【医療介護あれこれ】第3回連携室管理者向けセミナーに参加して

長 幸美

アドバイザリー

今年2月に予定されていた、第3回連携室管理者向けセミナーですが、コロナ禍の影響で、延期となり、7月19日(日)の午後web開催されました。
この会は全国連携実務者ネットワークの年1回の管理職研修ということもあり、新型コロナ感染拡大の恐れがあるため、延期されていたものです。今年は、診療報酬改定もあり、さらに豪華な講師陣で待ち望んだ開催だったこともあってでしょう、80名を超える方の参加があったそうでございます。

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(第3回連携室管理者向けセミナーのハンドアウトの表紙です)

私も心待ちにしていた一人ですが、この「コロナ禍」により、医療機関への影響が計り知れず、地域の中での医療機関の対応により、二極化が早まっていくのではないかと感じています。
治す医療から、生活を支える医療へ
前回2018年の診療報酬・介護報酬同時改定で医療・介護の垣根を超えて地域の立ち位置について見直しが図られました。今回2020年の改定は、この「支える医療」をさらに進めていく内容だったと思っています。

そういった状況に上乗せするように、2月の開催予定時には考えられなかった「コロナ禍」によって、より大きな課題としてのしかかってくる、経済と財源の問題、働き方やコミュニケーションの取り方の変化、さらには地域住民の受療行動にまで影響が出てくるのではないか・・・改定の話はどこへやら、それどころではなくなってきました。しかし、私は、そのような中で、連携実務者に求められてくることは、より大きくなってくるのではないかと感じています。
今回、恵寿総合病院の理事長神野正博先生の基調講演に続き、地域に視点を据えた3名の方の活動を拝聴し、感じたことを述べたいと思います。

【経済と財源】
平成10年の金融危機、平成20年のリーマンショックの影響により、日本経済は冷え切り、雇い止めやリストラ等の問題が大きく取り上げられてきました。しかし、今回(令和2)のコロナショックは医療と介護の業界を直撃し、今までにない危機感が生活を襲っています。医療機関や介護事業所に感染者が発生し、地域医療の脆弱性が明るみに出ました。つまり、地域医療構想という言葉はわからなくても、「地域の生活を支える」には、1病院のみでは支えきれない」「病院の医療機能に違いがあるのだ」ということについて意識し始め、社会問題として取り組まなければならないということが、生活者の意識の中にも出てきているのではないかと思います。

【働き方とコミュニケーションの変化】
神野先生は、ご講演の中で、「令和は、働き方元年」だと表現されていました。
診療報酬改定の中でも、この「働き方」「コミュニケーションの取り方」について、様々に取り上げられています。
働き方」のについては、「医師事務作業補助加算」「看護補助加算」などがその筆頭になると思います。「タスクシフティング/タスクシェアリング」という言葉も、多用され、聞きなれてきましたね。
今回の「コロナ禍」では、「体調が悪い人は無理をしない」ということが徹底されるようになり、「発熱者」はしばらく自宅待機、としている医療機関も多いと聞いています。当社も医療機関ではありませんが、毎日体温を測り、微熱がある状態はすぐに上司に報告し、指示を仰ぎ、自宅待機・在宅業務をするようになりました。我々一般企業はパソコンを使用して業務を行うことが主になりますので、何とでもやりようはありますが、医療機関・介護事業所は違います。自宅待機者が増えれば、出勤している方の負担が即座に増えます。そういった、人数が確保できない中で、いかに医療・介護の質を落とさずに提供していくか、ということが求められ、そうなると、「タスクシフティング(仕事を別の方に渡す)」ではうまくいかないのではないでしょうか?
タスクシェアリング(協働する、分かち合う)」という発想を持たなければ、うまくいかないように思います。私は看護師だから、事務だから・・・という時代は終わったのではないでしょうか。
有給休暇の取得や残業を減らそう・・・などという次元ではなく、いやおうなしに突き付けられ知る喫緊の課題だと感じています。

さらにコミュニケーションの取り方に至っては、「オンライン診療」の枠が少し緩くなり、対象範囲も拡大してきています。コロナ禍においては、さらに「初診」についても認られていて、「極力医療機関に行かない」ということが推奨されてきました。そこで、生活者の「意識の変化」があります。本当に今必要な医療か、本当は病院に行かなくてもよかったのではないか・・・ということを考えるようになったのではないかということです。
また、未来から来たドラえもんの中で「どこでもドア」というものがありました。私も、子供のころ「タケコプター」と「どこでもドア」が欲しいなと思ったものですが、「オンライン診療」「オンライン会議」「オンラインセミナー」「オンライン面談」・・・これらは、距離と時間を縮めるという意味合いからすると、まさしく「どこでもドア」のようなものではないかなと感じています。それらを支えるIT環境をどう構築していくのか、考えていくことが必要ですね。

【事例の紹介】
今回のセミナーの中では、三つの取り組みが紹介されました。

■「連携」を強化するための患者支援センターの取り組み
二つの市民病院が合併して2016年に新たに開業した病院で「退院支援」と「在宅医療支援」「地域連携」を行うために作られた新たな部署の取り組み紹介。
ここでは、情報の共有できるしくみや質の高い退院支援を行うためには、「病棟看護師」が主体性をもって退院後の生活について支援を行うこと、そして、多職種(看護師・MSW・セラピスト・事務職)が協働するワンチームが必要だということが説かれていました。

■地域視点の病院マネジメント
倉敷中央病院の地域連携室のマネジメントの立場から、連携業務と後方の融合や、地域の医療機関を巻き込んだ活動「わか街健康プロジェクト」について、紹介とともに、ある種、医療機関との付き合い方について、改めて考える時間となりました。
人生の中では、生命の危機・・・つまり医療機関で治療を必要とする時間は一時であり、人生の大多数の時間は「生活」をすることに費やされている。その生活の中にどうつないでいけるのか、「わがプロ」の活動には、地域住民に考えてもらう・・・「わが事としてとらえる」というところでも、医療と地域を繋ぐ一つの方法であると改めて思いました。

■一医療法人の取り組み・・・「なるこみ」の活動
和歌山県と大阪の県境にある鳴滝という地域の名前をとった「なるこみ」は、以前から、地域を巻きこむ活動に注目をしていました。宇都宮病院という100床未満の医療機関が、地域のコミュニティの中に溶け込み、地域を巻きこんで活動されている様子は、素晴らしいものがあります。倉敷の「わがプロ」とは違い、日常の生活の中で、緩く繋がっていく「なるこみ」の活動は、「見守り」「健康維持」などにも一役買い、地域の住民同士の接点や繋がりを作っていく一つのスタイルを見せていただいたようです。この「緩いつながり」の中から、医療者としての異変に気付くこと、これは、医療職種だけではないようです。言葉の中に隠れているSOSに気付くこと、今の言葉でいうと、「自助・互助」「となり組の関係」ということになるのでしょうか・・・。
表題に「ノットワーキング」と書かれていた言葉の意味がはじめよくわからなかったのですが、職員さんたちが、「何かをやらねばならない」というような義務感ではなく、「楽しみながら、ゆるーくつながっていく場」として活動されているのが印象的で、なるほど「ノットワーキング」なのか・・・と納得した次第でした。

コロナ禍で患者の減少や収入の減少があり、医療崩壊を起こさないためにも、「公衆衛生のルールをどう伝えていくか(マスク、手洗い・うがい等)」「地域連携の必要性」をどう伝えていくか、地域の中での医療機能をどのように考え、自院の立ち位置を見つめなおしていくか、多くの課題があります。
また、withコロナ時代の「新たな生活様式」を模索する、といわれている中で、生活者の医療機関への受療行動・医療への意識も変わっていくということを意識して、「地域の中でどのような医療提供をしていくのか」、ということを考えなければならない時が来ていることを肌で感じました。

リアルなセミナー開催ではなく、とても残念に思いました。しかし、オンラインだからこそ参加できたという方もいらしたのではないかと思います。時代の変化により「連携」「コミュニケーション」の在り方はまた次のフェーズに入っているのではないかと感じたセミナーでした。

医業経営支援課

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