令和8年度診療報酬改定~在宅医療の主な変更点

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

令和8(2026)年度診療報酬改定の告示が令和8年3月5日に出され、在宅医療分野ではこれまで以上に「質」を重視した評価体系へと大きく舵が切られたように思います。
今回の改定を貫くキーワードは、「地域の中核としての在宅医療体制の強化」です。
従来のように、訪問件数や形だけの24時間体制を備えていれば評価される時代は終わりつつあります。
今回は、告示をもとに「在宅医療に関する主な変更点」を概観し、実務における留意点を整理します。

1.在宅緩和ケア充実診療所・病院加算 の再編

今回の改定で象徴的なのが、従来の「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」を大きく再編し、新たに「在宅医療充実体制加算」が創設されたことです。
名前が変わっただけでなく、点数は単一建物患者1人につき800点へ大幅に引き上げられ在宅医療機関に求められる役割そのものが再定義されました。

評価の中心は、従来の「緩和ケア中心」から転換され、
地域の重症在宅患者に対し、継続的かつ質の高い医療を提供できる体制整備 へと軸足が移っています。
緊急往診や看取り等の 実績要件は一段と厳格化 され、
「地域で本当に求められる在宅医療機関としての真価」が問われる内容となりました。

なお、詳細な施設基準や具体的な算定要件は、告示後に順次公表される留意事項(通知)で確定していく予定です。実務対応にあたっては続報の確認が必要です。

▶ 実務への示唆

看取り実績の少ない診療所では、これまでと同じ評価を維持することが難しくなる可能性があります。
医療資源の再配分、実績の可視化、地域の重症患者の受け入れ体制の構築 が一層求められるでしょう。

2.機能強化型在支診の二分化

今回の改定では、機能強化型在宅療養支援診療所(在支診)について、評価体系が「イ(高評価)」と「ロ(低評価)」の2区分へ再編 されました。これは、地域における24時間在宅医療提供体制をどれだけ“自院で確保しているか” を厳格に評価するという政策意図に基づくものです。

具体的には、

  • 自院で24時間往診可能な医師を確保している診療所    →「イ」区分
  • 外部委託(当番医契約など)への依存度が高く、
      院内での24時間対応を十分確保していない      →「ロ」区分

という形で分類され、点数も「イ>ロ」となることが告示により正式化されました。今回の改定は、“自院での一次対応を軸にした24時間体制”を高く評価する方針を明確化しています。
※外部委託の具体的な運用要件(事前説明・事前面談等)は次項で整理します。

▶ 実務への示唆

体制整備の遅れは加算の減収に直結するため、オンコール体制の再構築、医師配置の見直し、地域医療機関との連携再編 が急務となります。
今回の改定は、外部委託に依存した“形式的な24時間体制”を是正し、「自院の一次対応を軸に外部を補完的に活用する」方針が明確化した内容になっています。

3. 外部委託による24時間体制の見直し~“丸投げ”から“共同運用”へ

コロナ禍以降、在宅医療を行っている医療機関では、夜間・早朝の緊急時にコールセンターへ電話し、外部の往診医を派遣してもらう体制を取り入れていた医療機関がかなりの数、存在しています。実際、この仕組みによって救われた患者も多く、一定の役割を果たしてきたことは事実です。
しかし近年、中医協では 「24時間体制が実態を伴っていない」 との指摘が繰り返され、
自院が責任を持って対応する24時間体制」という本来の趣旨からの乖離が問題視されてきました。
特に、外部委託ベースの運用が進んだ結果、
「コールセンター依存の体制が本当に患者にとって安全・安心と言えるのか」
という問題意識が強まり、今改定に反映されています。

この背景を踏まえ、令和8年度改定では、外部委託による24時間対応の取り扱いが告示により厳格化 されました。施設基準の改正(告示第70号)や特掲診療料関連の改正(告示第71号)では、
24時間対応・緊急往診体制に関する基準の見直しが正式に位置づけられています。

前項イ/ロの区分は、二分化の方針を具体化するものとして、外部委託(コールセンター・往診代行)の運用要件が示され「告示プラス留意事項」で厳格化され、前項の役割分担をさらに明確化しています。
これによる、外部委託運用に関する「求められる運用要件(主な見直しポイント)」は次のとおりです。

主な見直しポイント:

・患者・家族への事前説明の義務化
  ⇒外部医師が対応する可能性・連携体制・判断プロセスなどを、事前に明確に説明する必要が出て
   きました。文書での説明・連絡先・判断プロセスを明記することが必要です。

・外部医師が往診する場合の必須要件
  ⇒自院の常勤医との事前面談、診療方針の共有、情報連携 が求められています。
   「外部医師が誰か、どこまで自院方針を理解しているか」を重視しています。
   実施者・日時・共有内容を記録しましょう!

・外部委託のみでは「24時間対応」とは認められない
  ⇒今回の改定は、「コールセンター=24時間体制の代行」とはなりません。
   「自院による一次対応+外部の補完が原則」という考え方を明確化しているように見えます。

この結果、コールセンター依存型の運用は評価が下がりやすくなり、
外部委託は「丸投げ」ではなく「補完的運用」
として位置づけ直すことが求められることとなりました。

▶ 実務への示唆

ファーストコールを自院で受ける体制への移行が必要
  ⇒評価維持のため、自院での一次受けと判断体制の構築は避けて通れません。

・外部医師との情報共有体制(診療方針、緊急対応フロー、記録の扱い)を再整備
  ⇒今回の改定は「外部医師と連携の強化・迅速な情報の共有化」を求める内容になっていると思います。

・24時間体制の“見せかけ化”は評価低下に直結
  ⇒丸投げ体制は明確に不利となるため、自院での責任範囲の明確化と、補完としての外部連携の
   再設計が必須となります。

4.在医総管・施設総管の算定要件が厳格化~軽症者中心の診療所は要注意~

今回の改定では、在宅時医学総合管理料(在医総管)および施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の算定要件が、制度開始以来最大規模で見直されました。

焦点となったのは、
月2回以上の訪問診療が本当に必要な患者に対して算定しているか?」
という適正化の観点です。
背景には、近年の中医協において「軽症者に対する形式的な月2回訪問 で在医総管算定を算定していないか?」という訪問診療への提供体制が一部で問題視されていたことがあります。
令和8年度改定の基本方針で示された「在宅医療の質の向上」 とも連動し、より医療依存度の高い患者に重点を置く評価体系へ転換されました。

主な見直しポイント

① 重症患者割合(20%以上)の必須化

月2回以上訪問する患者群の中で、重症患者(別表8-2・別表8-3該当)の割合が20%以上であることが算定要件として正式に追加 されました。この20%は短冊(個別改定項目)段階で示されていた数値であり、今回の答申で正式に要件化されました。
これにより、“なぜ月2回診療が必要なのか?”といった理由を患者の状態で説明できること が必須になります。

② 残薬確認・服薬管理の必須化

告示および関連項目の改正により、残薬の確認・服薬状況の把握が算定要件として位置づけられ、薬剤管理の重要性が評価として強化 されました。
在宅医療におけるポリファーマシー対策は、2024~2026年の中医協議論でも継続的な論点で、今回ついに“算定要件化”されたことになります。

③ 軽症者中心の月2回訪問は実質的に困難に

形式的な頻回訪問に対する問題意識が、要件の厳格化という形で明確に反映 されました。
この為、「軽症者中心の在医総管算定」 は制度上も評価上も難しくなり、訪問の必要性と医療依存度の明確化 が求められます。

実務への示唆

①患者構成比の分析は“今すぐ着手すべき”項目

重症患者割合20%の達成可否は、収入に直結してきます。実績データをとる仕組みが必要となるでしょう。

②訪問2回/月の“理由”が求められる時代へ・・・診療記録の整備

ADL低下、医療機器管理、嚥下・栄養管理、症状変動、など、医療依存度や重症度合いについて根拠を記録に残す必要があります。

記録の内容としては、以下のような内容が必要ではないでしょうか。
 ・訪問理由の明記  :急性増悪予防、疼痛コントロール、褥瘡処置、人工呼吸器管理、頻回吸引、
            終末期対応 等
 ・重症度の客観指標 :SpO₂、体温、脈拍、呼吸数、血圧、疼痛スケール(NRS)、
            浮腫/褥瘡スコア、嚥下スクリーニング、栄養指標(体重、BMI、摂取量)
 ・別表8-2/8-3 該当根拠:該当項目名を具体的に記録
 ・前回からの変化   :前回所見との比較(数値・写真・図表)
 ・今後1~2週間の予見されるリスク:増悪要因・急変リスク・再入院回避の見通し

今後は「どの患者に・なぜ月2回の診療が必要か」を、医師・看護師・薬剤師・ケアマネが共通認識として持てる体制づくりが求められます。

③服薬・残薬管理は「算定のための必須業務」になる!

地域薬局との連携、同時訪問の活用(訪問診療薬剤師同時指導料:300点)との組み合わせも重要になります。必要なことは・・・具体的な服薬治療ができる方法等を検討することになります。

  • 残薬数の実測:剤形ごとに「〇錠/〇包/〇本」を数えて記録
  • 服薬アセスメント:飲み忘れ頻度、誤薬の兆候、服用時間のずれ、嚥下困難の有無、副作用症状
  • 相互作用/重複投与の確認:お薬手帳・薬剤情報提供書・レセ薬歴を照合(確認元を明記)
  • 処方変更の理由と効果:中止・減量・時間変更等の医学的理由観察計画
  • ツールの導入:ピルボックス/一包化/服薬カレンダー/タイマー等の採用可否と指導内容

④軽症者中心の診療所は実質的に経営見直しが必要

利用者選定・訪問頻度・医療資源の再配分が必須となるでしょう。
重症化対応力・看取り力の強化が求められると予測されます。

医療機関側は「臨床判断と計画」が大事になりますし、薬局側は「薬学的管理と指導・残薬是正・服薬支援ツール運用」を互いに活用し、双方が記録し、整合性を保っていることも大事になりそうです。

5.在支診・在支病はBCP策定が必須に

近年、地震や豪雨・暴風雪、新興感染症の流行が相次ぎ、こうした有事においても地域の暮らしと医療を継続できる体制づくりが強く求められています。

在宅療養支援診療所・病院(在支診・在支病)は、24時間の連絡・往診や看取りの中核であり、災害・感染症時にも診療を止めないことが期待されています。在宅酸素・人工呼吸器・終末期などの在宅患者には、医療中断が即座に生命リスクに直結するため、「防災」だけでは不十分で、“診療を継続するための計画(BCP)” の重要性が明確になってきました。

この流れを受け、令和8年度改定では在支診・在支病の施設基準に「BCPの策定・定期な見直し」が追加されました。既存の届出医療機関には令和9年(2027年)5月31日までの経過措置(1年の準備期間)が設けられています。この内容は、“地域で24時間を支える主治医機能”を有事でも止めないため、BCPは努力目標から必須要件へと格上げされた、ということです。

▶ 実務への示唆
まずは厚労省の診療所版「BCP手引き・テンプレート」を用い、

  • 連絡体制
  • 代替往診
  • 入院受け入れ
  • 備蓄
  • 情報共有

これらの実施内容を文書化し、さらに連携型・地域BCPも視野に入れつつ、
  年次訓練 ⇒ 振り返り ⇒ 改訂のサイクルを回すこと
——ここまでを経過措置期間内(~2027/5/31)に完了させるロードマップを作り上げていく必要があるようです。

BCPは一度作って終わりではありません。
しかし、最初はテンプレートを埋めるだけでも十分ですので、まずは「誰が責任者か」「どの順番で作るか」だけでも院内で合意し、具体的な工程に落とし込むところから始めましょう。

6.連携対象の拡大と新たな多職種連携評価

往診時医療情報連携加算の対象拡大

通常の在支診も連携対象に含まれ、地域内での在宅医療の協働体制構築がより進む見込みです。
具体的な適用要件については、今後示される告示・通知で確認していく必要があります。

医師+薬剤師の同時訪問評価が新設

在宅医療におけるポリファーマシー対策及び残薬対策を推進する観点から、医師及び薬剤師が同時訪問することについて、新たな評価が新設されました。ポリファーマシー改善に向けて患者さん宅で服用状況や薬剤の見直し等を一緒に行うことが推奨されているようです。

(新) 訪問診療薬剤師同時指導料   (6月に1回)   300点
     ⇒訪問診療時に訪問薬剤師(居宅療養管理指導実施)が同行した場合

(新) 訪問薬剤管理医師同時指導料  (6月に1回)   150点
     ⇒居宅療養管理指導料を算定している訪問薬剤師の訪問時に医師が同行していた場合

これにより、医師と薬剤師がそれぞれ別々に訪問していた従来の運用から、“その場で情報共有し合う”連携型の服薬管理へ移行することが期待されています。
実務的には、薬局と「同時訪問をどう運用するか(対象者・頻度・記録方法)」を早めに取り決めておくと取り組みやすいと思います。

7.退院直後の栄養指導が新設

入院中に栄養管理の必要性が高い患者が、安心・安全に在宅生活へ移行し、その後も療養を継続できるよう支援する観点から、退院直後(1か月以内)に入院医療機関の管理栄養士が訪問して指導する場合の評価が新設されました。

前回の改定で、「栄養療法(食事)」がとても大事であることが評価され、がん患者や摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者や低栄養状態にある患者に対する栄養指導が認められてきました。
入院時に栄養状態を確認すると多くの高齢者が低栄養状態にあることが議論されたのも記憶に新しいことだと思います。

今回の改定ではさらに一歩踏み込んで、退院直後(1か月以内)に入院していた医療機関の管理栄養士が患者さん宅を訪問し、継続的な栄養指導を行う場合の評価が新設され、在宅移行の支援が強化されたものです。

 (新) 退院後訪問栄養食事指導料   (1回につき)   530点

退院後に患者さんの自宅で生活の状況・環境をみることができるということは、在宅への移行についてとても重要なことだと思います。

8.へき地診療所の在宅医療要件が緩和

在宅医療担当医の常勤要件が、へき地医療拠点病院等に勤務する場合に限り緩和されます。
医療資源の乏しい地域で在宅医療を継続的に提供できるようにするための措置です。
該当する地域は、告示・通知をよく確認するようにしてください。

おわりに:今回の改定が投げかけるメッセージ

今回の改定は、在宅医療の提供方法を多方面からの要件の見直しと評価体系の再構築することで推進していく内容です。個別には細かな制度改正の集積に見えますが、全体として「量から質へ」、そして「主治医機能と地域連携の実効化へ」という明確な方向が示されました。

在宅医療に求めているのは、地域の“主治医機能”としての質・実績・連携を、実態に基づいて証明し続けることです。とりわけ、次の指標は今後の評価を左右します。

  • 看取り件数
  • 重症患者割合
  • 緊急往診の実績
  • 多職種連携の実績(医師・薬剤師・訪看 ほか)
  • 24時間対応の“実態”(外部委託の要件適合を含む)
  • BCP(事業継続計画)の整備と運用

今回の改定内容を点数の増減として捉えるだけでは不十分です。
「誰に・なぜ・どのように月2回の訪問診療が必要か」「薬剤管理をどう機能させるか」「24時間体制をどう運用・記録するか」「有事でも止めない仕組みをどう作り上げていくか」──この4点を中心に、自院の在宅医療提供体制を工程表に落として見直す絶好の機会と捉えていく必要がありそうです。

<参考資料> 令和8年3月5日確認

■厚生労働省/令和8年度診療報酬改定について こちらをご確認ください。

  第3 関係法令・通知等⑴ 共通     ※一部掲載準備中
    ○.算定告示・施設基準  医科点数表(別表7)

  なお、説明会資料はこちらから⇒⇒⇒令和8年度診療報酬改定説明資料等について
     ※YouTubeでの説明動画もあります。ご参照くださいませ。

■厚生労働省/中医協(総-1)「個別改定項目について(令和8年2月13日)」

 

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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