【令和2年度診療報酬改定】前提として考えること「ポジショニング」
長 幸美
アドバイザリー新型コロナウイルス感染の防止対策により、今年は異例の「イベント中止」「セミナー中止」が相次いでいます。情報が入ってこない!怖くて外に出られない!という声が聞こえますが、厚労省からは、情報が開示されていますし、webセミナーなど、新たな取り組みも始まっています。セレクトすることは必要だと思いますが、ぜひ、アンテナを張ってみてください。
さて、今回は、マイナー改定といわれています。基本の点数が大きく変わっていないこと、働き方改革で人の配置基準が少し緩やかになっていることなどが、その一因だと思います。しかしながら、施設基準をよく見てみると「対象患者」が明確になっていたり、アウトカム評価が引き上げられていたり、細かな部分をしっかりと読み込んでいくことが必要になっていると思います。また、新たな加算もついてきています。これらを総合してみていくと、前回改定同様に「地域包括ケアシステムを後押しする改定」は継続していると思いますし、さらに、明確化されていると思います。
「地域医療構想」の中で、「あなたの医療機関は何に軸を置いていくのですか?」という問いかけ、また明確化していきましょうというメッセージが感じられます。
医療機関ごとにポジショニングを決め、しっかり対応しているところには評価し、メリハリがつくようになってきています。
(出典:厚労省「人口減少の見通しとその影響」より)
この「人口減少」「高齢化社会」の時代背景の中、地域を支える医療体制は一つの医療機関で完結することは、もはや難しいという判断が出されています。
今回改定では、「地域における急性期医療体制を担う医療機関」の位置づけ(評価)として、「年間2000台の救急車受入れ」「勤務医の負担軽減策」などが評価され、「地域医療体制確保加算520点」が新設されました。全国で、900医療機関が想定されているとお聞きしています。
救急医療は、9時から17時までの限られた勤務体制では対応ができません。人員の確保もさることながら、「地域全体で協力し、救急を担う医師の働き方を改善していきましょう」、ということを求めるメッセージが込められています。
また、地域医療を支える取り組みや連携については、新たな評価がついています。
「退院時薬剤情報連携加算(60点)」「栄養情報提供加算(50点)」「連携充実加算(150点)」などが、評価として挙げられてくると思います。
仕事と治療の両立支援に対しても、対象疾患の拡大などが図られています。
主なものは、「オンライン診療」により働き盛りの生活習慣病について、webを活用した「オンライン栄養指導」「オンライン薬剤管理指導」などが評価対象となりました。
40代~50代の生活習慣病の治療中断が、将来的に「健康寿命の延伸」「透析への移行」など医療費・介護費の増大に影響があることへの対応策であると考えられていると思います。
さらに、難病や専門性の高い疾患に対し、かかりつけ医のもとで医療管理を行いながら遠隔の専門医にオンラインで診療を行うことについても、「遠隔連携診療料」として評価されています。これにより、希少性の高い疾患や専門性の高い疾患等により、診断が難しい疾患についても、地域の中のかかりつけの先生への相談がしやすくなることを期待しています。
こうしてみてくると「地域完結型医療」それぞれの医療機関のポジショニングを考え・・・つまり、「何を実施し、何を連携していくか」ということがポイントになってくると思います。
<参考資料>
〇厚生労働省「個別改定項目について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000193003_00002.html
〇厚生労働省「地域医療構想」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html
〇全日本病院協会「地域医療構想」
https://www.ajha.or.jp/guide/28.html
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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