2015医療法改正について

市川 隆志

アドバイザリー

3月3日に閣議決定され、現在国会で審議されている「医療法の一部を改正する法律案」は、①地域医療連携推進法人制度の創設②医療法人制度の見直し、の2つを柱としています。

【地域医療連携推進法人制度】
地域医療連携推進法人は、病院等の医療機関を開設する医療法人等の非営利法人が参加法人(社員)となって運営される「持株型」の法人です。株式会社等の営利法人は認められていません。
病院等の相互間の機能の分担と、介護事業等も含めた業務の連携の推進、医療従事者の研修、医薬品等の供給、資金貸付等の医療連携推進業務を行うことで、経営の効率を上げることが目的とされています。法人の設立は、地域医療構想との整合性に配慮し、都道府県の医療審議会の意見聴取の上、都道府県知事の認定により行われます。

主な認定基準は以下の通りです。
・地域医療構想区域を考慮して病院等の業務の連携を推進する区域を定めていること。
・地域の関係者等を構成員とする評議会が、意見を述べることができるものと定めていること。
・参加法人の予算、事業計画等の重要事項について、地域医療連携推進法人の意見を少なくとも求めるものと定めていること。
法人の代表理事は都道府県知事の認可を要するとともに、剰余金の配当禁止、都道府県知事による監督等の規定については、医療法人に対する規制が準用されます。また、都道府県知事の許可があれば、地域医療構想の推進に必要である病院間の病床の融通ができます。また、法人には、公認会計士等による外部監査の実施や財務諸表の公告も義務付けられます

【医療法人制度の見直し】
重要な項目は以下の3点です。
①医療法人の経営の透明性の確保及びガバナンスの強化に関する事項
②医療法人の分割等に関する事項
③社会医療法人の認定等に関する事項

このうち①の「経営の透明性の確保とガバナンスの強化」については、以下の3点がポイントです。
・一定規模、一定基準に該当する医療法人は、新たに定められる会計基準に従って財務諸表を作成し、公認会計士等による監査、公告の実施が義務付けられる。
・役員、特殊関係がある事業者との取引状況について報告書を作成し、都道府県知事に届け出ることが義務付けられる。
・理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等を規定し、理事会の設置、社員総会の決議による役員の選任等に関する所定の規定を整備する。

また、③の「社会医療法人の認定」については、以下のように見直しが行われます。
・複数の都道府県にまたがって開設している社会医療法人で、医療の提供が一体的に行われているものとして基準に適合する場合は、全ての都道府県知事ではなく、当該施設の所在地の都道府県知事だけで認定が可能に。
・認定を取り消された場合には、一定要件に該当し、救急医療等確保事業に係る業務の継続的な実施計画を作成し、都道府県知事の認定を受けたときは、収益業務を継続して実施できる。

施行期日は、公布の日から1年以内(一部は2年以内)に定められる予定です。今後の国会審議にもご注目ください。

コンサルティング部 部長

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