コラム de スタディ

2018.09.06.
定年前(無期)と定年後(有期)の労働条件の相違の違法性

今回、紹介する判例の特徴です。

運送事業に従事する定年後有期雇用契約の嘱託社員と、正社員との間の労働条件について、精勤手当、時間外手当(精勤手当が算定基礎に含まれていない)の相違(不支給)を労契法20条違反の不合理な相違と認めた最高裁の判決です。

 

■長澤運輸事件 最高裁 平成30年6月1日判決

 

【事件の概要】

正社員と嘱託社員で就業規則・給与規程が異なっており、正社員のみに支給されているものがあった。

①能率給、②職務給、③精勤手当、④住宅手当、⑤家族手当、⑥役付手当、⑦時間外手当(超勤手当)、⑧賞与

これらの点が不合理な労働条件の相違に当たるとして、労契法20条に違反すると主張した。

 

【結果】

③精勤手当、⑦時間外手当は不合理といえる。

①能率給、②職務給、④住宅手当、⑤家族手当、⑥役付手当、⑧賞与については、相違が不合理なものとはいえない。

 

【判断】

精勤手当

皆勤を奨励する手当。正社員、定年後再雇用された労働者であろうとその必要性に相違はなく、「皆勤という事実に基づいて支給されるもの」のため、定年後再雇用された労働者にのみ支給しないのは不合理といえる。

時間外手当

正社員の時間外手当には「精勤手当」が計算の際に含まれる一方、定年後再雇用された労働者の時間外手当には含まれていないため、その点について不合理といえる。

 

①能率給・②職務給

定年退職時の基本給より上回っていること。能率給・職務給は支払われないが、歩合給(能率給の係数の約2~3倍に設定)が支払われる。

嘱託乗務員の基本賃金を増額し、歩合給に係る係数の一部を嘱託乗務員に有利に変更している。

⇒正社員と異なる賃金体系を採用するにあたり、職種に応じて額が定められる職務給を支給しない代わりに、基本賃金の額を定年退職時の基本給の水準以上とすることによって収入の安定に配慮するとともに、歩合給に係る係数を能率給よりも高く設定することによって労務の成果が賃金に反映されやすくなるように工夫している。

さらに、老齢厚生年金が受けられること、老齢厚生年金の支給開始まで2万円の調整給が支払われていたことから不合理ではない。

④住宅手当・⑤家族手当

定年後再雇用された労働者に対しては現役世代ほど必要性がなく、老齢厚生年金の支給も受けることができるため不合理ではない。

⑥役付手当

役付でない以上支払わないのは不合理ではない。

⑧賞与

既に退職金を受けていることに加え、老齢厚生年金の支給も受けている。ほかの手当の不支給を含めても、賃金の総額は定年退職前の79%程度なため不合理とは言えない。

 

【ポイント】

・本事件は、労契法20条の〔その他の事情〕を考慮した結果となっています。

定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること等を考慮すると、定年退職後の継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理であるとはいえない、と本事件では判断しています。

また、定年退職後の継続雇用において職務内容等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われていること、事業主が嘱託乗務員について正社員との賃金の差額を縮める努力をしたこと等からすれば、嘱託乗務員の賃金が定年退職前より2割程度減額されたことは不合理とはいえず、賃金に関する労働条件の相違が労契法20条に違反するとはいえない、と本事件では判断されました。

 

人事労務課

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