【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】個別事項(その7-①:その他の論点①)

長 幸美

アドバイザリー

今回は、平成30年度診療報酬改定の中医協資料より、「個別事項(その7:その他の論点)」についてみていきましょう。それぞれに特殊な療法等もあり、個別性が高い事項が含まれていますが、必要なところを見ていただけたらと思います。

今回かなり情報量が多いので、3回に分けてお送りします。
第一回目は、「腎代替療法」「遠隔病理診断」「小児への対応」をお送りします。

【腎代替療法】
透析患者は年々増加傾向にあり、前回改定でも、透析導入に至らないように、「重度化予防」や「生活習慣の改善を促す取組み」について、評価されています。

また、医学技術の進歩を踏まえて、腹膜透析など、透析以外の療法についても評価されてきました。処置にかかる診療報酬が包括されている病棟でも人工透析は包括外であることに対し、腹膜透析は包括されるなどの取り扱いが異なることもあり、課題として取り上げられています。

末期の腎不全患者に対する治療方法の比較です。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

透析導入の原因疾患としては「糖尿病性腎症」が多く、予防についても評価が付けられてきました。

血行動態の不安定な患者等に対する長時間透析についても一定の評価はされていますが、5時間以上は一定の診療報酬であるなどの課題もあります。

また、障害者加算として、重症化した「著しく透析が困難な障害者等」に対する透析実施に対し、評価されています。

また、透析液水質確保加算については大部分の血液透析実施医療機関において、算定ができているという状況もあり、適正化が議論されています。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

このような現状を踏まえ、施設の規模や血液透析実施患者数によって効率性が異なっていることから、効率性を踏まえた評価となるよう適正化すること、 慢性維持透析濾過(複雑なもの)について、現行、実施時間によらず一律の評価となっていることから、時間により区分を分けた評価に適正化すること等が議論されています。

 

【遠隔病理診断】
遠隔病理診断については、
① デジタル病理画像を用いた病理診断・・・標本での顕微鏡検査が基本とされているが、デジタル病理画像については、関係学会からの報告もあり、顕微鏡検査と同等に評価してもよいのではないか

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

② 保険医療機関の病理医が保険医療機関外で業務を行うことについては、画像診断と同様に認めてもよいのではないか、

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

③ 保険医療機関間の連携による病理診断について、連携先の体制に応じて可能にしてもよいのではないか。
という議論がされています。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

どの場合についても「働き方改革」の考えや、ICTの考えがベースにあるように思います。
病理の診断ができる医師は少なく、子育て中の医師が継続して働ける状況等も考慮の必要があると考えられています。

 

【小児への対応】
小児については、「小児外来診療料」と「小児かかりつけ診療料」の評価をされていますが、算定回数を見ると、小児かかりつけ診療料は全体の4%程度となっているようです。また、算定患者による電話問い合わせへの対応は、多くの医師が「自院で対応している」と答えています。慢性疾患を有する小児につていの継続的なかかわりが課題となっています。

平成28年度の改定のルールを見直しておきましょう。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

対象疾患としては、喘息や呼吸器疾患、アトピー性皮膚炎等が多く、運動器関係疾患で算定している例はありませんでした。参考までに運動器疾患にどのようなものがあるのかを見ておきましょう。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

前回の改正後の検証結果を見ても、いわゆる医療的ケア児の数が増加傾向にあり、「小児科療養指導」等の需要は増加していると考えられます。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

この「医療的ケア児」に対しては、患児への対応ももちろんですが、それ以上に家族へのサポートも重要になってきます。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

「医療的ケア児」についてはNICU等に長期入院した後の日常的な医療的ケアが必要な障害時と位置付けられていますが、その状態は実にさまざまです。
医学の発展に伴い、増加傾向にあること、生きていくために日常的な医療的ケアが必要でその内容について、次のスライドにまとめられています。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

また、外来における小児患者の医学管理に対する報酬としては、小児科外来診療料及び小児かかりつけ診療料があります。これらの点数は、投薬、検査等が包括されており、別途算定できません。約2割の患者については、6剤以上の処方が必要になっていることも調査で分かってきています。

調剤報酬については、入院・外来を通し見直しがあり、多剤投与についても減量することにより評価されるようになってきました。入院診療報酬でも感染防止対策加算として抗菌薬の適正使用について加算評価されています。

小児における抗菌薬の適正使用についても、安易な抗菌薬の適正使用等、評価方法などを検討していくことに対し、議論がすすめられています。

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出典:中医協資料(20171208)「個別事項(その7:その他の論点)より

 

<参考資料>
個別事項(その7:その他の論点)
個別事項(その7:その他の論点_続き)
個別事項(その7:その他の論点_続き)

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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