【医療介護あれこれ】医療の質の評価④地域包括ケア病床
長 幸美
アドバイザリー今回、地域包括ケア病床にとって、厳しい改定でしたね!
急性期医療は「超急性期」と一般急性期に明確に色分けされ、「超急性期」については新しい評価などで定義づけされ、医療機能については加算で評価されてきましたね。一方「地域包括ケア病床は、役割の明確化とともに救急要件などが課され、びっくりされた方もあったと思います。療養病床ベースで地域包括ケア病床を運用されている医療機関はマイナス幅に驚かれたと思いますが、実は療養病床であっても、プラス改定となっている医療機関もあるのです。
この見直し、「地域医療構想」を実現するためにはとても大事な見直しだったのです。目的は地域全体の医療の質の底上げです。
■そもそも「地域包括ケア病床」の目的は?
目的はその名称の通り、「地域包括ケアシステムを実現するための病床」です。
このため、ポストアキュート、サブアキュート、そして在宅復帰支援、この三つの機能をバランスよく果たして、地域での生活を支援してほしいと思っているわけです。
つまり、地域のための病床だということをまず考えないといけません。
「7対1救済のための病床」ではないわけです。
このため、200床以上の病院の場合、自院の病床からの転棟患者の割合が6割未満という実績が課され、これまで以上に在宅医療や訪問看護・訪問リハビリ等の在宅療養を支える機能を求められてきているのです。
実績を満たせない場合は、それぞれに減算率が決められ、乗じていくこととされていますので、かなり減収になることが予測されます。
■地域包括ケアシステムとは・・・
要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで続けることができるよう、地域内で助け合う体制のことです。それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制を目指しています。
地域包括ケア病床はその一端を担う目的の病床であるから、しっかり役割を果たしてね、というわけです。
■在宅ツールとネットワークを構築する
在宅介護をしている中で、体調の変化にすぐに相談できる、ということは大事な要素になります。現在、外来医として診療されている先生が、在宅医療まで実施されるケースがどのくらいあるでしょうか?
無床診療所も多いので、体調を崩された患者の受入れなどに不安を抱えておられる先生方は多いと思います。私が以前病棟再編のお手伝いをさせていただいたとき、地域ケア会議や周辺のクリニックのご挨拶に行きましたが、その際の声で多かったのは、「土日の点滴対応」や「繰り返す熱発などで、急性期に相談しにくい」という声や、「急性期にお願いしたら、治療後、遠くの回復期に紹介されて、患者の家族が困っている」という声でした。「今日の夜が心配だな」「検査もしてほしい」ということがあったら、バックベッドとして活用できる病床があるよということ、空床状況を共有することでも在宅や外来の支援ができるのではないかと思います。
そしてネットワークです。
先生方がおひとりで診療も行い、在宅療養のケアもしていくということはかなり大変だと思います。在宅生活を支えていくためには、生活の支援も大事です。地域の包括支援センターやケアマネジャーをはじめとする介護事業所にも大事でしょうし、逆に、地域にある介護資源を知ることもとても大事になってくると思います。
■「地域医療の一員」という視点
これまで、狭い範囲・・・つまり自分の医療機関の運営だけを考えていればよかったのですが、今回の改定、大きく様相が変わってきています。
それが「地域医療を支える」という視点です。
例えば、超急性期の医療機能や急性期入院の質は「入院料の加算」で評価されてきていますし、地域包括ケアについても、本来の役割をどのくらい実施しているか、というところで、評価や減算によりメリハリがついてきています。
感染対策についても、地域を支えるために必要な人員や役割等について、評価がつくなど、「地域全体の医療の質を底上げするために、あなたの病院何をしてくれますか?」、ということをそれぞれの医療機関に問われているように感じています。
こう考えていくと、今回の改定のメッセージが読み解いていけるのではないでしょうか? 地域のクリニックや介護施設等との連携により、患者の受入れをしていると入院初期加算が高く設定してあるのも、理解できますね。
そして、地域包括ケア病床を持っている医療機関として、2年後の医療・介護同時改定に向けて、「かかりつけ医」をバックアップするという役割が大事になってくるように思います。まずは地域ケア会議に参加することから始めましょう!
<参考資料>
〇厚労省:令和4年度診療報酬改定説明会資料「改定の概要:入院Ⅱ」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000915590.pdf
〇厚労省:「地域包括ケアシステム」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
〇全日本病院協会:みんなの医療ガイド「地域包括ケアシステム」
https://www.ajha.or.jp/guide/5.html
医療コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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