【令和3年度介護報酬改定】令和3年度介護報酬改定の方向性について②
長 幸美
アドバイザリー令和3年度の介護報酬改定については、COVID-19の影響もあり、マイナス改定になるのではないかとうわさされています。この災害ともいえる感染症の出現において、介護業界も大きく揺さぶられ、事業所の在り方を考えるきっかけになったところも多いのではないでしょうか。
前回の改定で、「地域共生社会」「社会連携」という言葉が出てきました。地域包括ケアシステムを考えていく中では、高齢者だけではなく、障害を持った方も含めて、「住まい」を中心とした「住み慣れた地域にくらし続けるための支援」を考えていくことが必要とされています。こういった「生活」を考えていく中で、医療と介護の連携コーディネーターが注目されています。
「自立した生活」に対する認識もそれぞれ違いがあるでしょう。しかしながら、生活の中では医療も介護も切り離すことはできないと考えます。そのプロセスや結果(アウトカム)の評価が増えていくのではないかと考えています。ポイントになる項目を整理しましょう。
【中重度要介護者への対応】
■ケアマネジャーの役割
ケアプランを作るだけであれば、AIによる実証実験も行われていると聞いております。人が関与するのであれば、「人」にしかできない関与方法(プロセス)や成果を意識することが必要になるのではないでしょうか。
一方、医療と介護の橋渡し役として、また在宅における連携コーディネーターとしての役割が、さらに求められていくのではないかと思います。患者個人の生活を支えていく中では、家族への支援、状態に合わせた対応の検討などは、とても大事な支援になると思います。
また、高齢者を抱える家族にしてみれば、第三者の話はとてもありがたいものです。生活を支えていくには、医学的要素だけではないので、そういった連携コーディネーターとしての役割は、望まれていると思います。
■認知症への対応
高齢化社会のなかでは、認知機能の低下は避けては通れないものだと思います。高齢化社会においては、後期高齢者の2人に一人は認知症といわれます。
昔であれば、還暦を過ぎると子供に返っていく・・・とも言われていましたが、視野もせまくなり、認知症という診断がなくても、それなりに昨日は低下すると思います。また、家庭や周辺の環境との関係が複合的に絡みあり、病名では図れない状況も出てくると思います。こういった中にあっても、どのような暮らしのサポートが必要となるのか、という観点で生活を支えていくことが必要でしょう。
■地域密着型サービスの活用
中重度者の在宅での生活をサポートしていく中で、「看取り」や「終末期をどう過ごしていくか」ということは、とても重大な問題となります。より生活に近いところでのサポートという意味では、この「地域密着型サービス」について、理解を深め、サービス提供を考えていかないといけないのではないかと感じています。
【制度の安定性・持続可能性の確保】
■介護事業における感染対策
今年初めからの「コロナウイルス感染症」における影響は大きく、事業所内における感染対策と利用者への影響が大きかったのではないかと思います。今後このような事態が起こった時にも事業継続をどのように進めていくのか、ということは、多くに事業所において検討し、悩んでこられたことと思います。
これらを教訓とし、危機管理や持続可能性を含めて、意識をしていくこと、報酬改定の中に盛り込まれるかどうかは疑問がありますが、事業内容を整理し、非常時の対応を検討することが重要であると思います。
■向こう先10年間の介護提供体制の議論
第8期事業計画期間中に団塊の世代が後期高齢者となる中、今後の制度の安定性や持続可能性を議論する際に、サービスの適正化や重点化について現状を踏まえた具体的な課題については、必要と思われます。その中で、利用者の負担増や給付削減等により、利用者の生活に影響が出ないか、地域サービス実情に即した報酬単価とすることを議論する声が上がっています。
具体的には、グループホームや認知症高齢者への専門的なケアを評価する加算について、拡大することや、高齢者の尊厳の保持、自立支援等のサービスが、介護保険の枠を超えて、医療・福祉・介護サービスから介護者への支援にも目を向けていくような方策が検討できないかという広がりを見せています。これは在宅で生活する方の限界域を拡げ、人生の最終段階においても、本人の意向に沿えるような観点も視野に入れていく方向なのだろうと思います。
さて、今回は少し漠然とした話となってしまいました。こういったいくつかの視点とそれぞれの事業所でできること、できないこと。・・・そのための人材の育成や業務分担などを見直していかないと、今までと同じことをやっていたら対応しきれなくなるのではないかと思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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