【医療介護あれこれ】電話診療・オンライン診療の今後

長 幸美

アドバイザリー

昨日行われた中医協の中で、COVID-19対応の診療報酬上の取扱いについて議論されています。4月10日に外来診療について時限的・特例的取扱いが決定し、電話診療・オンライン診療の緩和等が図られ、「病院に行かなくても治療継続ができる」措置が図られてきました。この電話診療・オンライン診療ができる医療機関の4月~6月の実績の検証とともに、「電話診療・オンライン診療」について考えてみたいと思います。

COVID-19の感染拡大防止策については、標準予防策の徹底とともに個人防護具の着用、重症者と軽症者の環境を分けることで、医療体制の確保が図られてきました。また、不要不急の外出自粛に伴い受診控えが起こり、医療継続が十分にできていない状況も考えられています。内視鏡検査や緊急性が低い手術等が先送りとなるケースもあるとお聞きしています。
このような状況から、診療報酬請求書の提出件数については、前年同月比で医科・歯科・調剤ともに7割程度にまで落ち込んでいる現状があります。

新型コロナウイルス感染症による医療機関の患者数の変化①
(出典:20200819_中医協資料より)

科別に見てみると、小児科、耳鼻咽喉科、眼科の減少が顕著である結果が出てきています。

新型コロナウイルス感染症による医療機関の患者数の変化④

(出典:20200819_中医協資料より)

しかしながら、よく見ていただけるとわかると思いますが、この比較は、あくまでも「レセプト枚数が昨年の同じ月と比べてどうか?」ということであり、売上高の比較ではありません。実際には、電話再診等に切り替えられ、算定できる点数も減っていますので、収入に関しては、この患者数減少以上にダメージは大きくなっていると予測されます。

一方、訪問看護・訪問診療等の在宅医療についてはどうでしょうか?
多くの訪問看護の現場では、利用回数が減少、若しくは利用者事態が減ったと回答されている事業所が半数を超えています。これは住宅型の有料老人ホーム等において、外部からの来館者を制限する一環として、訪問診療や訪問看護であっても、外部から入ってきてほしくないというケースが多かったようにお聞きしています。

この時限的・特例的な取り扱いに対応している医療機関数は、7月の段階では、16200件程度となっています。全体の14%が対応されているようです。これは、時点的特例的な取り扱いを行った全例を、レセプト提出後に都道府県宛てに届け出を出す仕組み(医療施設動態調査)この結果を分析されたものです。

時限的特例的な取り扱いに対応する医療機関の数(都道府県別)
(出典:20200819_中医協検討資料より)

これをみると、福岡県では、約500件の医療機関があり、初診から実施されている医療機関は役120件程度となっています。人口10万人対比では27件程度でしょうか?
思ったよりも少ないと感じています。
診療形態としては、電話診療が一番多く全体の6割を超える程度でしょうか、双方向のビデオ通話ができるオンライン診療3割強となっています。
年代別で診ていくと、若い世代が多く、中でも、10歳未満の子供さんはオンライン診療を行われたことが分かります。

患者の需要等について
(出典:20200819_中医協検討資料より)

我が家の年よりもそうですが、耳が悪くなり、慣れない装置を触ることもできず、「病院に行って薬をもらう!」ということが擦り込まれているからか、どうしても病院に行くと言ってきかず、孫が送り迎えをするという状況があります。この調査からも非常に少なく、これは施設入居者がサポートしながらだったのではないかと推測しています。

また、初診については麻薬・向精神薬等の処方はしてはならないとされていましたが、実際には処方されているケースも見受けられ、今後指導の対象となる予定とのことです。

しかしながら、一定程度以上の効果が上がっていたのではないか、と考えられます。
私自身は、初診のオンライン診療は十分な診療ができるとは言えないのではないかと思っていますが、30~50代の働く世代にとっては、診療の継続ができる方法として、非常に有効なのではないかと思っています。

地域の中での自院の立ち位置を振り返り、何に力を入れていくのか、今一度考えてみてください。
地域医療は「治す医療」ではなく、住んでいる住人の「健康を支える」「生活を支える」医療だという言葉が改定のときに出てきました。地域包括ケアシステムの神髄もそこにあると思っています。COVID-19感染症はもうしばらくこの状態が続いていくのではないかと思います。そういった中で、地域の生活を支えていく第一線はやはり診療所や200床未満の中小規模の病院になると思います。
そう考えていくと、「オンラインなんて!」ではなく、診療の一形態として考えざるを得ないのではないでしょうか?

<参考資料>
〇2020年8月19日中医協資料より
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00079.html?fbclid=IwAR2qtM2emHjFqPye5UrBvYr-gYjvXS-AWP7yLpD8Uczr5nk8jIhovJ7ADwQ

〇新型コロナウイルス感染症への対応と その影響等を踏まえた 診療報酬上の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000660347.pdf

〇これまでの経緯と 今後の検討の進め方について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000660253.pdf

〇令和2年4月~6月の 電話診療・オンライン診療の実績 の検証について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000660255.pdf

医業経営支援課

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