【医療介護あれこれ】維持期・生活期のリハビリテーションについて

長 幸美

アドバイザリー

花粉症の方にはつらい時期となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、今年に入り、もう3月も半ば・・・リハビリテーションへのご対応はお済でしょうか?

2019年4月から、要介護・要支援の認定を受けている高齢者に対する維持期・生活期のリハビリテーションは、医療保険から介護保険にすべて移行することになります。
これにより「移行支援料」や「維持期のリハビリテーションの大幅な減算」等を経て、外来リハビリテーションにおいては、13単位のリハビリが算定できなくなってしまいます。

では、今後在宅において、生活の維持のためのリハビリテーションについてはどのように対応すべきなのでしょうか?

今後は、高齢者の維持期・生活期リハビリテーションについては「介護保険によりサービス提供を行う」こととなり、今まで以上に「切れ目のない医療と介護の連携」が必要になってきます。
具体的に言うと、「医療機関」は「ケアマネージャ」にリハビリテーションが必要である旨を伝え、「患者様への説明」や「ケアプランの見直し」を実施し、地域のリハビリテーションを提供する事業所・・・つまり「通所リハビリテーション事業所」「通所介護の個別リハビリテーション」等を利用するように連携を強化しなければならないということです。

これは平成30年度診療報酬・介護報酬の同時改定において、施設基準や人員要件の見直しも行われ、医療機関が介護事業に移行しやすくすることにより、この現状に対応ができるようにされています。
どのような対応がとられているのか、「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイト」の「PT-OT-ST.NET」の中に、わかりやすくまとめられていますのでご紹介します。
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(出典:PT-OT-ST.NET 維持期・生活期リハビリテーション介護保険への移行より)
https://www.pt-ot-st.net/contents4/medical-treatment-30/208

 この改定で大きく変わったところは、
面積要件で、疾患別リハビリと短時間(1-2時間)の通所リハビリが同一のスペースを共用できるようになったこと
② 疾患別リハビリテーションの専従の従事者であっても、同じ訓練室の中で実施する場合は、介護保険のリハビリテーションが実施できるようになったこと(逆も同じ)

もちろん、どのような状況でもよいのではなく、
同一のスペースで行う場合に、十分な広さ(1人3㎡)があり、専従の従事者が「疾患別リハビリを提供すべき患者がいない」、「サービスの提供に支障が生じない場合」、などの条件が定められています。

平成30年度改定の情報提供の中で、事前の準備として「介護保険の有無を確認すること」をおすすめしてきました。地域包括ケアシステム・・・つまり、「地域の中で長く生活し続ける」ということを考えていく中で、必要なサービス提供、必要な支援を提供するためには、この「介護保険の情報」はとても大切なものになります。皆様の医療機関において、どのように情報共有が図られているでしょうか?
私が以前勤務していた病院では、(リハ)というゴム印を作成し診療録の表紙に押印していました。当時は「紙のカルテ」でしたので、そのような対応でも十分に役割を果たしていました。ある医療機関は、「患者情報シート」を作成し、入院しても退院しても、在宅でも情報が共有できるように工夫されている医療機関もあります。電子カルテの場合でしたら、アセスメントシートを共有することもできますが、患者さまのカルテを開いたときにコメントが出るようにしているといいかもしれませんね。

さらに、外来の患者の疾患別リハビリテーションのうち、この維持期・生活期のリハビリテーションに該当するのは、「脳血管疾患リハビリ」「廃用症候群リハビリ」「運動器リハビリ」が該当します。ただし、発症等からの日数や患者さまの状態に応じて、疾患別リハビリテーションの算定も可能な場合がありますので、注意が必要です。

 

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(出典:平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について)

 

2019年4月1日以降は、「医師が医療保険のリハビリ継続が必要と判断した場合」「外傷性の肩関節腱板損傷」「高次脳機能障害」などの場合を除き算定できなくなります。レセプト請求上では、コメントなどが必要となりますので、注意しましょう。

また、医療機関としては、患者・家族等に十分に説明することが必要になります。
介護保険への移行については、2019年3月中にリハビリテーションを算定している場合、移行に伴い併用算定ができる回数が決められています。この期間は2か月間になり、この間は医療のリハビリと介護保険のリハビリテーションが併用でき、この間には7単位算定ができます。以降に関しては、十分に点数表を参照されてください。

介護保険事業所としては、ケアプランに乗せてもらう必要があります。このため、ケアマネージャ―はケアプランの見直しを行うことが必要になります。医療機関はこの情報提供を行い移行支援をすることにより、「B005-1-3 介護保険リハビリテーション移行支援料 500点」が算定できます。

ケアマネージャは、退院後新たにケアプランの見直しが必要な場合など、300単位の初期加算が算定できる場合がありますので、見直しをしてください。

利用される方、必要な方がリハビリテーションをスムーズに受けることができるように、この3月の残り期間で対象者を洗い直し、早急に対応を検討されることをお勧めします。

<参考資料>
◆厚生労働省 中央社会保険医療協議 2018年2月07日 資料
平成30年度診療報酬改定 個別改定項目
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf

◆診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)
「リハビリテーション」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000196294.pdf

◆経過措置(7ページ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000486186.pdf

◆平成30年度介護保険報酬改定における各サービスごとの改定事項について
「通所リハビリテーション」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000196994.pdf

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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