【医療介護あれこれ】在宅医療で知っておきたい施設のこと
長 幸美
アドバイザリー先日、全国医療連携実務者ネットワークの勉強会があり、参加しました。
その中で、「医療機関の方は意外と施設のことを知らない」「同じ区分の施設でもできること、ケアの質が違うということをしられていないのではないか」「情報をブラッシュアップしていく方法を考えないといけない」ということが話題になりました。
そこで、今回は、高齢者が利用できる施設の基本的な内容を整理していきたいと思います。
【地域の基本情報を得る方法】
市町村の窓口に行かれると、その地域にどのような介護施設や訪問系・通所系の施設があるのか、まとめてあり、その情報をもらうことができます。その情報は高齢者対応だけではなく、障害や精神等の在宅療養におけるサービス事業所もありますので、一度ご利用になってみては如何でしょうか?
北九州市では「ハートページナビ」という冊子が準備されています。
但し、それは「そのサービスが提供できる事業所がある」という情報になりますので、例えば施設の雰囲気だとか、どんなサービス提供をしてくれるだとか、何が得意・・・というところまではわかりませんので、お会いしたり、現地に行ったりして確認することも必要になると思います。
【入所系の施設】
入所系の施設については、介護度により、入所できるところが変わってきます。また、サービス提供者(介護者や看護師等)の配置、生活の場かどうか、により、在宅医療の提供範囲が決められているものがあります。
■ケアハウス
高齢者(60歳以上)で、食事の提供、生活支援(見守りサービス)、緊急時対応等ができます。夜間の人員配置はほとんどない場合が多いので、ナースコールが押せない方の場合は厳しいかもしれません。
施設の形態や人員配置により、入居条件はありますが、在宅医療(訪問診療、往診)などは可能です。
■特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
日常生活で常に介護を必要とし、在宅生活が困難な方が対象の施設で、要介護3以上の方が対象となります(原則)。平成30年度の診療報酬改定により、「看取り」の施設として位置づけられ、配置医師が算定できる項目や条件が緩和されました。
「配置医師」による健康管理が行われていますので、原則的には「訪問診療」を実施することはできませんが末期の悪性腫瘍患者や死亡日からさかのぼって30日以内は訪問診療を算定することができます。
また、往診はできますが、配置医師の往診料算定はできませんので、注意が必要です。
■介護老人保健施設(老健)
医療法人が運営する在宅復帰のためのリハビリテーションに重点を置いた介護が必要な方の施設です。医学的な管理の下で介護や看護、リハビリテーションを受けることができます。
医療施設の位置づけになりますので、訪問診療の算定はできません。
対象者は要介護1~5の方です。
■介護医療院・介護療養型医療施設
介護医療院は長期化療養のための医療日常生活上の世話(介護)が必要な方が対象の施設です。こちらも、対象者は要介護1~5の方が対象となります。
学的管理の下で、看護や介護、機能訓練その他必要な医療や日常生活の世話などを受けることができます。
一方介護療養型医療施設は病状が安定している介護療養が必要な方が対象で、将来的に廃止が決められ、介護医療院への転換が進められているところです。
どちらも医師の配置、看護師の配置があり、訪問診療や往診は算定できません。
■認知症対応型グループホーム、有料老人ホーム(サ高住を含む)、特定施設
医師の配置はありませんので、訪問診療・往診等は制限がありません。
■小規模多機能型居宅介護、ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイの場合、居宅ではありませんので、訪問診療に制限があります。
その制限は「サービス利用前30日以内に患者の家において訪問診療等を算定している場合、利用開始後30日以内に限り算定が可能です。末期の悪性腫瘍患者の場合は、利用開始後の制限がありません。
また、退院後、直接ショートステイ(短期入所生活介護)を利用する場合は自宅で訪問診療を行っていない場合も算定は、訪問診療を行うことが可能です。
なお、ショートステイでも短期入所療養介護・・・つまり、介護医療院や介護療養型医療施設でのショートステイの場合は訪問診療できません。施設の中に医師がいることを考えるとご理解いただけるのではないでしょうか。
【まとめ】
今回、在宅医療を行う先生の視点で「訪問診療」「往診」の算定ができるのか、どうかという観点で高齢者施設を見てきました。細かなルールは他にもありますが、大まかに把握をされておくとよいのではないかと思います。
また、診療所や病院受付の事務員さんや看護師さんも来院される施設や周辺にある施設が、どのような種別に該当するのか、知っておかれると訪問診療や往診の依頼があった時に、スムーズに対応ができるのではないでしょうか?
算定に関しては、診療報酬早見表の告示7「医療保険と介護保険の給付調整」のところに、図解付きで説明されていますので、ご参照ください。
下記参考資料には改正資料として発信されている資料を添付しています。
<参考資料>
〇厚労省:保医発0327第3号「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(令和2年3月27日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000666469.pdf
〇厚労省:保医発0327第4号「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」の一部改正について(令和2年3月27日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000613547.pdf
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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