【医療介護あれこれ】事業継続計画(BCP)について

長 幸美

アドバイザリー

皆さん、「事業継続計画(BCP)」という言葉をお聴きになったことはありますか?
この「事業継続計画(BCP)」は、災害等の緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画のことをいい、「事業継続の復旧計画」とも呼ばれています。
企業に対する潜在的な脅威に対処するための予防に加えて、ディザスタリカバリ・・・つまり、災害復旧にむけた事業の継続的な運用を可能にすることを目標とした計画のことです。

令和3年度の介護報酬改定において、介護事業においても、この「事業継続計画(BCP)」を作成するように法制化されました。これは3年間の経過措置がありますが、診療報酬と介護報酬の同時改定までには、作成を完了しておく必要があります。
この法改正については、昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大において、介護施設や事業所の中で感染が拡大しクラスターの発生等により、地域生活者の受け入れができなくなり、市民生活が混乱したことにも一因があると思います。
我々の事務所にも「事業継続計画(BCP)」を作成する支援をしてほしいというご相談が入ってくるようになりました。
そこで今回は、「事業継続計画(BCP)」と作成するにあたっての、ポイントを見ていきましょう!

■「事業継続計画(BCP)」が必要なわけ
医療機関で言うと、本来業務は「病院、診療所又は介護老人保健施設の運営」であり、いうまでもなく「診療」をおこなうことは医療機関の本来の姿です。
しかし、非常事態になった場合、設備機器関係が正常に使用できなくなるかもしれませんし、職員も通常通りに出勤できなくなるかもしれません。
そういった場合に、「本来業務である診療継続していく」ために何が必要か、ということを明確にする必要があります。
また、非常事態になった場合にできるだけ早期に本来業務である「診療」を開始するために必要な準備を考えておく必要があります。
その場になってからでは遅く、事前に「もしも」のときを考え、地域の基幹病院とどのように連絡を取るのか、資材調達はどうするのか、人の手当をどうするのか、「事業を一時中断する」ことも視野に入れておく必要があると思います。

■非常時ごとの計画が必要
例えば、風水害のように、事前に予測し、計画を立てることが可能な場合もあるでしょうし、地震や火災のように予測ができないこともあると思います。また、感染拡大によるパンデミックの場合など、一つの医療機関ではどうしようもない事態も考えられます。
感染拡大時と風水害、地震等の大規模災害では、対処の仕方が違うと思いますので、それぞれに考えておく必要があります。

■現在の状況を把握する
まずは、現状の状況を把握しましょう。
職員がどこからきているか、家族構成も把握されたほうが良いでしょう。
今回のコロナ禍において、家族の状況により、自宅待機となり出勤できなくなった方が多く、診療継続が危ぶまれた状況もあったと思います。自宅待機の基準やその際の連絡方法だけではなく、そのような場合に、ヘルプをお願いできる先等を考えておかれることをお勧めします。

■医療材料・衛生材料等の備蓄
食品に関しては、入所患者及び職員の3日分の食材や飲料を備蓄するということをよく言われていますが、見落としがちなのが、衛生材料ではないでしょうか?
マスクや手袋などの基本的なものだけではなく、ディスポのシーツや防護衣等もある程度の準備が必要だと思います。
また、地震の場合など配管等の損傷によりお手洗いが使用できない状況も考えられると思いますので、その場合どうするのか、ということも併せて考えておきましょう。

■資金の調達について
甚大な災害が起こった場合、急速にキャッシュフローが悪化する場合があります。
その場合にどのような手立てがあるのかを、考えておくことも大事になってきます。

■事業継続計画(BCP)に対応した訓練を!
最後に、これらの事業継続計画は作成したら終わりというわけにはいきません。
これら平時から院内の職員間でシミュレーションすることがとても大事になります。
例えば、消火器やAEDを使う練習をすることや、連絡網を活用した連絡訓練、消防への通報訓練など、いざというときにはなかなかスムーズに動けないものです。ぜひこのような訓練を行い、事業計画が自分たちのものになるように、ブラッシュアップしていきましょう。

医業コンサル課

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