【令和3年度介護報酬改定】概要④「制度の安定性・持続可能性の確保

長 幸美

アドバイザリー

毎回改定のときに出てくるのが、「介護保険制度の安定性と持続可能性の確保」という話題です。平成12年に介護保険が創設されて、様々な課題があり、長くこの制度を運用していくための工夫を議論されてきています。具体的には介護報酬の中で表現されているものもありますが、加算については介護事業所に国が求めていることに対するメッセージが強く含まれています。今回の報酬改定では、加算の中身が大きく見直され、報酬が削除されたものもありますし、上位区分ができているものもあります。
基本報酬がアップしているものについては、これまで加算で評価されていたものが、基本報酬の中に含まれることにより、報酬が上がっているものもあります。
このため、削除されたものについては、その要件は、基本報酬の中に含まれてたと理解された方が良いと思います。わかりやすいものは、これまでの「リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)」「処遇改善加算Ⅳ・Ⅴ」などがそれに該当すると思います。「報酬がなくなったからしない」のではなく、基本の部分に含まれてきているということは、意識して取り組む必要があると思います。

【評価の適正化・重点化】
■同一建物減算適用時等の区分支給限度基準額の計算方法の適正化
これは訪問系サービスを中心に同一建物の場合、減算が行われていますが、この減算規程を適応した場合は、区分支給限度基準額の計算は減算する前の単位数で計算するという規定です。これは減算が起こったために利用回数が増加するという現象を抑える目的があります。

■訪問看護の機能強化
これは2点あります。
① 訪問看護ステーションから行くリハビリ職員の訪問看護について
これは、減算されることになりました。リハビリについては、医療機関でしっかりとやってほしいということの表れだと思います。
また、リハビリ職員が行う訪問看護については、「通所リハビリテーションのみでは家屋内におけるADLの自立が困難である場合」という条件が付いてきたところにも、注意が必要です。

② 予防の場合、1年を超える場合には減算されることになりました。
いくら介護保険であっても、「リハビリは医療」という観点から、漫然と実施することに対する注意だと思います。

■訪問リハビリテーションの事業所医師が診療しない場合の減算
減算幅が、20単位減算から、50単位減算へ増加しています。これはしっかり医師に関与してもらい、医学的管理を受けることを求められている表れだと思います。
また、これらの算定には医師が適切な研修を修了している必要がありますが、経過措置が3年間ついています。この3年の間に研修を受けるようにしてください。

■居宅療養管理指導について
単一建物居住者の人数に応じた評価の見直しが行われました。また、「通院困難である」ことの基準が明確にされてきています。
独歩で歩ける方については、通院困難とは認められないということですので、留意しましょう。

■介護医療院の移行定着支援加算の廃止
介護医療院の移行定着支援加算(93単位/日)については、今年3月31日までで、当初の予定通り、廃止となります。
但し、今後届け出を行う場合等は、別の評価で移行支援加算(60単位/日、開始日から3月以内)というものが新たに設けられています。

【報酬体系の簡素化】
■療養通所介護の報酬体系の見直し
これは月額設定に考え方が変更になり、「個別送迎体制加算」及び「入浴介助体制強化加算」、が廃止となっていますので、ご注意ください。
先ほども申し上げましたが、この廃止は、基本報酬の中に含まれるという考え方になります。従って実施しない場合は、減算となりますことを申し添えます。

今回の改定では、以前のコラムでも何度か申し上げましたが、「LIFE」の活用により、PDCAを回して介護サービスの質を上げていくこと、介護保険制度の理念に基づき「自立支援」という考え方が随所に出てきています。介護事業ごとにやることが明確になってきていると思います。また、今後取り組んでほしいことやどのような介護事業所になってほしいかということが加算として、強力にメッセージ発信されています。
また、基本報酬に含まれるとして廃止されるものも出てきています。
介護事業の質の向上に取り組める事業所と取り組まない事業所を明確に区別し、ふるいにかけているようにも見えます。
今後の介護事業の継続を考えるには、このメッセージをしっかりと受け取り、一つでも取り組んでいく必要があると思います。

医業経営支援課

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