【令和2年度診療報酬改定】オンライン診療とICT
長 幸美
アドバイザリー今回の改定は「働き方改革」が重点課題となっていますが、クリニックの先生方はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか?
「病院の先生だけの話でしょ」という声が聞こえてきそうです。
「働き方改革」で勤務医に対しても労基法に基づく労働時間にまで短縮していくことが求められてきています(2024年)。しかも、医療の質は求められていく・・・
この矛盾しているともいえることを考えていくためには、地域の中で、クリニックの先生方も含め、何を担っていくのかを明確にして、地域の中での立ち位置(ポジショニング)を決めることにあると思います。
処置や手術等の手技料の評価も気にはなりますが、それ以上に私が気にかかっていることは、この「オンライン」や「ICT」が他人ごとではなくなってきているのではないかということです。私も医療業界にかかわり始めて四半世紀が経ちました。時代とともに、医療機関が置かれている環境も、求められるものも大きく変わってきました。アナログ人間で、正直ICTは得意ではありません。しかし、webを使って行うことや情報提供すること、データを必要とする診療報酬が何と増えたことか・・・レセプトも紙で請求することがなくなりました。
また、対面診療の原則がある中で、「電話再診」についても、「診療情報提供」にしても、「患者の求めがある」「診療上の必要があり、指示をする」ことが大原則になっていますが、今回、少し様子が変わってきたように感じています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で、各種の会合・セミナーが中止になり、不要不急の外出は控える傾向が強まっていて、Web会議やWebセミナー、ライブ配信が増えている中、この「オンライン診療」「ICTを活用した会議」など、見過ごすわけにはいかなくなってきています。これに伴い、管理栄養士や薬剤師、歯科衛生士も含めて生活を支えるチーム活動が、医療機関の垣根を超えてできるようになってきました。つまり、「地域の医療資源」としてとらえ、考えていくことが求められているように思います。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
大きな改定の流れは3月5日のコラムにも記載しておりますので、併せてみていただければと思いますが、今日はクリニックの中でどんな取り組みができるのか、活用を少し考えてみましょう。
【オンライン診療】
初診の翌月から3か月の対面診療を経て、「オンライン診療を組み合わせた診療計画」を作成し、その内容に則って実施することが求められています。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
また、今回の改定で、緊急時の対応について、「当該医療機関が30分以内の対面診療を行う」という縛りがなくなり、「当該医療機関が対応する」原則をおさえつつ、対応ができない場合は「事前に受診可能な医療機関を説明し、計画に記載」し、速やかに医療機関において対面診療が行える状況を作っておくことで、対応は可能とされました。
さらに、こういった場合、緊急連絡を受け、電話で相談・指示をすることに対し、「電話再診料」が算定できますし、その電話再診に基づいて、休日・夜間の救急医療を提供する医療機関を受診させる場合、診療情報提供料(Ⅰ)が算定できることも明示されています。
対象疾患については、これまでの10項目の管理料算定者に加え、慢性頭痛患者及び在宅自己注射指導管理料を算定している糖尿病、肝疾患又は慢性ウイルス肝炎の患者が追加されました。慢性頭痛患者については、医師の資格要件もありますので、ご確認ください。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
へき地や医療資源が少ない地域等に属する医療機関については、医師の急病時等にともない、代診による外来診療ができなかった場合など、同じ二次医療圏にある「オンライン診療の施設基準を満たす医療機関」に依頼して行ったオンライン診療も、月に1回だけですが、初診のオンライン診療が認められました。かなり画期的なことだと思います。
このことにより、「地域で、みんなで、診ていく!」という「地域医療構想」の理念が明確にあらわされていると考えます。
【オンラインによる医学管理料の見直し】
前回改定において、「オンライン診療」時の医学管理料として「オンライン医学管理料」が新設されていましたが、今回の改定でこの名称がなくなり、それぞれの医学管理料の中で「オンラインを活用した医学管理」を評価されています。算定できる点数は100点と変更はありませんが、それぞれに算定要件がありますので、ご確認ください。
ポイントは、診療計画に基づき、来院されない月でも、
「オンライン診療料70点+医学管理料100点+処方箋料」が算定できるということです。個々では細かな内容は見ていきませんが、お手元に医師会から白本が届いていると思います。注釈まで、しっかり読み込んでください。
この「医学管理」の中で先生方に注目していただきたいところをいくつかピックアップします。これは、地域の医療機関との「連携」という意味でもトピックスになると思います。
◆オンライン在宅管理料
月2回以上の訪問診療を行う場合についても対象となりました。また、同一医療機関の5名以下の医師チームにより患者の説明や同意等に基づき、算定要件が見直されています。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
◆オンライン服薬指導
オンライン診療及び訪問診療を受けている患者について、オンラインによる服薬指導が新設されています。これらは調剤薬局の算定項目ですが、クリニックの先生方の処方がオンライン診療に基づくものであれば、このように評価され、その結果は先生に情報提供を行うこととされています。
必要な薬剤がきちんと服薬できているか、薬剤の効果判定や副作用の発現などをいち早く行うためには、必要なものではないかと期待されます。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
◆外来栄養食事指導
糖尿病をはじめとする生活習慣病にとって、栄養管理が重要になり、外来において、継続的に行うものを評価されています。この場合、オンライン診療との組み合わせで、外来診療時には対面の栄養指導が必要になります。また、電話等でよいとされているところもポイントになろうかと思います。
糖尿病は40-50代の働き盛りの方が多く、受診等の継続ができなくなると、透析等の重篤な状態に陥ることなどもあり、電話での指導等の効果検証の報告などもされています。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
◆ニコチン依存症管理料
ニコチン依存症については5回コースの治療管理で、初回と5回目は対面診療が必要
ですが、2回目から4回目までは、情報通信機器を用いたオンラインでも可能になりました。さらに、加熱式タバコの喫煙者も対象となります。
(出典:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」より)
【最後に】
ICTの活用については、このほかカンファレンス等を「Web」で行うことでも要件を満たすとされていますし、遠隔地にいらっしゃる専門医へ具合が悪い患者さんを連れて行かなくても、「遠隔連携診療料(500点)」のように身近なかかりつけ医の診療を受けながら、遠くの専門医(大学病院等)の診療を受けることも制度の中で認められてきました。
連携先の病院(対象医療機関)は、「難病診療連携拠点病院」「てんかん診療拠点機関」という制約がありますが、診療を受ける側からすると、ありがたい仕組みです。
また、今回の新型コロナウイルス感染拡大対策で、感染者が集まるであろう医療機関への通院も控えていくような動きもあると思います。この新型コロナウイルス対策で、日本医師会からも「情報通信機器」を使用した臨時的・特例的な取り扱いについて、通知が発出され、この中でも、「オンライン診療」を推奨する声も上がっています。
これを機会に一度考えてみられては如何でしょうか?
<参考資料>
〇厚労省:令和2年度診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605491.pdf
〇厚労省:告示より
(初再診料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603747.pdf
(医学管理料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603749.pdf
(在宅医療)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603750.pdf
〇九州厚生局:令和2年度診報酬改定にかかる施設基準の届出等
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/index.html
〇日本医師会:新型コロナウイルスの感染拡大防止策としての電話や情報通信機器を用いた診療等の臨時的・特例的な取扱いについて(R02.3.24)
http://dl.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/2019chi_489.pdf
※注意事項:この対応は一時的な対応であるため、「廃止」通知が出た後は、取扱いが変更になることとなります。
・日本医師会:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その6)
・新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その6)(R02.3.24)
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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