Q&Aより:「常勤換算」ってどう考えたらいい?

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

施設基準等でよく出てくる「常勤換算による」という言葉、皆さんはどのように理解されているでしょうか?
先日、「適時調査で、人員基準を満たしていない」といわれたが、「職員数はいるのに、どうしてですか?」と質問がありました。話をよく聞いてみると、人員数としては満たしているが、常勤換算数に直すと不足しているということが判明し、自主返還を行うように通知書類が送られてきたとのことでした。

今回は、この施設基準上とても大事になる「常勤換算」について解説したいと思います。

常勤換算方式とは?

厚生労働省が定める施設基準(入院基本料、入院料等の加算、リハビリテーション料などの算定要件)において、「必要な職員配置数を満たしているか」 を確認するための計算方法です。

常勤職員(1人分)=40時間/週当たり」を基準とし、非常勤職員の勤務時間を組み合わせて「常勤換算1.0人」として数える仕組みです。
つまり、「週○時間働いているか」で割り算して職員数を算定します。

基本的な考え方(計算式)

常勤職員は、そのまま「1.0人」とカウントします。

非常勤職員については、「勤務時間 ÷ 常勤の所定労働時間(通常40時間/週)」で計算します。
例えば・・・
  ・Aさん:週20時間勤務 →  20時間÷40時間/週= 0.5人
  ・Bさん:週30時間勤務 →  30時間÷40時間/週= 0.75人

つまり、 各職員の勤務割合を合計し、人員基準を満たすかどうかを判断します。

注意すべきポイント

施設基準等を満たしているかどうか、「常勤換算」する場合のポイントを整理しておきましょう!

原則、週40時間(労働基準法に基づく所定労働時間)となります。

ただし、勤務医などで「36時間」や「32時間」を常勤扱いとする場合もあり、通知で細かく定められていますので、施設基準をよく確認するようにしましょう!

ダブルカウントは不可

1人の職員が複数の部署勤務している場合は、実際の勤務時間に応じて按分する必要があります。
例えば・・・
 ・午前中は外来勤務(4時間)で、午後から病棟勤務(4時間)をしている場合
   ⇒外来0.5人、病棟0.5人
 ・一人の薬剤師が毎日2時間のみ病棟薬剤師として働く場合
   ⇒病棟薬剤師0.25人
 ・外来看護師が、デイケアで健康管理(1日約1時間)をしている場合
   ⇒デイケア看護職員 0.12人               /等です。

また、病院職員が関連の介護施設等で勤務する場合も、実際の勤務時間に応じて按分します。

夜勤や宿直の扱い

「常勤換算」では通常の勤務時間でカウントし、夜勤専従の場合は週労働時間を基準に換算します。

特定職種の要件

看護師、薬剤師、リハビリ職種など、それぞれに「常勤換算○名以上配置」などの基準があるため、職種ごとに計算する必要があります。
また、中には、1名以上は常勤専従が必要・・・等の要件もありますので、注意しましょう!

具体例

例えば、施設基準で「専任の常勤換算で2.0人以上の看護師が必要」とされる場合:
 ・常勤看護師 :1人(1.0人換算)
 ・非常勤看護師:週20時間 × 2人(0.5人 × 2 = 1.0人換算)
  ⇒合 計  : 2.0人 → 基準を満たす。

実務での留意点

実際に勤務している時間ではなく、勤務表や雇用契約書に基づいて算定することが必要となります。
つまり、雇用契約上「4時間で3日間の勤務」で契約している場合は、週12時間として常勤換算します。

定期的に職員の勤務状況を確認し、基準割れ(退職や勤務時間減少による不足)に注意しましょう。
常勤換算の結果が基準を下回ると、算定していた診療報酬が返還対象になるリスクがあります。

他の事業所・部署での勤務がある場合は「勤務表で分ける」や「日報に明記する」など工夫が必要です。

まとめ

常勤換算方式は「職員の勤務時間を合計して、常勤1人分に換算する方法」であり、施設基準をクリアするための必須ルールです。

この勤務時間については、雇用契約上の時間数が重視されますので、施設基準の管理を行う事務職員さんはそれぞれの契約時間(例えば、1日〇時間週〇日勤務、等)を把握する必要があります。
病棟の基準等については、勤務表(様式9号)により自動計算されますので、勤務予定及び実績を毎月確認されることをお勧めします。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP