【医療介護あれこれ】第11回花立セミナー「病院をマネジメントできる職員を目指して」
長 幸美
アドバイザリー梅雨真っ只中の6月24―25日 宮崎県日南市の県立日南病院にて、第11回花立セミナーが行われました。この「花立セミナー」とは、県立日南病院の医療管理部医療連携科の部長である木佐貫 篤先生が主催される「事務職員のための勉強会」です。今年は、病院の事務職をはじめ、看護師・臨床工学技士・社会福祉士・診療情報管理士など、総勢36名の受講者が集まり、とても熱い濃密な時間を過ごしました。
今年のテーマは「病院をマネジメントできる職員をめざして」と題され、主催者である木佐貫先生から、「2025年へ向けて地域医療構想や地域包括ケアなどへの取り組みが進み、病院運営をめぐる動きはめまぐるしいものがある。すべての医療機関は適切な運営を通じてこの変革の波を乗り越えていかねばならず、事務職員のチカラが病院の経営を大きく左右するといっても過言ではない。講師陣の話を聞くだけではなく、横のつながりをぜひ作ってほしい」と開会宣言です。
基調講演は、岡山市立総合医療センター法人本部事務局長の豊岡 宏さん。
「病院の経営再建を請け負うプロの事務局長」ということで、興味津々・・・。経歴も、大手鉄鋼会社の企業立病院の経営再建業務に従事されたという異色さ。企業人と医療人の違いなど、多くの違和感を抱えての再建だったということで、これまた興味津々・・・。あっという間の講演でした。
医師との信頼関係の構築方法や、病院の雰囲気をどう変えていったのか、ユニークなものでした。病院への愛情を育み、「我が事」として捉えていくことの大切さを感じる時間でした。病院でも利益は必要で、医療のスペシャリストである医療職(医師・看護師等)とジェネラリストとしての事務職の良好な補完関係が、病院の発展には重要です。
プロの事務職員としては、医療職のニーズにいつでもどこでも対応できることが求められ、「医療職の間をつなぐ下支えすることは事務職にしかできません、世界一の事務職を目指すことで夢が広がっていく」と結ばれました。
次に、千葉大学医学部付属病院の特命病院教授である小林美亜先生から、「クリティカルパスとTQM」と題し、クリティカルパスの考え方と、クリティカルパスを導入し、運用するためには事務職が積極的にかかわりを持ってほしいという話がありました。
DPCのデータを分析することにより、できる経営の効率化や医療の質の担保など、急性期だけではなく、慢性期医療においてもパスは導入できるということや、着目の仕方など、「ほう~なるほど!!」ということも多く、データマネジメントや教育など、院内の経営に関する問題としてクリティカルパスに積極的に参画してほしいというお話でした。
第3講演目は岩手県立宮古病院地域連携室の湯澤 克さんの話です。連携実務者として「カシオペア地域医療福祉連携研究会」を立ち上げ、全国連携実務者ネットワークの理事長でもあります。全国に向けて活躍の場を広げていらっしゃるスゴイ方です!
病院の内部そして医療機関だけではなく介護事業所、住民を含めてどのように「連携の場」を提供し、事務職の役割を問われているように感じました。
湯澤さんは2人の子供の良き父親でもあられます。子供さんからこんなことを教えられたと話してくださいました。
あのね、人の心は見えないじゃん
だからね、少し動きを見てどう思っているのか考えるの
それでもわからない時には行動を見るの
それとどう思っているか考えるの
それでもわからない時は、聴くの
人の心を想像し、行動を見て、しっかりと「聴く」ことが、いかにつながっていくことにとって大事なのかということを子供の言葉から教えられる、という大きさに圧倒されました。
湯澤さんの「それぞれのMAXをどう判断するのかを考えた時に、事務職が関わることで強い連携・協働体制を作ることができる」という言葉が、心に残っています。また、「診療報酬のために我々は活動しているのではなく、診療報酬は後からついてくるものだ」「事務職の役割は場を作ること」、そして「プレイヤー(専門職)が活躍できる場を院内・院外で整えていく」ためには事務職の役割は大きいのだなということを改めて感じ、今までそのようなサポートができていただろうか・・・と反省することが多かったです。
私は、今回のセミナーに向けて自分自身を見直した時に「いったい何をしてきたのだろうか」「こんな私が花立セミナーの講師なんて・・・」と、一時期は講師を受けてしまったことを後悔する時期もありました(しかも一番最後の枠だし・・・)。今回のハンドアウトを見た時にも、他の講師の皆さんがあまりにも大きく、気おくれをしてしまったのでした。
また、プログラムが進むにつれて、主催者の木佐貫先生の意図が伝わってきて、ますます怖気づいていました。しかし、私は「私がやってきたことを伝える」ということしかできない、たくさん悩み実践してきたことを「私の言葉で伝えよう」。そしてきっとたくさん悩みながら仕事をしているであろう皆さんに「その中から一つでも受け取ってくれたらいいな・・・」と思った時に、不思議とスーッと落ち着くことができました。
どれだけお伝えできたのかわかりません。いつかアンケートを拝見させていただけたらなと思います。そして、今の仕事にもとても大きな示唆を与えてくださる時間でした。
私が今関わらせていただいているどのクライアントさまも、様々な悩みを抱えておられます。そのほとんどは「ヒト」「教育」といったものになってきます。「モチベーションを高めたい」という医療機関さまもあります。その中で、一番感じているのは、「ジェネラリストとしての役割」つまり、事務職員が医療職や地域の中でどのように繋がっていけるか、そこに「事務職員としての大きな役割がある」ということです。それを少しでも感じてくださるとうれしいなと思います。
今回は、大きなミッションを抱えての参加でいつもとは違う緊張感がありました。しかし、いつの間にか、例年以上にはまり込んで楽しんでいる自分自身がいました。今回のセミナーで「自分自身の仕事を認める」ことができ「自信」にもつながっています。よい経験をさせていただいた木佐貫先生、推薦してくださった十河さん、本当にありがとうございました。
私も、自分自身の殻を破ることができるように頑張ります。
来年また少し前進した姿でお目にかかりましょう!!
コラム読者の皆さんも、是非来年、花立セミナーでお会いしましょう!!
木佐貫先生、是非開催をよろしくお願いいたします!!
<番外編>
今回、新たな楽しみがありました。
「油津の街歩き」です。幸いなことに24日は曇天で少し早めに到着し、ぶらりとすることができました。初めて訪れた時にはシャッター街で本当にさみしく、お昼ご飯を食べることもできずに病院の食堂で食事しました。3年前から木藤さんの企業誘致や活性化によりみるみる活気づき、毎年楽しみにしてきました。今年はあひらつ神社にも参拝し、街歩きを楽しみました。
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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