【医療・介護あれこれ】地域医療構想を踏まえた診療報酬改定の動向⑤ 『地域包括ケアについて』

長 幸美

アドバイザリー

さて、今回は地域包括ケア病床についてお話しします。
介護報酬改定でも「地域包括ケアシステム」の構築は大きな課題となっており、弊社の「介護保険あれこれ」の中でもさまざまに取り上げてまいりました。

その中心的な役割を担う病床として「地域包括ケア病床」が新たに創設されました。前回平成26年度の診療報酬改定の中で、「亜急性期病床」に代わるものとして、注目されておりましたが、予測に反して7対1入院基本料からの転換が進んでいないのが現状です。
「地域包括ケア病床」の役割としては、急性期医療後の「ポストアキュート」とともに、在宅や住居系の施設入居者の熱発や病状の悪化時に一時的に受け入れる「サブアキュート」の役割が求められてきます。

では、この「地域包括ケア病棟」に入院している患者は、7対1・10対1入院基本料を算定する患者と比較して、どのような傾向にあるのでしょうか?

疾患別の患者割合では、「骨折・外傷」の患者・・・つまり、整形外科系の患者が多かったということです。また、検査、処置等の実施状況や投薬の状況、手術の実施状況などもデータを集積されており、今後の検討課題とされています。

この中で注目すべきことは、「地域包括ケア病棟に入院している患者の在院期間」と紹介元である「7対1入院基本」算定する病床への「再入院率」です。在院期間としては30日以内で約7割の患者が自宅へ帰っていることが分かっています。
またその中でも、「リハビリの対応力」と「栄養管理」ができている病棟ほど再入院率が低いということもわかってきています。
自院のリハビリの内容を見直し、しっかりと提供しているか?
医療処置の提供内容を見直し、入院時から「退院した後」を見据えた対応ができているのか?
・・・ということがポイントになりそうです。

この病棟は包括の病棟となっていますが、サブアキュートの観点から、「手術」については包括からはずしていくことも検討されており、今度の動向が注目されています。

また、30日で退院(回転)しているということは、何もしなかったら、「病床が空いてしまう」という事が考えられます。病床の稼働率を上げるためには「紹介率」を挙げていかなくてはなりません。どこに紹介するか?と考えれば、「しっかりとリハビリをして自宅に返せる病院」を選ぶことになり、紹介の確保も図ることができるのではないでしょうか?

また、「退院支援」についての取組や評価も、検証されておりますが、「総合評価加算」「退院調整加算(一般病床)」「介護支援連携指導料」以外の算定が少ないという統計結果が出てきています。これは、療養型であっても、老健であっても、医療法人が行う事業として、「在宅復帰率」を確保し、「機能強化型」として医療度の高い対応を確保していくことが求められてきているためだと思われます。「なぜ、算定ができていないのか?」自院の機能と体制を確認していく必要があります。

また、事務局側の提案として、手術料やブロック以外の麻酔等の緊急的避難的手術は包括外にしてはどうかとの意見も出されています。今まで、「手術料が包括になっているから」という理由で出来高を算定していた病院にとっては追い風となることも考えられますが、本来の「急性期医療」と「回復期医療」について、きちんとすみわけをして、どのような機能が必要かということを検討していく時期に来ているのかもしれません。

これから2025年に向けて、在宅への流れを止めることはできません。
地域の中にある医療機関として、どのように「地域で生活をし続けるか」「支援していくためには何が必要なのか?」 考えてみる必要があるのではないでしょうか?

<参考資料>(クリックすると、別ページが開きます)

経営コンサルティング部
経営支援課

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