【医療介護あれこれ】「難病の医療証はどこでも使えるのか?」(QAより)
長 幸美
アドバイザリー「患者が、難病の医療証を持っていたので、難病で請求を出したらレセプトを返戻されました。難病の医療証を持っているのに、使えないんですか?」
「難病の医療証が使えないって査定をされました。どういうことでしょうか?」
こういった質問を時々受けます。
これは「難病」に限らず、様々な公費負担医療にかかわることなので、少し整理しておきたいと思います。
■公費負担医療
「公費負担医療」とは、医療費の全部または一部を国や地方自治体が負担する制度で、医療費助成制度のひとつです。感染症や精神障害・難病などの患者、生活に困窮しているなど社会的弱者、公害などにより健康被害を受けた人など、保護を必要とする人が対象となっています。
弊社のホームページでも解説していますので、詳しくはこちらをご参照ください。
20210629_医療介護あれこれ「公費医療制度について」
■難病の医療証について
難病とは、「特定疾患」ともいわれ、「発症の機序が定かではない」「治療方法が確立していない」「希少な疾病」で「長期療養が必要な疾患」を指していいます。こういった難しい病気に対し、国が「指定難病」として、「難病対策要綱」が定められ、調査研究の対象として医療費の公費負担等を行い、病院と病態の解明研究や診療整備等を行うようになりました。
このため、指定難病であることの診断根拠と病態を添えて、申請をすることにより、医療証を受けることができます。
■難病の医療は誰でも、どこでも医療費控除が受けられるのか?
結論から言うと、NOです。
難病の公費負担医療を受けるためには、県が指定した「指定医療機関」に主病である「指定難病」の治療を受ける場合にのみ、医療証が使用でき公費助成が受けられます。また、指定難病の受給者証を受けるための診断書は、「難病の指定医」を受けた医師のみが記載することとされています。従って、医療機関の窓口で難病の医療証を提示されても、医療証が使用できない場合があります。
都道府県により取扱いは若干違いますが、多くの場合、「難病医療証」の中にどの医療機関で受診するか、という医療機関の情報が記載されています。多くの場合では、基幹病院とかかりつけ医の2か所を記載するようになっています。
かかりつけ医を変更する場合には、患者から都道府県に変更の申請を出す必要があります。都道府県によっては、紹介状のコピーなどが必要になるようです。患者窓口は住所地の保健所が相談窓口になっている場合が多いようです。
■保険請求上の注意事項
難病は治療等の調査研究の対象であるために、「指定医療機関」において「主病である難病」に対し実施した医療が助成対象となります。
従って、単なるケガや風邪等の治療は受けることができません。
この「医療証に書かれている指定医療機関」については、令和3年4月1日より取り扱いが変更になっていますが、「指定医療機関以外の医療機関では医療費助成の対象にはなりませんので、ご注意ください。
※参考資料<福岡県の指定医療機関取扱変更に関するリーフレット(指定難病)>
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/133294.pdf
窓口でも医療証を出された場合に、受診目的を確認し、医療証が使えない場合の説明をできるようになるといいですね。
■まとめ
冒頭の質問についてですが、返戻については、難病の治療とその他の治療を分けて、レセプトを作り直して請求しなおすようにということでしょう。レセプト上でどのように分けるのかは、ルールが決まっていますので、そのルールに則ってレセプトを作成することになります。査定については、難病以外の投薬や検査について、査定されているものと思われます。
主病によっては、算定できる指導管理料等も変わってきますので、十分注意されてください。また、主病を複数つけて対策とされている医療機関もありますが、その中で主たる診療は何か、という観点で、査定される場合がありますので、注意が必要です。
<参考資料>
・厚労省_指定難病
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.htm
・厚労省_難病対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nanbyou/index.html
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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