在宅自己注射は院外処方でもできますか?

長 幸美

医業経営支援

先日、内科の先生から、「在宅自己注射の薬剤って処方箋に書いてもいいんですか?」と質問がありました。これまで、投薬は院外処方、在宅自己注射の薬剤は院内で渡しておられたようです。

結論から言うと、院外処方せんにて注射薬を渡してもらうことはできます。
今日は在宅自己注射の算定ルールを見ていきましょう。

在宅自己注射とは?

在宅自己注射とは、厚生労働大臣が定める注射薬患者本人若しくは家族等の看護を行うものが自宅で注射することをいいます。

注射は医療行為ですので、本来は医療者でないと行えない手技ですが、毎日若しくは定期的に注射を必要とする患者さんが、自己注射用に開発された薬剤や器具を使用して自分で行う指導を受けることで実施が可能となります。自己注射をすることにより、通院回数が少なくなり仕事や家事などライフスタイルを優先しつつ治療を両立することが出来るようになります。

C101 在宅自己注射指導管理料

複雑な場合      1230点
          (1070点)
間歇注入シリンジポンプを用いて在宅自己注射を
行っている患者について、診察を行った上で、
ポンプの状態、投与量等について
確認・調整等を行った場合に算定する。
この場合、プログラムの変更に係る費用は
所定点数に含まれる。
1以外の場合
イ 月27回以下の場合  650点
          (566点)
ロ 月28回以上の場合  750点
          (653点)
医師が当該月に在宅で実施するよう指示した注射の
総回数に応じて所定点数を算定する。
なお、この場合において、例えば月の途中にて予期せぬ
入院等があり、やむを得ずあらかじめ指示した回数が
在宅で実施されなかった場合であっても、当該指示回数に
応じて算定することができる。
ただし、予定入院等あらかじめ在宅で実施されないことが
明らかな場合は、当該期間中の指示回数から実施回数を
除して算定すること。
B001の7_難病外来指導管理料との併算定は可とする
C101 在宅自己注射指導管理料_基本点数_( )内は情報通信機器を用いて行った場合

医療機関での査定事例では、別の医療機関に教育入院していて、退院された後の管理を依頼され、クリニックでは初診にも関わらず「在宅自己注射指導管理料」を算定して返戻になる例もあります。これは「自己注射の教育指導を行う」という要件に引っかかってしまい、審査側から確認されるケースです。このような場合はコメントが必要になりますので、注意しましょう。

(7)在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定する。ただし、アドレナリン製剤については、この限りではない
また、指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること。
なお、第2節第1款の在宅療養指導管理料の通則の留意事項に従い、衛生材料等については、必要かつ十分な量を支給すること。

厚生労働省/医科診療報酬点数表C101在宅自己注射指導管理料の通知より

又、併算定できない項目についても注意が必要です。緊急受診時以外の外来における皮下・筋注や静脈注射等を行った場合は手技料及び在宅で算定している薬剤料も算定ができません
緊急時及び往診時の場合はコメントをつけて請求することが出来ます。

(13)在宅自己注射指導管理料を算定している患者の外来受診時(緊急時に受診した場合を除く。)に、当該在宅自己注射指導管理に係る区分番号「G000」皮内、皮下及び筋肉内注射、区分番号「G001」静脈内注射を行った場合の費用及び当該注射に使用した当該患者が在宅自己注射を行うに当たり医師が投与を行っている特掲診療料の施設基準等の別表第九に掲げる注射薬の費用は算定できない。なお、緊急時に受診した場合の注射に係る費用を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に緊急時の受診である旨を記載すること。

厚生労働省/医科診療報酬点数表C101在宅自己注射指導管理料の通知より

算定できる注の加算

この「注」の加算については、対面診療を行った場合に限り算定できるものと規定されているところに注意が必要です。(通知12)

注2導入期加算  580点(月1回)初回の指導を行った日の属する月から起算して
3月以内の期間に当該指導管理を行った場合
3月を限度とする
注3_処方の内容に変更があった場合も1回に限り算定可能
注4バイオ後続品導入初期加算
       150点(月1回)
患者に対し、バイオ後続品に係る説明を行い、
バイオ後続品を処方した場合
3月を限度とする
(当該バイオ後続品の初回の処方日の属する月から起算)
C101の注の加算

厚生労働大臣が定める注射薬とは?

すべての薬剤が在宅自己注射できるわけではありません。しかし、インスリン注射だけではなく、現在では、骨粗しょう症の薬剤や成長ホルモン剤等をはじめ様々な薬剤が指定されています。

※厚生労働省_「保険医が投与することができる注射薬

この資料は令和4年4月13日に出された対象薬剤の追加が審議された時の中医協の資料ですが、定期的に行われている中医協の中で改定時期以外でもこのように協議され、追加されています。資料の3ページ目以降に「別表第九 在宅自己注射指導管理料、間歇注入シリンジポンプ加算、持続血糖測定器加算及び注入器用注射針加算に規定する注射薬」として一般名が記載されています。これらの薬剤のこの別表第九に指定されている注射薬は在宅自己注射として処方箋でお渡しができる薬剤となっています。

衛生材料等の処方は?

注射に必要なアルコール綿などの衛生材料や注射用針、血糖測定器等は、必要な量を患者に渡す必要があります

注射器や注射用針、血糖測定器等については、「在宅療養指導管理材料加算」として、項目がありますので、院内でお渡しする場合はその加算で算定します。処方箋で調剤薬局さんにお願いする場合は、処方箋の中に一緒に記載します。この場合は在宅療養の「特定保険医療材料」として調剤薬局で算定することになります。ご留意くださいね。

アルコール綿などの衛生材料については、指導管理料の中に含まれていますので、別に自費等の追加請求はできません

まとめ

在宅自己注射指導管理料については、薬剤の処方は院内で出さなくちゃ!と思われている先生もありますが、使用薬剤や一緒に処方箋で出せる材料もありますので、使用している薬剤や材料等を一度確認いただいたら良いのではないかと思います。

もちろん院内でお渡しになりたい場合は、在宅の薬剤として院内でお渡しすることもできますので、ご検討ください。

<参考資料>

■厚生労働省/令和4年度診療報酬改定について_(確認日:20230720)

 ・別表第一 医科診療報酬点数表 在宅療養指導管理料 128p~
    通則
    C101 在宅自己注射指導管理料 

 ・診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 243p~
    通則
    C101在宅自己注射指導管理料

    在宅療養指導管理材料加算    261p~
    C150血糖自己測定器加算     261p~
    C151注入器加算         262p~
    C152間歇注入シリンジポンプ加算 
    C152-2 持続血糖測定器加算    263p~
    C153注入器用注射針加算     264p~

2023年8月8日

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