【令和2年度診療報酬改定】急性期の入院について

長 幸美

アドバイザリー

地域医療構想では、救急医療の確保がとても大事になってくると思います。
今回の改定では、急性期の入院について、いろいろと評価がついてきていました。
この内容を見ていると、「急性期」「救急医療」の定義づけが明確になってきているように思います。この救急医療の提供という観点から、少し整理してみたいと思います。

ポイントになることは、3点あると思います。
1点目は急性期入院医療の評価としての看護必要度の見直しが行われていること、
2点目は、急性期入院の実績として、重症者の救急搬送を受け入れるかが大事であること
そして3点目は、これらの評価が「適切な労務管理」が前提になってきているということ。
・・・と、私は考えています。ひとつ一つを見ていきましょう。

【急性期入院医療の評価】
これは看護必要度の見直しが主なものになりますが、この内容を見ていて、「急性期入院医療とは、「入院して実施することが必要な手術や検査を実施し、重症者の救急搬送の受入れを一定以上行う医療機関」であると定義づけられているように思います。

これまで「認知症」の症状がある患者で医療行為等が必要な患者も、必要度のカウントに上がっていましたが、この基準が削除されました。その反面、手術や特殊検査等の評価が加わり、より重度者及び緊急性の高い患者の受入れが評価されるようになっています。
対象となる検査は、経皮的針生検法や心カテ、腹腔鏡等の検査などが該当してきます。
また、手術に関しては、開頭手術が13日間、開胸手術が12日間、開腹手術が7日間、腹腔鏡・胸腔鏡手術が5日間、全身麻酔・脊椎麻酔の手術が5日間、救命等にかかる内科的治療が5日間など、多くの手術や緊急の状態で評価できる日数が長くなっていますし、別に定める手術の中には、眼窩内異物除去術、鼓室形成術、上下顎骨形成術、甲状腺悪性腫瘍手術、乳腺悪性腫瘍手術、観血的関節固定術等が入ってきています。

また、機械的に評価を行う「看護必要度Ⅱ」について、400床以上の病院及び特定機能病院入院基本料については「要件」の中に盛り込まれてきています。これは、経過措置がありますので、該当する医療機関は準備を進めてください。

さらに、この変更に伴い、地域包括ケア病棟等の施設基準に入っていた看護必要度の割合も見直されています。該当する施設基準の医療機関はこの要件を十分に見直ししてください。それぞれに経過措置もついてきていますが、期限が違いますので、必ず確認していきましょう。

【救急搬送の受入れについて】
地域医療の確保を図る観点から、「地域医療体制確保加算(520点)」が新設されました。
これは救急医療にかかる実績が必要で、年間2000件以上の救急搬送(ヘリコプターを含む)の実績が必要です。単純に計算しても、1日6件の受入れをしている医療機関ということになります。
この救急搬送2000件はいかないけれど・・・という医療機関は、「救急搬送看護体制加算1(400点)」が新設されました。これは、の加算で、もともと200件以上の受入れで施設基準が申請できるものでしたが、新たに年間1000件医以上の救急搬送があり、専任の看護師を複数名配置することにより、新設された評価です。

このように、「急性期医療の提供体制」も、実績で評価が分かれてきています。

【適切な労務管理の実施について】
これら新設の施設基準要件の中に、「病院勤務医の負担軽減及び処遇の改善に資する体制」というものがあります。以前より、急性期医療にかかる施設基準を中心に「医療職の負担軽減及び処遇の改善に資する計画の策定」が要件の中にあり、毎年計画の見直しや委員会等を開催した記録の届け出が必要でした。今回は、労基法の改正により、2024年以降は勤務医の労働時間にかかる制限が入ってくるため、もう一歩踏み込んだ内容になっているように感じます。つまり、この「適切な労務管理」を実施する取り組みが診療報酬の中にも入ってきたということです。

基準の中の、「体制」と「計画策定における検討事項」は以下の通りとなっています。
◆病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制
① 病院勤務医の勤務状況の把握とその改善の必要性等について提言するための責任者の配置
② 病院勤務医の勤務時間及び当直を含めた夜間の勤務状況の把握
③ 多職種からなる役割分担推進のための委員会又は会議の設置
「病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」の作成、定期的な評価及び見直し
⑤ 病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に関する取組事項の公開(当該保険医療機関内に掲示する等)

◆上記④の「計画作成」における検討事項
「病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」の作成に当たっては、以下ア~キの項目を踏まえ検討し、必要な事項を記載すること。
(ア) 医師と医療関係職種、医療関係職種と事務職員等における役割分担の具体的内容
(イ) 勤務計画上、連続当直を行わない勤務体制の実施
(ウ) 勤務間インターバルの確保
(エ) 予定手術前日の当直や夜勤に対する配慮
(オ) 当直翌日の業務内容に対する配慮
(カ) 交替勤務制・複数主治医制の実施
(キ) 短時間正規雇用医師の活用

以前、このコラムの「常勤配置と専従要件について」の中で、医事課だけではなく、人事労務管理の担当者も一緒に読み合わせを行うなど、確認をお願いしたいとお伝えいたしました。この「適切な労務管理」については、医事課の範疇を超えています。しかし、施設基準がありますので、この基準割れとならないようにしなくてはなりません。さらに、より高い医療の質、医療提供の実績は要求されますから、医事課単独で考えて進めていくことはできません。これは医事課を含む、病院全体で検討していただきたいと考えています。

<参考資料>
〇厚労省:令和2年度診療報酬改定説明会資料等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00001.html
※「05令和2年度診療報酬改定の概要「入院医療」

〇厚労省:令和2年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00027.html

医業経営支援課

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