【医療介護あれこれ】地域包括ケアシステムの極意~地域で支える、地域が支える~
長 幸美
アドバイザリー地域包括ケアシステムについては、弊社のコラムでも幾度となく取り上げています。
先日「一から学ぶ地域医療連携室」に参加しました。
これは県立日南病院の木佐貫先生とみどりまち文庫の地域連携コーディネーターの瀬尾利加子さんが連携の基礎から学べる場を作ろうとはじめられたWeb勉強会です。
ちなみに、第1回では「地域連携の歴史」を、第2回では「地域医療構想」を、そして昨日は、第3回「地域包括ケアシステム」について学びました。その中で考えたことを少しお話したいと思います。
「地域包括ケアシステムはまちづくり」ということをよく言われますが、それこそが「地域包括ケアシステムの極意」だと思っています。
つまり、「地域で支える」と「地域が支える」の違いを考えていく、よく理解して意識していくことではないかと思うのです。
そもそも・・・「地域包括ケアシステム」とは社会保障制度改革プログラム法の中で「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を送ることができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」であると定義づけられています。
しかし地域に暮らす住民は、高齢者だけではありません。ですから、この「高齢者」を「地域住民」と読み替えていくと、現在の「地域連携」「共生社会」という言葉が出てきた意味合いが理解できてくるのではないかと思います。
つまり、「地域包括ケアシステム」は「地域の皆さんが暮らしていくために必要なサービス(保険、医療、福祉や介護、暮らし支援)をまとめて提供するシステムを作り上げましょう」ということになります。
この根本にあるものは、明治以降の急激な人口増、そして2010年をピークに急激に減少すると考えられています。
将来的に65歳以上の人口の占める割合は、5割を超えると予測されており、「肩車型の支援になる」ということも言われています。地域によって大きく違いがありますので、すでにそういった状態に近い状況が起きている地域もあるかもしれません。
もともと医療は急性疾患(感染症、外傷、等)を治療する目的が強く、「キュア(cure)」と表現されていましたが、現在では、「ケア(care)」が大事だといわれています。診療報酬改定では「治す医療から支える医療への転換」と表現されていました。
生活をしていくうえで、生活習慣病等とうまく付き合い、重症化しないようにどうしたらいいか、治療をしながら働くにはどうしたらいいか、そして、老年期に入っていけば、家族や自分のしまいかた(人生の最終段階の過ごし方)をどうしたらいいか、ということを、考えていくということだと理解しています。
一生活者としての私は、高齢の両親と同居し、会社組織に所属して働いています。
両親は少しずつできなくなることが増え、定期的な通院も本人たちは負担になってきました。仮に、この状態で、認知症の徘徊が始まった場合、仕事をしながら介護ということは難しくなり、介護離職につながるかもしれません。若しくは施設や病院にお世話になり、生活の環境を変えることも考えられます。
一方では、在宅医療において「24時間365日」、いつでも対応できる体制が求められています。しかしながら、医療者や介護事業従事者のみで対応するには負担が大きくなりすぎる部分もあります。
こうした「住民視点」「生活の視点」で考えていくことがとても大事になってきて、これゆえに「地域包括ケアシステムの構築はまちづくりである」といわれているのでしょう。
医療機関や介護事業所のみならず、生活者を支えていくのは、地域に生きる企業とて同じです。
例えば、移送サービスについて、コミュニティバスや乗り合いタクシーだけではなく、デイサービスの車を利用する仕組み「福祉Mover」の開発や、新聞配達・牛乳配達を利用した見守りサービス、タクシー会社を利用した支援など、各地で取り組みが広がっています。地域の企業が地域に眼を向けていく時代でもあると考えています。
これこそが、「地域が支える」・・・つまり、「住民によるネットワークづくり」だと思います。
医療関係職の皆さん、クリニックや調剤薬局も含めて、医療にかかわるすべての皆さんには、地域に踏み出してもらいたいと思います。医療機関の中にいては、地域の様子はわからないことも沢山あります。地域に踏み出すことで見えてくること、対応できること、できないことが分かってきます。できないことはできる事業所等にお願いしたらいいと思うんです。そういったつながりの一歩が「地域包括ケアシステムはまちづくり」を実現に導く一歩のように思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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