【医療介護あれこれ】往診と訪問診療
長 幸美
アドバイザリー新しく在宅医療を始める先生から、「算定の方法がよくわからない」というご相談があります。当社で行っている「よろず相談」の中でも、この「在宅医療」に関するお問い合わせは多くなっています。
今回はその中でも、「往診と訪問診療」について、みていきましょう。
【対象患者】
「往診」とは、患者や家族の求めに応じて患者の家に赴き診療を行うことをいいます。従って、往診が行われる前には、患者本人若しくはその家族から、「診療してほしいけれど外来に通院できない」という内容の電話が入ることになります。
電話を受けた医師は、症状等を聞き取り「往診の必要がある」と判断した場合は、可及的速やかに患家に赴き診療を行うことになります。
一方、「訪問診療」とは、在宅で療養を行っている患者であって、疾病や傷病のために通院による療養が困難なものに対して、患者の住まいに計画的・定期的に医師が訪問して、診療を行うことをいいます。
わかりにくい言い方ですが、「通院による療養が困難である」という判定は、歩行が困難な状態や認知機能の低下により、家族や介助者の手助けが必要である状態といえます。
従って、独歩や家族・介助者の手助け無しに外出できる状況がある場合は、訪問診療の対象とはなりません。
【算定方法】
■往診の場合
初再診料に加えて、往診料(720点)を算定します。
往診料の算定については、「往診を行った時間により」時間外等の加算が算定可能となります。
① 緊急往診加算・・・・標榜時間内に依頼があり、外来をストップして往診する場合
② 夜間休日往診加算・・夜間休日に往診する場合
③ 深夜往診加算・・・・深夜(22時~翌朝6時迄)に往診する場合
■訪問診療の場合
在宅患者訪問診療料として「C001」に掲げる点数を算定することとなります。
個人宅の場合は、888点の算定が可能ですが、有料老人ホーム等の「同一建物」に訪問する場合は213点となります。
さらに、老人ホーム等に併設される保険医療機関が入居者に対し実施した場合は、在宅訪問診療料(Ⅱ)150点の算定となります。
お住いの場所により、大きく異なってきますので、注意が必要だと思います。
予定される計画的な訪問のため、「時間外」という概念がありません。
また、この診療報酬の中には、診療料と訪問費用が含まれた金額になっています。従って、6歳未満の乳幼児に対して訪問診療を行った場合には、「乳幼児加算(400点)」が加算されます。
終末期の患者に対して行われたものは、訪問の場所により3500点~6500点の点数が加算されます。看取りを行う医療機関の方は、診療報酬点数表にてご確認ください。
いずれの場合も、独歩等が可能であり、訪問診療料を算定していない場合は、「A001再診料の「注12」地域包括診療加算」または「B001-2-9地域包括診療料」の算定が可能になります。
■上記以外の留意点
在宅療養支援診療所・病院の届け出有無により、加算の算定点数が異なってきますので、自医療機関がどのような届け出内容になっているのか、確認する必要があります。
また、医療機関の所在地と患家の距離が16kmを超える場合医ついては、当該医療機関からの往診が必要な絶対的な理由が必要になります。地図上で、医療機関を中心に半径16kmの円を書き、患家をプロットして確認する必要があります。
なお、この場合の「絶対的理由」とは、患家の求める診療に専門的に対応できる医療機関が存在しない場合、仮に医療機関があったとしても往診等による対応をしていない場合などが考えられます。
「在宅緩和ケア加算」「在宅療養実績加算」に該当する場合は、施設基準の届け出が必要ですが、それぞれに加算が設けられています。確認するようにしましょう。
【診療録への記載、レセプトへの記載等】
■往診の場合
「患者又は家族」からの求めがあった、ということを記載する必要があります。
病状の急変や、新たな疾病など、病名にも注意が必要だと思います。
<記載例>
〇月〇日午後〇:〇 ( 家族 )から電話あり
( 症状 )が発現し、持続している。
( バイタルの状況 )
( 水分摂取、薬の服用、など )
( 判断内容 )により、緊急往診必要と判断
午後〇:〇 患者宅へ訪問
( 所見 )( 診断 )と診断し、( 処方・注射・処置 など )
診察終了 午後〇:〇
■訪問診療の場合
通常の診療と同様に記載、次回の訪問予定時間も記載する
長時間になった場合は、その理由がわかるように記載すること
【その他】
今回、「新型コロナウイルス感染症にかかる診療報酬上の臨時的な取り扱いについて」が発出され、入院、外来、在宅等においても、特例的な措置が出されています。
初診でも情報通信機器を用いた診療に「初診料(214点)」が算定可能になったり、再診では「特定疾患療養管理料(147点)」が算定できるようになったり、しています。
実際に通院し対面診療よりも低い点数ですが、特例措置が取られています。
在宅医療において、一番大きなものは、「B001-2-5 院内トリアージ実施料(300点)」が算定できるようになったことではないでしょうか。
実際に熱発している患者の訪問等では、マスク・ゴーグル・手袋のみならず、フェイスシールド・ガウン等を使用し、予防策を講じて訪問されていると思いますが、その場合でも院内トリアージ実施料の300点が算定できるように特例措置が出されています。
実施されている先生方、算定漏れがないように、今一度ご確認をお願いいたします。
今回、「往診」と「訪問診療」について、内容を見ていきました。
往診と訪問診療の違いをご確認いただき、算定間違えがないようにしていただけたらと思います。また、付随する加算等については、「診療報酬点数早見表 令和2年度4月版」をご確認いただきますように、お願いいたします。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
最新の投稿
- 2024年12月4日接遇レッスン接遇レッスン~心に残る応対できていますか?~
- 2024年11月5日医療介護あれこれQ&Aより~医師国保がいい?それとも協会けんぽ?~
- 2024年10月21日クリニックのための接遇接遇レッスン~ユマニチュード導入のSTEP~
- 2024年10月18日特養介護保険3施設~特養・老健・介護医療院どう違うの?