【令和2年度診療報酬改定】歯科についてⅠ
長 幸美
アドバイザリー歯科については、前回の改定から、地域医療構想の中で、「連携」すること(医科歯科連携)その目的は、「口から食べるということ」「口腔疾患の重症化予防」というものが生活の質を維持するため、さらに地域包括ケアシステム・・・地域で安心して暮らせる仕組みを作るために必要な仕組みを「歯科」の立場からも支援してほしいというメッセージが込められています。
近年の歯科診療所の数は、近年は横ばいになっていますが、小児の健診や、8020運動などもあり、小児のう蝕有病率は徐々に減少し(3歳児で55.8%⇒15.8%、12歳児で88.3%⇒35.5%)、全年齢階級で20歯以上有する者は増加していて、80歳で20本以上の歯がある方は、21.7%⇒51.2%となっています。(平成元年度⇒平成28年度)
一方、成人の約7割が歯周病にり患しているという結果も出ています。
推計患者数は、64歳以下で減少傾向にある一方で、65歳以上の増加率が多くなっています。
このような状況を踏まえて、歯科治療の需要はあるものの、治療を主に実施するというよりも、口腔機能の管理(維持・回復)を必要とする方が、増加していることがわかります。
このような状況を踏まえ、合併症・副作用を含む全身的な疾患や加齢に伴う口腔の変化、自立度の低下などが加わり、治療の難度・リスクも増加していくことが考えられます。
【歯科外来診療の特徴】
歯科外来診療においては、日常的に「唾液」もしくは「血液」に触れる環境下で多くの器械・器具を使用されています。このため、前回の改定では、歯科外来診療における院内感染防止対策にかかる体制の確保として、外来診療環境体制加算として、初診料・再診料の見直しが行われました。令和元年10月1日現在では約95%の医療機関で届出を行われています。
施設基準としては、以下の体制をとることを求められています。
現在さらに院内感染防止対策に対する関心は高まっています。
平成31年3月29日に「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針(第2版)」(日本歯科医学会)も、とりまとめられました。機器の取扱い方法、洗浄や仕分け等、院内感染対策にかかる一連の取組を、より適切に実施するため、当該業務を担う職員に対しても研修を実施することが重要である、とされています。
これを受けて、初診料、再診料の見直しが行われ、初診料が10点、再診料が2点増点されます。
【歯科疾患管理料の見直し】
初診時にかかる評価を見直すとともに、長期的な継続管理について新たな評価を新設されました。初診から6か月を超えて歯科疾患の管理及び療養上必要な指導を行った場合は長期管理加算として新設されています。
【歯周病治療について】
◆歯周病安定期治療(SPT)について
これは、歯科疾患管理料または歯科疾患在宅療養管理料を算定している患者であって、4mm 以上の歯周ポケットを有する者に対して、一連の歯周基本治療等の終了後に、一時的に病状が 安定した状態にある患者に対する処置を評価したものです。
プラークコントロール、機械的歯面清掃、スケーリング、スケーリング・ルートプレーニング、 咬合調整等を主体とした包括的な治療を行います。
◆歯周病重症化予防治療の新設
上記歯周病安定期治療の対象となっていない歯周病を有する患者に対する継続的な治療を評価されたもので、次のスライドにあるものです。
【周術期等口腔機能管理について】
がん患者などの全身麻酔下での手術や 放射線療法や化学療法の前後に 歯科で周術期口腔機能管理を行うことで、 術後肺炎などの合併症予防ができることが期待され、平成24年に診療報酬改定において、「周術期口腔機能管理」が新設されました。
今回、医療機関と歯科医療機関との適切な連携を推進する観点から、手術を行う医療機関から歯科医療機関へ予約を行い、患者の紹介を行った場合について、周術期等口腔機能管理における新たな評価が行われています。
◆診療情報提供料1(医科)
◆周術期口腔機能管理料(Ⅲ) 190点⇒200点へ
◆周術期専門的口腔衛生処置 算定要件(回数)の見直し
周術期口腔機能管理料(Ⅲ)を算定した患者に対して同月に実施した場合には、月2回
に限り算定が可能とされました。
【在宅訪問歯科医療の推進】
居宅や施設において、歯科訪問診療を提供している歯科診療所の割合は、年々増加の傾向にあります。弊社が事務所を構える、福岡県下においても、よく「歯科訪問診療」の車を見るようになりました。慢性期の医療機関や高齢者施設においても、訪問診療を受け入れておられる医療機関が多くなっています。特に施設への歯科診療サービスの提供が顕著となっています。
医療機関においても、「口腔ケア」を行うことにより、誤嚥性肺炎の発症を抑える効果があることが報告され、看護補助者のスキルアップに力を入れている医療機関も増加しております。
このような背景もあり、在宅歯科医療の推進として、栄養サポートチーム等連携加算の対象拡大、歯科疾患在宅療養管理料の評価の見直しがされています。
◆小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 450点
注6 小児栄養サポートチーム等連携加算1 80点(新設)
他の医療機関に入院している患者に対し、当該入院中の保険医療機関の栄養サポートチーム等の構成員として診療を行い、その結果を踏まえて、口腔機能評価に基づく管理を行った場合の加算
注7 小児栄養サポートチーム等連携加算2 80点
児童福祉法第42条に規定する障害児入所施設等に入所している患者に対し、当該患者の入所している施設で行われる食事観察等に参加し、その結果を踏まえて口腔機能評価に基づく管理を行った場合の加算
◆歯科疾患在宅療養管理料
1 在宅療養支援歯科診療所1の場合 320点
2 在宅療養支援歯科診療所2の場合 250点
3 1及び2以外の場合 200点(10点増点)
【歯科固有の技術の評価の見直し等(新機能・新技術)】
口腔疾患の重症化予薄井、航空機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進を目的に、新技術等の評価が行われました。該当があるものに関しては、告示及び通知をご確認ください。
◆顎関節人口関節全置換術 59,260点(新設)・・・施設基準の届け出が必要
◆象牙質レジンコーティング(1歯につき) 46点(新設)
<算定要件>
生活歯歯冠形成を行った場合、当該補綴に係る補綴物の歯冠形成から装着までの
一連の行為につき1回に限り算定する。
◆既製金属冠 200点(新設)
・乳歯金属冠⇒「既製冠」と名称も変更となり、新たな評価となっています。
◆歯科疾患管理料_小児口腔機能管理加算
口腔機能の発達不全を認める小児のうち特に継続的な管理が必要な患者に対する評価を新設されました。これは咀嚼機能にかかる項目が必須であり、歯の萌出していない患者への加算は対象となっていません。
◆小児口腔機能管理料 100点(新設_月1回限り)
<対象患者>
・15歳未満の口腔機能の発達不全を認める患者
(咀嚼機能、嚥下機能若しくは構音機能等が十分に発達していない又は正常に獲得できていない患者)
<算定要件>
・区分番号B000-4に掲げる歯科疾患管理料又は区分番号B002に掲げる歯科特定疾患療養管理料を算定している患者であって、
・口腔機能の発達不全を有する15歳未満の小児に対して、
・口腔機能の獲得を目的として、当該患者等の同意を得て、当該患者の口腔機能評価に基づく管理計画を作成し、療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り算定する。
◆口腔機能管理料 100点(新設_月1回限り)
<対象患者>
・歯の喪失や加齢、全身的な疾患等により口腔機能の低下を認める患者
(口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咀嚼能力低下、舌口唇運動機能低下、咬合力低下、低舌圧又は嚥下機能低下の7項目のうちいずれか3項目以上に該当する患者)
<算定要件>
・区分番号B000-4に掲げる歯科疾患管理料又は区分番号B002に掲げる歯科特定疾患療養管理料を算定している患者であって、
・口腔機能の低下を来しているものに対して、
・口腔機能の回復又は維持を目的として、患者等の同意を得て、当該患者の口腔機能評価に基づく管理計画を作成し、療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り算定する。
※評価表項目の例
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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