【医療介護あれこれ】骨太方針2020
長 幸美
アドバイザリー経済財政改革の基本方針として、「骨太方針2020」が発表されました。
COVID-19の影響だと思われますが、例年よりも約2か月遅れて発表されたこの内容も、コロナ禍の影響を大きく受けたものとなっています。
(出典:経済財政運営と改革の基本方針2020についてより概要版)
これまでの経済危機は「金融危機(H10年)」「リーマンショック(H20年)」とかなり大きなものでしたが、医療機関を直撃するほどではなかったように思います。今回の「コロナ禍」は医療・介護業界を直撃し、まさしく「コロナショック」という状況です。
未知のウイルスの拡大のために経済活動は中断し、学校関係も休校となり、商業施設関係、観光業、飲食業、etc. 大きな打撃となっています。
その中で、「国民の生活」を守るために何が必要なのか、来年に向けての方向性が打ち出されたことになりますが、大きな変化を感じています。今日はこのことについて、考えていきたいと思います。
この方針の中で、幾度も「新たな日常の実現」「10年かかる変革を一気に進める」とかなり強気の言葉が並んでいます。
今回の「コロナショック」がもたらした行動の変化により、これまでの経済活動の常識ともいえることが、大きく変わりました。
皆さんの医療機関ではどうでしょうか?
これまで以上に「ヒト」を確保するのが難しくなっていませんか?
10年後を見据えた改革で、検討されるであろうことを見ていきましょう
【働き方改革】
柔軟な働き方といえば、聞こえはいいかもしれません。しかし、発熱により、または子供の学校の休校により、「出勤できない」方が増加し、医療機関では人員割れを起こした状態で・・・つまり、通常よりも少ない人員で、これまでと同じ業務量をこなすことが求められています。特に資格職が多い職場ですから、「資格がないといけない業務」と「資格がなくてもよい業務」に振り分け、全職員でカバーしなければならない状況に追い込まれている医療機関も少なくないと思います。
単純作業はRPAを活用すればよいと思いますが、これまで業務分析を行ってきたことがない医療機関にとっては、このデジタル化・ICTかが大きなネックになってくる可能性があります。
なぜなら、一つ一つの作業工程が明確でなければ、「機械でできることか」「人がしなければならない作業か」区別がつかないし、協業することもできないからです。
また、テレワークやWeb会議等で、「場所」や「時間」を選ばなくてよくなりました。家族との時間が増えたり、家庭の中でも家事の分担や子育ての大変さが共有できるようになり、より豊かな時間が過ごせたと感じておられる方も多いのではないかと思います。個人情報保護法がこの6月に改正となりましたが、医療機関の個人情報といえば、「診療記録」だと思います。現在の電子カルテは外部アクセスを認めないものがほとんどです。しかし、このアクセスセキュリティを確保できると、医療機関にもテレワークが可能になってくるのではないでしょうか。
【デジタル技術の活用】
今でも取り組まれている方があるかもしれませんが、教育・人とのつながり・連携の形、などが大きく変わるのではないかと思います。
先日の全国連携実務者ネットワークでのセミナーでの報告でもふれましたが、「人生の大多数の時間は、地域の中で生活している時間」であり、私たち医療者も、「医療者であって生活者である」という話がありました。
繋がる方法は「対面」だけではありません。
Webによるつながりや、意見交換等を、「機械はにがてだから・・・」と避けては通れないように感じています。
オンライン診療についても、同様だと思います。
これから先、オンライン決済やオンライン資格確認、オンラインお薬手帳など、身近にたくさんの「デジタル技術」があふれてくると思います。
【地域医療構想】
「コロナ禍」において、「いい医療は大きな病院でなくちゃ」という地域の生活者の意識が変わりつつあると思います。我が家の後期高齢者2人もそうですが、ご近所の方にお会いしても、「大きい病院はどんな人が来ているかわからない」という話をお聴きするようになりました。また、「できれば行きたくない」「病気をもらうかもしれない」といって、受診を控えたり、こんな声を耳にしたりするようになりました。
・〇〇医療機関では入口で熱を測ってもらった。
・△△医療機関は、待合室にいっぱい人が待っていたけど、大丈夫かな。
・◇◇医療機関では、手指の消毒とマスクをしていなかったら、中に入れてくれなかった。しっかりした医療機関だね。
・診察ごとに、椅子やてすりなど拭き掃除をしていた。さすがだね。
これまでだと、待合室に人がいっぱいいるところは「人気の病院」「いい先生がいる病院」だけれど、少ない病院は「大丈夫やろうか?」といわれていましたが、今では真逆の評価になっています。
診察が終わってすぐに消毒薬等で拭き掃除をしていたら、「ばい菌のように扱われた」とクレームになっていましたが、今では安心材料の一つになっています。
このように住民の意識は変わってきています。受療行動も同様ではないでしょうか。今は「コロナが悪くなったら行く病院」「ちょっと具合が悪くなったら、電話で近くの医療機関に相談」という程度かもしれませんが、身近な方の話を聴いていて、変わってきたなと感じています。
また、入院が必要な手術などにしても、「しなくてもいいかも」「様子を見てもいいって先生が言われていた」と消極的な話も聞くようになってきました。
【withコロナの時代】
最後に「選択する未来2.0 中間報告概要」をご紹介します。
骨太方針2020を見ていくうえで、具体的に何を検討されているのか、わかりやすいと思います。
(出典:選択する未来委員会(経済財政諮問会議:内閣府)資料より)
骨太方針2020はまさしく「withコロナ」の中でどのように医療を繋いでいくか問われていると思います。
<参考資料>
〇内閣府:経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針2020)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/decision0717.html
〇内閣府:令和2年第10回経済財政諮問会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0708/agenda.html
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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