【令和2年度診療報酬改定】在宅医療と訪問看護について

長 幸美

アドバイザリー

令和2年度診療報酬改定の中で、「働き方改革」とともに、「地域医療構想」の中で大きな役割を果たすと考えられているのが「在宅で暮らすことをどのように支えるか」ということだと思います。
在宅における医療では、その体制も使用できるものも医療機関の中と同じようにはいきません。また、先生方や訪問看護師さんが担う役割、求められることも変わってくると思います。地域医療構想の中でも、それぞれの都道府県がその重要性を訴えています。

今回はその役割の一つである「在宅医療と訪問看護」について考えてみましょう。
大まかな概要は次のスライドで示されている通りです。
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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

「ほぼ在宅、時々入院」ということを考えると、外来~入院その後の在宅復帰への支援についてもとても大事になってきますが、「地域の中で暮らし続ける」ことを医療がどのように支えていくのか、というところが今回の改定の中でもより色濃くなっているように思います。また、地域で暮らす方は、高齢者ばかりではありません。精神障害を持っている方も、小児の方も、地域の住民として、受入れていくこと、医療者がどのように支えていき、「安心・安全な暮らし」をサポートできるのか、より充実した在宅医療や訪問看護が求められているといえるでしょう。

【在宅患者訪問診療料(Ⅰ)2】
前回の改定で、専門外の診療が必要な場合に6か月に限り他の医療機関に訪問診療を依頼することができるようになりました。先生方はどのくらいこの仕組みを活用されているでしょうか?
専門的な医学管理など、他の医療機関にお願いでき、良かった半面、慢性疾患を複数持っている場合など、6か月を超えて訪問診療が必要な場合などがあり、今回の改定では条件付きではありますが、かかりつけ医(主治医)とそのほかの医療機関との情報共有を行い、6か月を超えて訪問ができるようになりました。
先生方の得意分野を生かした在宅医療の提供ができるようになってきたのではないかと思います。

【質の高い訪問看護について】
在宅医療の中で、利用者(住民)が安心して在宅療養を進めていくためには「訪問看護」の役割はとても大きいと思っています。
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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

◆機能強化型訪問看護ステーションの人員配置の見直し
強化型訪問看護ステーションとしてはこれまで、常勤の看護職員の配置数により、3つに分類されていました。大きな変更点は2点です。
1点目は、機能強化型1.2の場合、常勤の看護職員のうち1名は常勤換算でよいこととされました。子育て世代や介護世代のパート勤務の方々の活躍の場が広がるのではないかと期待しています。
2点目は、全訪問看護スタッフのうち、看護職員の割合が6割以上という規定が加わりました。リハビリテーション職員の割合が多い訪問看護ステーションについては、少し苦しいことになりそうです。
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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

もともと、この機能強化型訪問看護ステーションは、居宅介護支援事業所や特定相談支援事業所等を同一敷地内にもち、ターミナルケアや重症児の受入れを積極的に行う体制の評価、地域への情報提供や相談支援・人材育成のための教育研修等を記載され、作られたものです。このため、実績として、重症度の高い利用者の受入れやターミナルケアの実施件数等、ハードルが高いものとなっています。

一方、医療機関においては、このような体制の強化は行われていませんでした。
今回の改定において、医療機関からのより手厚い訪問看護提供体制を評価する加算として、
(新) 訪問看護指導体制充実加算  150点が新設されました。

<施設基準>
1. 24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保
2. 文書により患者及び家族に情報提供
3. 以下のア~カのうち少なくとも2つを満たしていること

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

※この中で、400床以上の大病院に関しては、アの他2項目以上を満たすことが必要となっています。
大きな病院では、それだけ質の高い医療提供ができることに鑑みての基準であると考えます。

◆小児への訪問看護に関しましては、「自治体」及び「学校等」との情報共有とそれぞれに配慮が必要であることがあり、それぞれに情報提供することが訪問看護情報提供療養費の算定対象の中に加えられました。

◆専門性の高い看護師による同行訪問・・・訪問看護基本療養費(Ⅰ)のハ
これまでは、人口肛門・人口膀胱に関しては、皮膚障害を伴わない場合、専門性の高い看護師による同行訪問の対象ではありませんでしたが、今回の改定で、皮膚障害を伴わない合併症の場合も、同行訪問の対象となりました。

◆訪問看護における特定保健医療材料について、「膀胱瘻用カテーテル」「交換用胃ろうカテーテル」「局所陰圧閉鎖処置用材料」「陰圧創傷治療用カートリッジ」も対象材料とされました。

◆精神障害を有する者への訪問看護について
精神障害を有する方も入院⇒在宅へという流れは変わらず、進められているところです。適切効果的な訪問看護を推進する観点から、以下の三点について、見直しが行われています。

1. 訪問看護記録・報告書、レセプトへの「GAF尺度による判定値」を記載する。
⇒これは、精神科訪問看護・指導料の算定においても、同様の記録が必要です。
2. 訪問職種による区分の見直し・・・作業療法士、精神保健福祉士が追加になりました。
3. 複数名精神科訪問看護加算の見直し・・・指示書への記載方法が見直しとなっています。
⇒これに関しては、様式集を見直ししてください。
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(出典:令和2年度診療報酬改定告示資料(様式1)より)

◆医療資源が少ない地域における訪問看護については、2つ以上の訪問看護ステーションが連携することにより、24時間体制を確保した場合の対象地域とされました。
◆同一建物居住者に対する複数回・複数名の訪問看護加算について、評価体系を見直しとなっています。これにより、同一建物内の考え方が入ってきました。

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

(算定例)

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◆小規模多機能型居宅介護等への訪問診療は、開始前30日以内訪問の縛りがなくなり、退院後から小規模多機能の宿泊サービスを利用開始した場合、訪問診療が入れるようになりました。

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

◆在宅患者方も褥瘡管理指導料については、管理栄養士も含む医師・看護師等の多職種の共同してカンファレンス等の要件がありましたが、当該医療機関以外の管理栄養士との連携でも算定ができるように見直されています。イメージ図を参照してください。

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料(在宅医療と訪問看護)より)

 

以上が、在宅医療及び訪問看護関連の改正点となります。
人員配置の部分では少し緩やかになり、基準を取りやすくなっていると思います。別の視点からみると、労務管理等の必要性が高まってきていると思います。人材がどのような研修を受け、資格を取っているか、その方々が常勤配置する必要があるのか、常勤換算でよいのか、
常勤換算の場合は、カウントに計上するために勤務日数・時間等の縛りがあるか・・・など、しっかりと管理・マネジメントする必要があります。

地域の中で暮らし続けるということは、医療機関内にはない制約が出てきますが、その中で住民が安心して暮らし続けることができるために、我々に何ができるのか、しっかりとした対応については、加算という評価がついてきていますので、まずは、どのような立ち位置で、何をするのか、というところを整理してみてください。

<参考資料>
〇令和2年度診療報酬改定の概要(在宅医療・訪問看護)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605492.pdf

※Web説明会の動画もご覧ください。
https://www.youtube.com/user/MHLWchannel

※様式集
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603917.pdf

医業経営支援課

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