【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「悪性腫瘍特異物質治療管理料」

長 幸美

アドバイザリー

医学管理料の中に「B001「3」悪性腫瘍特異物質治療管理料」というものがあります。
これは、「悪性腫瘍」であると既に確定診断された患者について、腫瘍マーカー検査を行い、当該検査の結果に基づいて計画的な治療管理を行った場合に、月に1回算定できる、と決められています。

時おり、先生方から、「悪性腫瘍の確定診断はあるけれど、今回違う腫瘍マーカーだし、検査+判断料の方が安いから検査で算定したら、査定された・・・」という相談を受けることがあります。
これは保険診療のルールに沿っていないためにおこる査定と考えられます。
例外の規定もありますので、ルールを整理しておきましょう。

【算定要件】
悪性腫瘍の確定診断名があること
腫瘍マーカー検査の結果に基づき、計画的な治療管理を行っていること
月に1回算定

■腫瘍マーカー検査とは?
腫瘍マーカーは、癌の進行とともに増加する生体内の物質のことで、主に血液中に遊離してくる物質を、抗体を使用して検出する臨床検査のひとつです。
腫瘍マーカーの数値だけでは悪性腫瘍の確定診断は行えませんが、画像診断や病理検査等の結果と組み合わせ、総合的に判断されるものです。
確定診断後は、抗がん剤や放射線治療の効果・経過や再発の判定を確認するのに役立つため、定期的に測定し、治療方針等を検討していく等に活用されています。

■検査方法
主に血液や尿などの体液の成分を測定することによって行う検査です。専用の分析装置を使って、血液や尿に含まれる腫瘍マーカーの値を測定します。

■主な腫瘍マーカー(一部抜粋)
それぞれのがんに有効な腫瘍マーカーがあります。また、悪性腫瘍以外の病気にも影響を受ける場合もありますし、すべてのがんで特定の腫瘍マーカーが見つかっているわけではありません。

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【算定ルール】
通常は「生化学検査Ⅱ」に該当する検査であって、「検査料+判断料+採取料」の算定ができます。
しかし、悪性腫瘍の確定診断がついた後は「検査料+判断料+採取料」の代わりに、「悪性腫瘍物質治療管理料」を算定することとなります。その月の算定から変更することになります。

■初回月加算  150点
第一回目の悪性腫瘍特異物質治療管理料の算定をする月に限り加算ができます、

これは、初回診断月については、多項目の腫瘍マーカーを組み合わせることを想定されているためで、加算というカタチで評価されています。
但し、初回算定月の前月に腫瘍マーカー検査を行っている場合には、算定できませんので、注意が必要です。

【例外規定】
悪性腫瘍の確定病名がついた段階で、腫瘍マーカーの算定は原則できなくなりますが、例外的に保険請求が認められる場合があります。これはレアケースですが、しっかりと押さえておきましょう!

■検査にかかる例外的な保険請求(検査の項目)
これは、腫瘍マーカーを「悪性腫瘍以外」の疾患の診断等のために実施した場合、例外的に腫瘍マーカーの算定を認められているケースです。これは疾患名と目的が定められていますので、留意しましょう。この場合は、別に検査の費用を算定することができます。

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■規定数を超えて検査を実施した場合の取扱い(告示8 第3―5)
基本的には規定数を超えて実施した場合、別途実費等での費用徴収は認められていません。但し、療養担当規則の中で、3点のみ例外の規定があり、腫瘍マーカーについては以下の場合のみ、2回目以上の患者負担を求めることができます。

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この場合の注意事項としては、「悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定している患者」であって、その必要性から例外的に認められているものです。
これは要件があり、①患者の自己の選択によるものであること、②事前に徴収する金額を九州厚生局へ届け出ていること、③年1回の徴収した実績を報告実施すること、が必要になります。

 

【カルテへの記載】
腫瘍マーカーの検査結果及び治療計画の要点を診療録に添付又は記載することが求められています。
皆さん如何でしょうか?

例外規定等があり、少々複雑な気もしますが、「保険請求できないので、検査できません」とならないように、医事職員もきちんと押さえておく必要があります。
該当箇所を末尾に掲載していますので、しっかり読んでおきましょう!

<参考資料>
■診療報酬点数表
B 医学管理等 B001「3」悪性腫瘍特異物質治療管理料
D 検査     D009   腫瘍マーカー

■告示8 療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項
第3_選定療養に関して支払いを受けようとする場合の厚生労働大臣の定める基準
5 医科点数表及び歯科点数表に規定する回数を超えて受けた診療であって、別に厚生労働大臣が定めるものに関する基準

医業経営支援課

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