【医療介護あれこれ】接遇レッスン「ハッピーリターンを考える」

長 幸美

アドバイザリー

人がお互いを理解するために、言葉は重要な役割を果たします。また、相手を敬う気持ちや配慮していることを伝える手段でもあります。
皆さんは、食事に行ったり、病院に行ったり、様々な場所に出向いて、断られたり、自分自身が希望していることがかなえられなかった経験をお持ちだと思います。その時に、残念だなあと思うと同時に「また今度来よう」と思うときと「もう二度とこない」と思うときがあることを、経験されているのではないでしょうか?
最近では、テレビの番組でも「神対応」として取り上げられていますね。

この「受け手側の気持ちの違い」はどこから生まれてくるのでしょうか?

【不愉快になるわけ】
ここで皆さん一緒に考えてみてください。
相手に断られて怒りの感情が出てくるとき相手の言葉はどんな言葉だったでしょうか。そんな言い方しなくても・・・という言い方をされ、むっとした経験はだれしもお持ちだと思います。

① 「待ち時間が長く、忘れられているのではないか」と思ってたずねた時に、「順番にやってますから!!」「今日は患者さん(又はお客さん)が多いんです!!」と言い捨てて立ち去っていかれたこと。
② 行政(介護保険課)の担当者に質問した回答が良くわからず、もう一度、電話で確認しようとして「さっきも電話で説明したんですけど、また同じことを説明しないといけないんですか?」とため息交じりに言われたこと。
③ マスクや消毒薬を探しているときに、「入荷は10時ですからね、こんな時間に来てもありませんよ」「いつ入荷するかわかりませんから」といわれたこと

数え上げればきりがありませんが、どうでしょうか。皆さんも経験があるのではないでしょうか? そして、この不愉快になる事例の場合、共通点が一つあるように思います。皆さんお気づきでしょうか?
それは「一人称」で発せられた言葉だということです。
つまり、自分の都合だけになっていて、相手への配慮が足りていないということです。

【ハッピーリターン】
先にお示しした事例の中で、「相手への配慮」した対応を考えてみたいと思います。

① 待ち時間が長いという申し出の場合
患者さまやお客様が多く、「忙しそうだな」ということは待っている人の場合、わかっていることが多いですね。そんな中でも「まだかしら」と心配になっている場合が多いのです。
医療機関の場合は、待っている間に、具合が悪くなられているかもしれません。
「長くお待たせしているのですね。現在の状況を確認してまいります。」
「〇〇様ですね。救急搬送の対応で、お待たせしております。」
「現在、診察を3名お待ちになっております。もうしばらくお時間がかかりそうおですが、横になられたほうがいいですか」
など、相手の方の状況を配慮した声掛けにより、「忘れているわけではないこと」を伝え、気持ちよく待っていただくことも必要です。

② 何度も同じ説明を求められた場合
行政の方ばかりでなく、高齢者から、何度も同じ話を聴かされたり、何度も同じことを聞かれたりすることは日常の生活の中でもありますよね。
気を抜いているとつい「だから、~~でしょ」「何回も聞いた!」ということを言ってしまうこともあるのではないでしょうか?
でも、相手もきっと「さっきも聞いたのに、わるいなあ」と思いながらも、聞いている状況があると思います。「もう~また??」という気持ちは声や口調、態度に出ます。注意しましょう!
また、「ご理解いただけているのか」ということを確認しながら話を進めていくことも必要です。医療・介護の専門用語をできるだけ使わないことや、検査や入院等の説明など、書面で準備をしながら、もって帰っていただけるようにする工夫も必要ですね。

③ 病院サイドの都合は患者さまにはわからないことを理解しましょう。
最後の事例は、販売店の都合(入荷時間や入荷時期)が分からない消費者にとっては、ムっとする内容ですね。病院に置き換えると、「手術日」「緊急患者の対応」など、病院側の業務都合や救急搬送の対応、急なお休みがあり職員数が少ないこと、など、患者さんにとってはわからない病院の事情を押し付けているように感じます。
病院の中にいれば当たり前のことかもしれませんが、患者さんにとっては、「そんなこと知らないわよ!」というトラブルになってしまいます。
「お探しになっているのですよね、私たちもいろいろと手を尽くして納入してもらえるようにあたっているんですが、製造元の生産が追い付いていないようで、皆さんにご迷惑をおかけしています。入荷時期が決まれば、店頭に案内表示を出しますので、時々見てもらえますか。」と頭を下げられたときには、お店側も大変なんだな、入荷数を確保するために努力されているのだな、「大変ですね」と思えるのです。

また、一呼吸おいて、「私がこんなこと言われたらどう思うかな」ということを考えてみてください。私の母親にこんなことを言われたらどうするかしら・・・と考えてみてください。他人様とはいえとても、きつい言葉は言えないですよね。
そうして「相手がある」ことを意識して、「相手を尊重する気持ち」「相手のことをねぎらう気持ち」が生まれることで、感謝の言葉やねぎらいの言葉が出てくると、ちょっとハッピーな気持ちが出てきて、次に繋がっていくと思います。
「ごめんなさい」を「ハッピー」に変える「ハッピーリターン」が生まれてきますよ。

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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