【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】歯科医療(その2)

長 幸美

アドバイザリー

平成30年度診療報酬改定は「地域包括ケアシステム構築」「地域医療構想の構築」のために非常に重要だという話を幾度もしてきましたが、今回の内容は、「歯科医療における地域包括ケア」や「重症化の予防」について協議が進められておりますので、順番に見ていきましょう。

地域の歯科診療所として、避けては通れない状況になってきています。ぜひ一度ご覧ください。

まずは歯科診療の需要の将来予想のイメージを復習しましょう。
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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

従来の歯科診療の需要は、う蝕や義歯の治療が主になり、「治療中心型」だったといっても過言ではないと思います。
しかしながら、高齢化が進むにつれて、「口腔機能の管理」「口腔機能の維持・改善」に主眼が置かれるようになってきました。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

この辺りを頭の中に置きつつ、論点の整理を読み解いていきましょう。

 

【地域包括ケアシステムの構築の推進】
ひとつ目の課題は、「医科歯科連携」です。
「周術期の口腔機能管理」として、年々増加傾向にあります。やはり手術の加算とし手評価されたことにより、徐々に消化器系の手術前等に行われることが多くなっているようです。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

医科歯科連携に関しては、在支診・在支病から歯科訪問診療の依頼や相談が多くなっています。依頼の理由は、患者からの歯科疾患に関する相談とともに「摂食・嚥下障害」に関する相談が多くなっており、その対応についても検討されています。

また、骨粗しょう症の薬剤の副作用で、顎関節の骨壊死が報告され、注目を集めています。
糖尿病診療ガイドラインでは、糖尿病と歯周病の関係やリスクなど、連携をすることにより、予防することが望ましいとされています。

地域の歯科診療を支えるものとして、「地域歯科診療支援病院」がありますが、生活の中で、「食べる」ということに対する努力を行うことを歯科の観点からも評価されているのではないかと思われます。

病院での「口腔機能管理を推進する」観点から、地域歯科診療支援病院歯科初診料の施設基準について、周術期口腔機能管理の実績を考慮する等、見直しを検討してはどうか、という意見が出されています。

地域包括ケアのかなめとなる「かかりつけ医」について、歯科医療機能の観点から見てみましょう。

まず、平成27年に出されて「かかりつけ歯科医」の定義と、役割について以下のように整理されています。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

この「かかりつけ歯科医」のイメージが下記のスライドになります。

ポイントは次の3点です。
予防活動を通じた地域住民の口腔の健康管理
入院時の口腔機能管理・・・これは訪問歯科診療を行いつつ連携していく
在宅の口腔機能管理・・・医師・看護師、ケアマネージャとの連携をしていくこと

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

地域の中で生活を支えていく中では、地域の関係者との連携体制を確保することは重要です。また、口腔疾患の重症化予防や口腔機能維持のため、継続的な口腔管理・指導が必要となることもわかってきています。これらの観点から、かかりつけ歯科医機能の充実や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しを検討し、支援体制を強化することを課題とされています。

「連携」と「予防」このキーワードは歯科医療においても重要なキーワードとなるようです。

 

【歯科外来診療における院内感染対策】
歯科の外来診療については、日常的に唾液もしくは血液に触れる環境下で多くの機器を使用しています。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

患者ごとにすべての機器を取り換える必要があり、耐熱性のある器具については、オートクレーブにかけるなど、洗浄・滅菌する必要があります。

多くのクリニックでは、使いまわしをしているクリニックが多く、感染源になる恐れもあるとして、「使用したハンドピースは患者ごとに交換し、オートクレーブ滅菌すること」が強く勧められている状況です。

診療報酬の評価でも、歯科外来診療環境体制加算として、「患者にとって安全で安心できる歯科医療の総合的な環境整備」について評価されています。
今回はこの評価体系を見直し、以下の通り改定するような案が出されています。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

【口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応等】
口腔疾患の重度化予防に関しては、歯科疾患管理料で評価されています。う蝕や歯周病等の指導管理については限定的に指導料や検査料等で評価が行われています。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

中でも、小児の口腔に関しては変化が大きく、形態の変化を伴うものがあります。このように発達過程に合わせた評価と口腔機能管理が必要になってきます。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

また、高齢者については、「噛めない」「呑み込めない」という状況が起こり、口腔機能の低下についてアプローチが必要になります。

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出典:中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」より

 

これらに関し、状況には限定的な条件があるものの、診療報酬の中で、評価がつけられてきました。
これが、「舌圧検査」や「有床義歯咀嚼機能検査」です。
また、歯科診療中の医学管理及びモニタリングを評価した点数配分もあります。

しかしながら障碍者への対応や治療など、まだまだ検討すべき事項はあり、特別な管理や対応を行うことに対し、評価をつけていくことが検討されています。

ライフステージに応じた口腔管理を推進することが、地域包括ケアの中では求められ、このような意味でも「歯科医師」「歯科診療所」に求められる役割は大きくなってきています。地域に住まう人々をどのように支援していくのか、どのような立ち位置で診療を進めていくのか、問われているようにも思います。

 

<参考資料>
中医協資料(20171206)「歯科医療(その2)」

経営支援課

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