【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】平成30年度診療報酬改定の基本方針

長 幸美

アドバイザリー

<参考>【速報】平成30年度診療報酬改定資料 答申出ました!

平成29年12月13日の中医協及び社会保障審議会医療部会において、「平成30年度診療報酬改定の基本方針」が発出されました。今まで様々な議論が交わされてきましたが、いよいよ第2段階も終わり、論点の抽出や整理などを終えて、具体的な配分の審議の段階に入ってきました。

「今更、基本方針かよ・・・」と思われる方も多いかと思いますが、今一度、どのような方向性で改定が行われていこうとしているのか、整理してみましょう!
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出典:中医協資料(20171213)平成30年度診療報酬改定の基本方針(概要)

 

今回の改定も、前回改定と同様に「基本的認識」と「4つの視点」をもとに改定の基本方針が作られています。

今回の改定も「地域医療構想を推進する改定」「地域包括ケアシステムの構築」をテーマとされ、2025年問題(団塊の世代が75歳超)、2040年へ向けた高齢化(団塊ジュニアが60歳超)に向けて、どのように医療を確保するか、生活を確保していくかということが課題となり、「少子高齢化問題」が根底にあることは、皆さんご理解いただいていると思います。

また、「人生100年時代」を安心して生きていくために「どこに住んでいても、適切な医療や介護が受けられること」が求められ、「地域の実情に応じた対応」「地域の中で考えて」作り上げていくことが求められています。

今回の平成30年診療報酬・介護報酬の改定は、6年に1度の同時改定であり、団塊の世代がすべて75歳以上の高齢者となる2025年に向けて実質的に最後の同時改定となります。このため、今回の改定では、医療機能の分化・強化、切れ目のない医療と介護の役割分担とシームレスな連携を着実に進めることがとても重要になってきます。

また、国民皆保険制度を堅持していくためには、制度の見直しや消費税率のひき上げによる財源も利用しつつ、給付・負担の両面にわたる国民の理解も必要となります。今後の医療ニーズの変化や生産年齢人口の減少なども踏まえつつ、医療現場の人材確保や働き方改革の推進も必要になってきます。

【改定の基本的視点と具体的方向性】
<重点課題>
地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進>

① 地域包括ケアシステムの構築のための取り組みの強化
⇒医療機関間の連携・・・病病連携・病診連携・診診連携)、
⇒医科歯科の連携・・・・周術期口腔管理、等
⇒病診薬の連携・・・・・服薬管理、等
⇒地域関係職の連携・・・栄養士(栄養指導)、介護・障害保健福祉、母子保健児童福祉、等の多職種連携
⇒緊急時・救急時の対応・・・医療機能の分化と確保
⇒介護施設入所者等に対する適切な医療提供や口腔管理、リハビリテーション等

② 「かかりつけ」機能の評価
⇒かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能評価

③ 入院医療の評価
⇒医療機能や患者の状態に応じた評価・・・医療機能の分化・強化、連携を推進
⇒入院基本料の考え方が、医療機能ごとに一本化し、加算・減算による評価・見直しになる方向で検討されています。

④ 外来機能の機能分化、重症化予防の取り組みの推進
⇒大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進・・・大病院受診時の定額負担見直し
⇒ICTの活用・・・生活習慣病の管理、合併症の予防・早期治療の取り組み推進

⑤ 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
⇒住まい・住まい方等に応じた効果的・効率的で質の高い訪問診療・訪問看護、等

⑥ 看取り・・・人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインの普及
⇒住み慣れた自宅で余生を送りたいという希望は多いようですが、医療機関や介護事業所がどのような支援をすることが望まれているのでしょうか?

<新しいニーズにも対応でき安心安全で納得できる質の高い医療の実現・充実>
今回「納得できる」という一言が入っています。国民の安心・安全を確保する観点から、第三者評価やアウトカム評価など、客観的な評価を示し、適切な情報に基づき納得して主体的に医療を選択できるようにしていくことが重要であるとされています。

① 重点的な対応が求められる医療分野の充実
⇒緩和ケアを含む質の高いがん医療
⇒認知症
⇒精神科医療・・・地域移行・地域生活支援の充実
⇒難病患者
⇒小児、周産期、救急医療の充実
⇒歯科医療・・・口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮
⇒先進的な医療技術の評価・・・医薬品、医療機器、検査等、イノベーション

② ICTを含む新たな技術の導入、データ収集・利活用の推進
⇒ICTの有効活用・・・技術革新を取り入れ医療の質を向上
⇒データを収集・利活用し、エビデンスに基づく評価を推進

③ アウトカム評価・・・リハビリテーション

 

<医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進>

医療従事者の厳しい勤務環境が指摘される中、医療安全確保や地域医療の確保にも留意しつつ、医療従事者の負担軽減を図り、専門性を発揮しなおかつ柔軟な働き方ができるように改革を推進することが必要です。

① チーム医療の推進・・・業務の共同化、移管等の勤務環境の改善
⇒多職種協働により、勤務環境を改善

② 業務の効率化・合理化
⇒保険医療機関や審査支払機関の業務を効率化・合理化・・・審査の機械化・基準の届出・報告等を簡略化

③ ICT等の将来の医療を担う新たな技術の着実な導入
⇒ICTの導入により、遠隔診療等の適切な活用など

④ 地域包括ケアシステム構築のための多職種連携による取り組みの強化
⇒住み慣れた地域での療養生活を医療機関・介護事業者・歯科医師・薬剤師・栄養指導などを通して、適時適切に提供する
⇒患者が安心・納得して入退院し、住み慣れた地域での生活を支援する

⑤ 外来医療の機能分化・・・病院の規模により役割の明確化を図る
⇒大病院受診時の定額負担の見直し、大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進

 

<効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上>
国民皆保険制度を維持するために、医療の効率化・適正化を図る視点からも見直しが必要です。
① 薬価制度の抜本改革の推進
⇒高額の新薬や不適切な保険薬の使用などの指摘がありました。これらを踏まえ、薬価制度の見直しを行うということです

② 後発医薬品の使用促進
⇒後発医薬品の使用について、「経済財政運営と改革の基本方針2017」での目標を実現するための取り組みを推進する

③ 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
⇒(再掲)

④ 外来医療の機能分化、重症化予防の取り組みの推進
⇒(再掲)

⑤ 費用対効果の評価
⇒試行的導入の対象となっている医薬品・医療機器について検討

⑥ 効率性等に応じた薬局の評価の推進
⇒服薬情報の一元的・継続的な把握等の本来の役割が期待される
⇒収益状況・効率性も踏まえ、門前薬局・同一敷地内薬局の評価の適正化

⑦ 医薬品・医療機器・検査、等の適正な評価
⇒市場実勢価格を踏まえた適正な評価を行うとともに、治療効果が低くなった技術については置き換えが進むように適正な評価について検討

以上が、重点課題を含む4つの視点です。今までの改定を踏襲していること、これからの地域包括ケアシステムの構築に対し、更に「連携」「多職種協働」がキーワードとなることがお分かりになるでしょう。

最後に将来を見据えた課題としては、少子高齢化により、生産年齢人口の減少に対し、将来にわたって「どのように医療の提供体制を確保するのか」を考える必要があり、ICTの活用や医療連携、医薬連携等については、引き続き検討が求められてくるでしょう。

また、介護保険制度も含め、重症化予防を含む「予防」や「健康づくり」、「セルフケア」の推進が図られる必要もあり、医療・介護ともに利用方法や制度についても理解を求めていく活動も必要であると結ばれています。

医療機関のみならず、保険者・行政機関、企業などが一体となって、環境整備を行う必要が期待されています。

 

<参考資料>
平成30年度診療報酬改定の基本方針(概要):中医協資料(20171213)
平成30年度診療報酬改定の基本方針:社会保障審議会_医療部会(20171211)

経営支援課

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