令和6年度介護報酬改定の現時点での見通し
長 幸美
医業経営支援令和6年4月は診療報酬・介護報酬ともに同時改定が行われる予定となります。
社会保障審議会介護保険部会では、すでに議論が始まっています。団塊の世代が75歳を迎える2025年を目前に控え惑星直列とも言われている改定です。今後、少しずつお話をしていきたいと思います。
目次
介護保険事業計画について
現在介護保険事業計画については、3年に1回・・・介護報酬改定とともに見直しが行われることになっています。来年、令和6年は、医療(診療報酬)と介護同時改定でもあり、地域包括ケアシステムや地域医療構想の実現に向けて、調整が図られるものと思われます。
医療介護総合確保方針、医療計画、介護保険事業(支援)計画に係るスケジュール
2024年はご覧の通り診療報酬及び介護報酬の同時改定の年です。さらに、障害報酬の改定も予定されており、トリプル改定の年といわれています。
また、2024年には、医師の働き方改革元年とも言われており、医療計画及び介護計画も新たに実施される年です。このことからも、いま重要な時期を迎えていると言えるのではないでしょうか?
新型コロナウイルス感染症の流行により、医療の在り方、介護の在り方などの見直しとともに、医療機関への受診や期待についても、変化してきています。地域包括ケアシステムをさらにすすめていくためには、住まいを作るだけではなくその住まいの中で、どこまでサポート(サービス提供)するのか・・・が問われているように思います。
第8期介護保険事業支援計画の基本方針のポイントは?
一言でいうと、前回同様「地域の中で暮らしを支える改定」と言えるのではないかと思っています。
介護を必要とする人が最大値になり、支え手である生産人口が減少していくことが予測されています。そうなると、現状でも人手不足を訴える介護現場で、同じようにサービス提供ができるとは思えません。しかし、医療や介護サービスの提供はこれまで以上に求められていくのです。矛盾しているようですが、これが現実です。その中でどんなサービス提供方法や連携が必要か・・・ここでも役割分担と変化が必要になってきます。
その実現のために6つの重点課題が掲げられていますが、大まかにまとめると、次の4点になると思います。
地域共生社会の実現
高齢者も障害を持った人も子供たちも、一緒に暮らす社会としての「まちづくり」の観点です。
「まちづくり」というと大げさかもしれませんが、地域の中で「居場所がある」ということを行政も含めて情報共有・活用していくと言ったらわかりやすいでしょうか?
これが「介護予防・健康づくり施策の充実推進」や「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅等の情報を行政との情報連携を強化」というカタチで記載されていて、これは「どこで暮らすか」ということだけではなく、「お互いさま」という昔ながらのかかわりも含めて考えていくことを表しているように思います。
介護予防・健康づくり施策の充実推進・認知症施策の推進
・・・これは、要支援者や要介護1の軽い介護が必要な方について、また、要介護状態の重度化をどう予防していくか・・・つまり重度化させないことにより、施設入居の限界値をできるだけ遅らせていくことが求められている内容です。
これは「認知症」の方についても同じです。
認知症の方や介護されている方は、高齢者の変化について年齢によるものなのか、別の病気なのかなど、不安がたくさんあります。高齢化が進んでいくと、認知症の前段階(MCI)といわれる方も多くなるでしょう。地域の中で暮らしていくためには、その方々を地域でどう見守っていくか、支えていくかが重要になってくると思います。グループホームや小規模多機能の支援についても、事業所ごとにまちまちで標準化が必要になってくるでしょう。「通いの場」(点)だけではなく、地域(面)で支える、これは24時間365日の対応をどう作っていくかということではないでしょうか?
介護人財の確保及び業務効率化の取り組み
介護現場で働く人は、現状を見ていても、急激に増加することはないと思います。元気高齢者の活躍や、ボランティアの活用などが、重要になってくると思います。また、高齢化する介護現場での、ICT活用については、困難な面もあると思います。新たな仕組みを覚えるということは難しくなってくるでしょうから。
災害や感染症対策にかかる体制整備
近年の大規模災害や非常時の対応ですが、コロナ対応では、介護事業所や利用者・ご家族さまにも影響がありましたね。大規模災害や新型コロナウイルス感染症拡大時のような非常事態の中で、一番影響を受けたのは、高齢者ではなかったでしょうか?このような非常事態の中での対応は、単にBCPの作成だけではなく、地域ぐるみで考えていくことが必要とされ、令和3年の診療報酬改定で「外来感染対策向上加算」が新設され、医療機関全体の感染対策防止体制について見直しがされてきました。これは介護事業においても同じで、すでに同時改定では、見直しを行うことが出てきています。注目点になると思います。
令和6年度改定は、トリプル改定
地域医療構想や地域包括ケアシステムで、これまで取り組みを後押ししていたものが、さらにコロナ禍での非常時対応を踏まえて、感染対策がどのように盛り込まれていくのか・・・も注目していきたいものです。改定に向けて議論は始まっています。
前段で述べたポイントはすべてがつながっていて、地域の中で考えると、介護業界だけで完結することはできません。地域の中には「医療を必要としている方も生活している」のですから・・・。このような意味でも、医療機関の方々にもぜひ目を通していただきたい第8期介護保険事業計画の基本指針(方針)です。
終わりに
詳細な内容は基本計画の内容を見ていただきたいと思いますが、今回の改定は医療・介護・福祉(障害)の各報酬の改定により、地域包括ケアシステムをさらに深く考えていく改定になると考えています。日常的な支援をどうしていくのか、という医療側だけ、介護側だけでは解決できない課題をどうアプローチしていくのか、というところ・・・これは地域ぐるみで考えていかないといけないことではないかと思っています。
<参考資料>
〇第106回社会保障審議会介護保険部会(令和5年2月27日開催)資料より /確認日:2023/03/30
●基本方針について
●基本方針の構成について
●基本方針について(参考資料)
〇第217回社会保障審議会介護給付費分科会(令和5年5月24日開催web会議)資料より /確認日:2023/06/08
・令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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