【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】入院医療(その6)~療養病棟、有床診療所等~

長 幸美

アドバイザリー

介護療養病床は平成29年度末までとされ、介護医療院への移行を念頭に6年間経過措置の延長が決まりました。まだまだ点数配分や細かな内容は決められていませんが、今後どのようにしていくのか、岐路に立たされている病院さまも多いのではないでしょうか?

療養病床は患者の適切な処遇を図る観点から、平成13年の医療法改正により、「主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床」として位置付けられ、これまで長期入院患者に対するサービスにおいて一定の役割を果たしてきました。

特に介護療養病床については平均在院日数が長く、死亡退院が多くなっています。
しかしながら、そもそも「病院は治療を行い自宅へ退院させるための中間施設」としての役割があります。
このため、「日常的な医学管理」や「看取り・ターミナル」等の機能と、「生活施設」としての機能とを兼ね備えた新たな介護保険施設として、創設されたものが「介護医療院」ということになります。

出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

基本的には療養型病床は、中間施設としての役割を求められていましたが、急性期後の療養目的の方が多くなっています。しかし、退院先ついては死亡退院が最も多い状況がうかがえます。

出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

昨年後半より、医療区分の取り方などが問題になり、集団的個別指導などで再指導されるケースが多くなってきています。自主返還事例もあるように聞いています。次期改定に向けてこの医療区分の考え方等が見直されることを視野に入れて、対応を考えてく必要があると思います。

出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

また、慢性期の病棟におけるデータ提出についても議論されています。
今現在、療養病棟では、医療区分・ADL区分が毎日測定され、レセプト請求の際に提出されていますが、データ分析には十分に活用されておらず、データ提出は8%にとどまっています。

データ提出は、厚生労働省が実施する「DPC導入の影響評価にかかる調査」に準拠したデータを継続して提出されることを評価したものです。
提出するデータは、診療録の情報、診療報酬請求の情報、施設情報があります。
一般病床7対1、10対1の病床や地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟の入院料を算定する場合は一部要件化されています。その中で、療養病棟も対象病棟とされていますが、今後要件化することが検討されています。提出するデータは次のスライドのように若干違いがあります。

出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

慢性期の患者に特徴的な症状・状態を図る項目として、「医療区分における状態」や「主治医意見書における状態」などあげられていますが、これらの項目をもとに、ケア時間の分析等に使用されています。

有床診療所については、九州は非常に病床数が多くなっています。人口十万人に対し185床程度の病床が全国平均ですが、九州は各県大幅に上回っています。
この中で過去30日間に行われた医療行為では血圧脈拍の測定が一番多く、そのほかは採血・検体採取、薬剤の処方となっており、入院の理由としてはADLが低下し、退院後の生活様式の変更や必要な介護を充分に提供できる状況ではないというようなことが、主たる理由となっています。
しかしながら、地域で果たす役割として、介護施設へのつなぎや専門医療、在宅医療の後方支援としての機能を担っているなど、重要な側面をもっているものと思われます。

これらを踏まえたうえで、現時点での課題としては以下のスライドの通りとなっています。
全般的に言うと、地域包括ケアの要として運用するか、専門性を高くしていくのか、という選択肢が考えられます。

 

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出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

また、在宅の後方支援としての役割を考えると介護ケアサービスの提供の見直しや入院が長期化しやすい高齢者の在宅復帰機能強化加算等の見直しなどが論点となっています。在宅で療養している患者が在宅の主治医と有床診療所の間で協力し、「看取り」になったケースなど、最後を入院で看取った場合の評価も検討されている状況があり、有床診療所へ求められているものが、徐々に明確になってきているようです。

障害者施設等入院基本料の算定病棟については、重度肢体不自由とされている患者の中で、身体障害者1級程度の患者が一定の割合を示しているところから、前回の改定において、脳血管疾患の患者に対し包括請求が導入されました。
特殊疾患療養病床、療養病床との整合性を図られた結果と解釈できます。
このあたりの評価がどのように変化していくのか、注目していくところだと思います。

 

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出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

入院食事療養費については、前回市販の流動食を提供した場合に費用調整されることになりました。
また、給食委託業者に関する実態調査の結果も踏まえ、病棟栄養管理業務や給食管理、栄養指導の実施時間が取れないなどの問題が生じているという調査結果などがあり、今後病院側の管理栄養士の業務内容等の精査を行われて、調整されていくのではないかと思われます。
一部負担金については、来年4月以降、一部の入院時食事療養費については、自己負担額が費用の額を超えることとなるため、次のスライドのように見直しが行われるもようです。

 

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出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

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出典:中医協資料「入院医療(その6)」20171117

 

【参考資料】
入院医療(その6)

経営支援課

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