令和4年10月から後期高齢者の窓口負担金が変わります!

長 幸美

アドバイザリー

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険等の一部を改正する法律の施行にあたり、関係政令や省令が順次出され、9月の半ば過ぎから、各ご家庭に10月以降の新しい保険証が届いてきています。
この改定に伴い経過措置・・・つまり負担を時限的に減らす仕組みができており、その仕組みを「配慮措置」といいます。
今回はその仕組みを知り、医療機関及び調剤薬局の事務職員がどんなことを注意していかないといけないのか、少し整理してみたいと思います。

■制度の改正内容
75歳以上の方等で一定以上の所得がある方の医療費の窓口負担割合が2割に変更になります。この場合、65歳以上74歳までの方で、一定の障害があり後期高齢者の認定を受けた方も含まれます。これらの方々については、9月中旬以降順次新しい保険証がご家庭に届いていると思います。

■制度改正の目的
見直しの背景には団塊の世代が75歳以上となり医療費の増大が見込まれて、後期高齢者の医療費も今後拡大していくことが見込まれているため、「国民皆保険制度」を未来につないでいくために、必要な改定であると説明されています。
窓口負担割合が2割となる方は、全国の後期高齢者医療の被保険者全体のうち20%の方の予定です。

■2割負担の所得基準について
これまでの一般低所得者・・・つまり、現役並み所得者以外の中で、課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上の方(単身世帯の場合)が2割負担の対象となります。複数世帯の場合は、320万円以上になります。

■2割負担への配慮措置
今回、1割から2割に引き上げられることの影響を考慮し、影響が大きい外来患者について、施行後3年間、一部負担金の増額に関し、配慮措置があります。
これは、1割負担の場合と比較した1か月の負担増を最大3,000円に抑える措置です。

複数医療機関もしくは同一の医療機関であっても、医科と歯科などの場合は、申請により、これらを合算した1か月分の負担増額の3,000円を超える部分については、高額療養費として、市町村に登録されている口座に後日(4か月後を目途)償還されます。

<配慮措置の具体例>
厚労省から出ているこの図がわかりやすいのではないかと思います。点線の部分、つまり、負担金が6,000円を超えて、18,000円までの差額部分が配慮措置に該当する部分です。


(出典:厚労省「医療機関の皆様へ、後期高齢者医療制度に関するお知らせVer.2(令和4年8月発行)」より)


① 総医療費が30,000円・・・1割負担で窓口一部負担金が3,000円の方の場合
⇒2割負担での負担金額・・・ 30,000円×2割=6,000円
負担増・・・6,000円-3,000円=3,000円
窓口負担額の上限との差額・・・3,000円-3,000円=0円(払戻なし)

② 総医療費が90,000円・・・1割負担で窓口一部負担金が9,000円
⇒2割負担での負担金額・・・90,000円×2割=18,000円
窓口負担額の増額分・・・18,000円-9,000円=9,000円
窓口負担額の上限との差額・・・9,000円-3,000円=6,000円(払戻額)

③ 総医療費が150,000円・・・1割負担で窓口負担金が15,000円
⇒2割負担での負担金額・・・150,000円×2割=30,000円
窓口負担額の増額分・・・30,000円-15,000円=15,000円
ただし、窓口負担額の(18,000円)上限との差額・・・18,000円-15,000円=3,000円のため払戻なし

このように、総医療費が3000点(30,000円)以上、15000点(150,000円の方が配慮措置の対象となります。一般のクリニックで月1回定期的に受診される場合などは、総医療費が3000点をこえるばあいなど少ないかと思いますが、点滴注射や精密検査、リハビリ、在宅医療などを実施される場合は配慮措置に該当する場合が出てくる可能性があります。

また、この「配慮措置」は高額療養費の仕組みの中で行われるようです。
つまり、同一の医療機関で受診された場合、配慮措置による窓口負担の上限額に達した場合は窓口での上限額以上のお支払いは不要となります。
このため、医療費計算では、「1割+3,000円」以上になる場合、上限が18,000円までで頭打ちとなります。ちょっとややこしいですね。


(出典:厚労省「医療機関の皆様へ、後期高齢者医療制度に関するお知らせVer.2(令和4年8月発行)」より)

そして更にややこしいのが、公費等の医療証を持っておられる方の場合です。
窓口において配慮措置の対象となるのは、保険単独医療のみです。公費負担医療及び特定疾病療養(マル長)については、窓口における配慮措置の対象外となります。このため、公費負担医療等については、各制度の窓口負担上限額の範囲内で支払いをお願いすることになります。この場合の計算については厚労省ホームページに事例集があります。
詳細は個別に各自治体の方に確認されることをお勧めします。

■窓口の皆さん注意してください!!
医療機関の窓口では、被保険者証の「自己負担割合」・「有効期限」を必ず確認してください。2割負担の方は、一部負担金が倍になりますので、その仕組みを理解し、患者説明を行う必要があります。
また、今回、通常の有効期間(1年間)とは違い、各市町村や広域連合により、例年と有効期間が異なる場合があります。しっかり確認していきましょう。
また、オンライン資格確認を導入されている医療機関については、システム操作により、現時点での窓口負担割合を確認することができるようですので、活用されてみてください。
今回、難病の一部負担金のような他の医療機関等との調整や金額の記載等は不要になっていますが、日々それぞれに計算していき、積み上げていく必要があります。

■患者様への案内
市町村役場から後期高齢者の10月からの保険証とともに、償還金額の振込口座の登録を行うようにお手紙が入っていると思います。今回の2割に引き上げになった場合、配慮措置により、いくつかの医療機関の受診や訪問看護を受けている場合であっても、1月合算した場合の増加額については、役場から返還が行われるようです。手続きは1回、高額療養費と同じ考え方のようです。口座の登録をされていない方は、市町村の窓口にご相談されるようにお勧めしましょう!

今回のこの措置は、永続的な保険制度を守るための措置として、国民向けにも説明文書が作成されています。高齢者の負担割合を上げるにあたり、「配慮」しなければならないとして設けられた「配慮措置」ですが、支払い増額を抑え(1割負担+3,000円)、さらに高額になる場合などは月の通常の窓口負担金額上限(18,000円)までの支払いにするという2段構えです。窓口職員はこれらの仕組みを抑えて、償還する仕組みなども含め、窓口でしっかりと説明ができるようにしておきましょう!

<参考資料>
〇厚労省ホームページ「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21060.html

・医療機関向けリーフレット(令和4年8月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000981142.pdf

・後期高齢者医療制度の負担割合見直しにかかる計算事例集(令和4年8月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000981143.pdf

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