思います。
目次
令和6年度介護報酬改定の概要
まず、令和6年度介護報酬改定の概要資料を見ていきましょう。
人口構造や社会経済の状況を踏まえて、基本的な4つの視点をもとに介護報酬改定を実施することが、はじめに記載されています。「基本的な4つの視点」とは、下の図にある1~4までの項目です。
毎回はじめにどのような方針で改定が行われるか、ということが簡単にまとめられて出てきます。それがこのスライド資料です。今日はこのスライドから、ざっくりとした改定の内容を見ていきます。
視点1「地域包括ケアシステムの深化・推進」
先ずは視点1です。一番力を入れているところといってもいいと思います。
地域包括ケアシステムは、簡単に言うと「重度の要介護状態になっても、地域の中で暮らし続ける仕組み」のことを指し、「地域包括ケア病床(病棟)」などで、皆様もお聞きになったことがあるのではないかと思います。
ここで注目していくところは、「生活し続ける」ためにどんなサービスが必要か・・・というところだと思います。下の図は、高齢者施設等と医療機関との連携について、説明された図です。
この図が表しているように、緊急時だけではなく平時からの連携が重要なこと、在宅医療を支援するところは、在支診・在支病だけではなく、地域包括ケア病棟を持つ病院だということも想定していることが明記されています。
平時からの連携・・・というのは、急変した時にいきなり依頼された時、「こんな困った時にだけ言われても・・・」「こんな状態になる前に何故受診させないのか?」ということが起きないように、日ごろからの情報共有などが重要なことは理解いただけると思います。関係者同士でグループLINEのように、スラッグやChatwork、Teamsなどのビジネス用の共有ツールや専用の介護ツール等を活用して関係者同士が情報共有を図っている事例などもあります。
このスライドにある「高齢者施設等」の中には、「特養」「老健」「介護医療院」の介護3施設だけではなく、特定施設(介護付き有料老人ホーム)や認知症グループホームも含まれています。
つまり、日常的に寝起きをしている介護が必要な人の住まい・・・といってもよいかもしれませんね。そういったところには、介護専門職や看護職員がいらっしゃるので、「日常の状態」を共有し、変化が起こった時にいち早く相談できる体制が求められ、これらの内容が「運営基準」の中にはいってきました。どのように共有するかは、検討する必要があると思います。
そして、「看取りへの対応」、有事に対応する「BCP(業務継続計画)の策定」や「高齢者虐待防止策の策定」「身体拘束廃止」に関しては、未実施減算が導入されました。所定単位数の1%(BCPは施設・居住系サービスの場合3%)の減算になります。「高齢者虐待防止」「身体拘束廃止」のみ実施についてはこれまで固定で5単位/日減算だったものが、所定単位数の1%あるいは3%とされることで、減算幅が大きくなっています。取り組みがまだの事業所さまは早急に対応されることをお勧めします。
自立支援・重度化防止に向けた対応
これは何と言っても、リハビリテーション・栄養管理・口腔(歯科)の一体的評価ではないでしょうか?
通所リハビリ・訪問リハビリにおけるリハビリテーションマネジメント加算について大きく見直しがされています。LIFEの提出の有無、リハビリ・口腔・栄養のアセスメントの実施等の有無について3段階に分かれ、医師が利用者に説明し同意を得た場合は加算として評価されることになりました。
詳細な要件等は、巻末の資料をご確認ください。
良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
ここでは、介護職員の処遇改善について、見直しがされています。
これまで「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」という複数の加算等を組合わせて介護職員の給与の引き上げ等を行われていたものが、「介護職員等処遇改善加算」に一本化され、介護現場で働く方々の一定程度以上のベースアップへとつながるように支援するというものです。
さらに、今回は、一定職種の「テレワーク」を認めたり、介護ロボットやICTテクノロジーの導入に対し加算を設けたり、「治療と仕事の両立支援」に対する配慮では、短時間勤務制度の利用職員の常勤換算方法を見直すことや外国人介護人材にかかる人員配置基準上の取扱いを見直すなど、人員の確保がしやすい環境等の見直しがあります。
このほかにも、通所介護の個別機能訓練加算の人員配置要件及び評価の見直しなどが行われていますので、確認し対応していきましょう!
制度の安定性・持続可能性の確保
介護保険制度を安定的に運用し持続できる仕組みを作るというもので、同一建物における減算率や訪問看護ステーションにおける理学療法士等が実施した場合などの見直し、短期入所生活介護が長期に利用されている場合・・・つまりロングショート・・・の適正化など、が行われています。
その他
訪問診療を行うクリニックの先生方は「居宅療養管理指導」の算定をされていると思います。実は訪問診療を行う事業所である先生方にも「虐待防止措置」や「BCP(業務継続計画)の策定」については作成が必要です。経過措置期間が令和6年3月31日までとされていましたが、今回の改定で、経過措置期間が3年間延長されることとなりました。まだ、策定がお済でない先生方、これを機会にぜひ策定いただけたらと思います。
また、通所系サービスにおいて「送迎」の問題は切っても切り離せないものです。ほとんどの事業所が送迎も「訓練」と位置づけ、介護職員が送迎を行っておられることが多いのではないでしょうか?
今回の改定では算定要件の見直しが行われ、責任の所在等を明確にしたうえで、他の介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者との同乗を可能にするということが明確化されてきております。複数事業所を持ち、人員不足で悩まれている事業所は少し安心できる材料ではないでしょうか?
まとめ
令和6年度の診療報酬改定が令和6年6月1日施行とされたことを踏まえて、介護報酬改定の時期は、医療系サービスが6月1日施行、それ以外のサービスは4月1日施行と、施行時期が分かれています。
処遇改善関係加算の加算率の引き上げについても、加算の一本化については、令和6年6月1日施行とするものの、現行の処遇改善関係加算について事業所内での柔軟な職種間配分を認めることとする改正は、令和6年4月1日施行となり、少々面倒な改定になってしまうかもしれません。漏れがないように確認し対応をしていただければと思います。
また、補足給付に関わる見直しも行われていますが、基準費用額の見直しは令和6年8月1日施行、そして多床室の室料負担については令和7年8月1日施行とするなど、施行時期が異なるため、これまで以上に注意深く確認していくことが必要です。
令和6年1月22日現在に、新単位数と主な改正点が出てきましたが、細かな運用に関する事項などは、これから、どんどん発出されていくものと思われます。「地域包括ケアシステム」の深化が命題となっていますが、医療と介護そして障害福祉についても同時に行われる改定です。診療所の先生方も、ぜひこれを機会に介護事業にも興味を持っていただき、地域にお住いの患者さまやご家族さまのご支援にご尽力いただければと思います。
<参考資料> 令和6年1月25日確認
〇厚労省:第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料 令和6年1月22日開催はこちら
・資料1:令和6年度介護報酬改定の主な事項について ⇒概要版はこちら
・参考資料1:令和6年度介護報酬改定における改定事項について ⇒概要版はこちら
・諮問書別紙:令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し⇒新旧対照表はこちら
2024年1月30日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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