整形外科系の処置について②~リハビリテーション~
長 幸美
医療介護あれこれリハビリテーション医療は、基本的動作能力の回復等を目的とする理学療法や、応用的動作能力、社会的適応能力の回復等を目的とした作業療法、言語聴覚能力の回復等を目的とした言語聴覚療法等の治療法より構成され、いずれも実用的な日常生活における諸活動の実現を目的として行われるものとされています。
目次
リハビリテーションとは・・・?
リハビリテーションは単に機能回復訓練を指すだけではありません。
事故や疾患により障害を受けた場合に、身体的・精神的・社会的に最も適した状態になるように、基本動作の回復を通して在宅生活への復帰を支援したり仕事やスポーツ活動への復帰を目指します。
この図のように、リハビリテーションの役割は患者さんの状態によって変化してきます。今回は急性期から回復期にかけてのリハビリテーション・・・つまり医療保険におけるリハビリテーションについてお話ししていきたいと思います。
疾患別リハビリテーション(H000~H003)
リハビリテーションには、疾患分類ごとに5種類あります。
疾患の特徴により、理学療法・作業療法・言語聴覚療法や付随する電気治療等を組合わせて実施しますが、疾患別リハビリテーションでは、リハビリ専門職と患者さんが1対1で、患者さんの状態に応じて、個別に実施されることにより、点数が設定されています。
下記表をご覧ください。
リハビリ名 | 点数 | 実施時間 | 標準的 算定日数 | 対象疾患(抜粋) |
心大血管疾患 リハビリテーション料 | (Ⅰ)205点 (Ⅱ)125点 | 1単位 20分 | 150日 | 急性心筋梗塞、狭心症、開心術後 大血管疾患、 慢性心不全で左室駆出率40%以下、等 |
脳血管疾患等 リハビリテーション料 | (Ⅰ)245点 (Ⅱ)200点 (Ⅲ)100点 | 1単位 20分 | 180日 | 脳梗塞、脳腫瘍、脊髄損傷、 パーキンソン病、高次脳機能障害、等 |
廃用症候群 リハビリテーション料 | (Ⅰ)180点 (Ⅱ)146点 (Ⅲ) 77点 | 1単位 20分 | 120日 | 急性疾患等に伴う安静に夜廃用症候群 |
運動器 リハビリテーション料 | (Ⅰ)185点 (Ⅱ)170点 (Ⅲ)85点 | 1単位 20分 | 150日 | 上・下肢の複合損傷、脊椎損傷による 四肢麻痺、運動器の悪性腫瘍、等 |
呼吸器 リハビリテーション料 | (Ⅰ)175点 (Ⅱ) 85点 | 1単位 20分 | 90日 | 肺炎・無気肺、肺腫瘍、肺塞栓、 慢性閉塞性肺疾患であって重症度分類 Ⅱ以上の状態、等 |
ご覧いただいて分かる通り、1単位はすべて20分以上となっています。疾患と人員配置を含む施設基準の届出により、それぞれ2~3区分の点数があります。
疾患別リハビリテーションの施設基準
今回は、整形外科的な処置としてのリハビリテーションですので、主には「運動器リハビリテーション」になります。施設基準は下記の通りです。参考までに添付します。
運動器リハビリテーションを実施するためには、診療所でも45㎡以上の広さが必要です。
そして専任の常勤医師が必要ですが、これは週3日以上・22時間以上の勤務を行っている複数医師の常勤換算でも可能です。その他は専従常勤の理学療法士・作業療法士の員数により点数が変わってきます。
標準的算定日数とは・・・?
それぞれの疾患別リハビリテーションで、治療期間の目安として設けられたものが「標準的算定日数」となります。運動器のリハビリテーションの場合は、150日となりますが、この日数を超えた場合は現在の状態を維持する目的で1カ月に13単位まで実施することが出来ます。
若年層や働き盛りの方の場合、リハビリテーションでの効果も分かりやすく、またそれぞれに社会復帰してリハビリテーションを早期に卒業することも可能だと思います。障害を負った機能を回復させる・代替え手段を取得するという意味もあります。残存機能をフルに生かして社会生活を送ることが出来るようにリハビリテーションを行うわけです。
運動器リハビリテーションとは?
整形外科では主に運動器リハビリテーションを実施されることが多いと思います。
運動器リハビリテーションとは、通知の中に以下の記載があります。
基本的動作能力の回復等を通して、実用的な日常生活における諸活動の自立を図るために、種々の運動療法、実用歩行訓練、日常生活活動訓練、物理療法、応用的動作能力、社会的適応能力の回復等を目的とした作業療法等を組み合わせて個々の症例に応じて行った場合に算定する。なお、マッサージや温熱療法などの物理療法のみを行った場合には第2章特掲診療料第9部処置の項により算定する。
厚生労働省/令和4年度診療報酬点数表_「H002運動器リハビリテーション_通知1」より
算定単位数は・・・?
疾患別リハビリテーションは通則により、1人の患者さんに対して、1日6単位まで算定ができるとされています。回復期リハビリテーションなど、別に厚生労働大臣が定める患者については1日9単位まで認められています。
1単位は20分以上ですので、6単位というと、2時間を超えるリハビリテーションが算定可能とされているわけです。
リハビリ職員1人が実施できる単位数は・・・?
運動器リハビリテーション料を算定すべきリハビリテーションは、「1人の従事者が1人の患者に対して重点的に個別的訓練を行う必要があると認められる場合であって、理学療法士又は作業療法士と患者が1対1で行うものとする」というように定められています。ですので、一人の理学療法士が複数の患者さんのリハビリを同時に行うことはできないわけです。
また、当該リハビリテーションの実施単位数は、「従事者1人につき1日18単位を標準とし、週108単位までとする。」と定められています。ただし、実施上限としては「1日24単位とする」とされていますので、この「週108単位」の範囲内で調整することが出来るものとされています。
例えば患者さん1人につき20分で1単位ということは、リハビリ専門職の勤務時間が8時間なので、
8時間÷20分=24単位・・・やろうと思えば実施できますが、週108単位の縛りがあるため、週5日間毎日24単位できるかというとそうではないというところは留意点ですね。
20分以内のリハビリは算定できる・・・?
通知の中に、「第1節リハビリテーション料に掲げられていないリハビリテーションのうち、簡単なものの費用は、算定できないものである」とあります。つまり、20分かからないリハビリについては、算定ができないものと考えられます。
リハビリテーションの記録は・・・?
リハビリテーションの実施に当たっては、「全ての患者の機能訓練の内容の要点及び実施時刻(開始時刻と終了時刻)の記録を診療録等へ記載すること」とされています。
ここで適時調査等で指摘が多いのが、実施時刻の記載が不適切であるという事例です。
例えば・・・
実施時間が、10:00~10:20、10:20~11:00、など、すべての患者さんがきっちりと20分ずつになっている場合など、患者さんの入れ替えや移動の時間は如何されているのですか?と問われることがあります。実際のリハビリテーションの実施を見ていると、終了後、少し話をしながらお帰りになったり、次の患者さんを呼んでリハビリを開始するまでに多少の時間のずれがあります。
実際に実施した「開始時刻」「終了時刻」を書いていないと、「不実記載」として指導を受けるケースもあるようです。また、勤務していない時間帯にリハビリの実施時間の記録がないかということも留意点の一つですね。
まとめ
今回は、整形外科系の処置(治療)として、疾患別リハビリテーション・・・中でも「運動器リハビリテーション」の基本的事項を見てきました。ついうっかり・・・ということがないように、基本的なところは押さえておきましょう。
2023年9月11日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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