【医療介護あれこれ】接遇レッスン「正対するってどういうこと?」
長 幸美
アドバイザリー接遇の基本の中で「正対」(相手にしっかりと向き合うこと)が推奨されています。
接遇とは、「おもてなしの心をもって応対すること」と説明できますが、医療接遇の場合、「思いやりの心をもって」と説明したほうが受け止めやすいかもしれません。
■「正対」とは・・・
「正対」とはどのような意味合いかというと、「正しく対応する」と書きますが、相手の方へ自分の体を向けるということです。以前、テレビ番組で、タクシー会社の運転手さんへの接遇研修で、ダメ出しされているのが放送されていましたが、「座り直して、体ごとお客様の方に向く、顔だけ横を向けて対応してはいけない」というくだりは、この「正対」することの大切さを示されていたと思います。
この接遇研修では、相手の方へ体の正面を向けるつまり、「おへそ」を相手の方に向けることを徹底的に訓練されていたのですね。
私は研修などでは「相手のことを真正面から受け入れる」という風に説明しています。
横や後方から声をかけられて、顔だけその方に向けて受け答えをしていると、何となく、雑に扱われているような、取り敢えず対応されているような、大事にされていないような・・・そんな感じを受けてしまいます。
実際に体を動かしてみるとわかりやすいかもしれませんが、体の向きを変えるだけで、聞き手も「聴き取ろう」という意識が働きますし、話し手も「大事にされている」「受け止めてくれている」という気持ちにもなりますので、不思議です。
■意識したいのが目線の高さ・・・
先日、足を痛めて医療機関を受診しました。
その際、椅子に腰かけて問診表を記載するように言われたのですが、受付の方は、「問診表書かれました?」と声をかけてくださり、取りに来てくださいました。
ですが、問診表を挟んであるボードを受け取り、立ったまま内容を確認され、書いていないところを聞かれた後、「こちら保険証お返ししますね。順番にお呼びしますのでお待ちください」と言って受付に戻っていかれました。
そのあと、看護師さんが記載している問診表を片手に、予診を取りに来られたのですが、椅子の横に膝をついて、痛みの度合いやどんな時に痛いか、いつごろから痛いか、など、詳しく聞かれました。
前者はとても威圧感を感じ、「ハイ/イイエ」など、話も続かなくて、聞かれたことだけにこたえるということになったのですが、後者はなんとなく柔らかい感じがあり、受け止めてもらえている印象を持ちました。
「足が痛い」患者に対し、それぞれに「歩かなくても済む配慮」があったのだと思いますが、目線の高さを合わせるだけで、同じ「ですます調」で丁寧な対応をしていても、受け手の印象は変わるんだなと、印象深かった出来事でした。
これも、向き合うことの大事さの一つですね。
■心で「正対」する・・・
何か怖い体験をしたり、精神的に不安を感じている時、真正面から対応されると、なんだかぐいぐい押されているようで、余計に怖くなったり不安になったりしますよね。
採用等の面接試験を受けた経験がおありの方は想像しやすいかもしれませんが、なかなかの威圧感があります。
気持ちが弱い状況にあるときは、同じ「正対」でも、「心で正対する」ことが必要だと思います。例えば、座る位置を横に座ることや、斜め前に座ることなどが考えられます。
そのような時でも、聴く姿勢というのは大事です。
話を聴くときは相手の目を見て・・・その時に横や斜め前に座っていると、顔だけ横に向けたくなりますよね。そういったときは、体の軸を相手の方に向けるイメージで・・・斜めに座るなどの工夫が必要です。
■接遇スキルは心を表現する技術
相手のことをどんなに大事に思っていても、尊敬の念を持っていても・・・その心を取り出して見せることはできませんね。その心を表すことが接遇だと思います。
接遇研修を受けたときに、「マナーが良いから印象が良いのではなく、「正対」が
できていなければ印象を悪くし不快な思いだけが残ってしまう。あなたを表現する方法の一つだと思って、いつでもどこでもできるようにすることが大事です」というお話を聴いたことがあります。
・・・なので、その時の講師の先生は、「接遇は技術だ」と仰いました。つまり技術は練習すれば身につくもの・・・最初にご紹介したテレビの中の接遇講師の方も、ダメ出しをしながら何度も練習しチェックする・・・つまり形から入ったとしても身につくまで練習することが大事だということを教えておられたのでしょう。
皆さん、仕事に対しても、ヒトに対しても、真正面から向き合ってみませんか?
今日から「正対」を意識してみてくださいね。きっと良い関係が開いてきますよ!
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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